
架橋ポリエチレン管は、水道用合成樹脂管の一種として、給水・給湯配管に広く使用されている配管材料です。この管材の最大の特徴は、優れた温度特性にあります。
温度特性と使用範囲
架橋ポリエチレン管の物理的特性として、優れた可とう性が挙げられます。この柔軟性により、施工時の配管敷設が容易になり、地震などの災害時にも破損リスクが大幅に軽減されます。実際に、災害時の調査でもポリエチレン管の破損が極めて少なく、耐震性に優れていることが実証されています。
衛生面でのメリット
架橋ポリエチレンは錆びることがないため、赤水や青水の発生がありません。また、湯あかなどの付着も少なく、内部が滑らかで清潔に保たれるため、衛生的な配管システムを実現できます。
快適性の向上
金属管と比べて熱伝導率が小さいため、給湯時の湯待ち時間が金属管より最大50%短縮されます。また、流水音が小さく、ウォーターハンマー(水爆音)も従来管に比べ30%~40%低減されるため、居住環境の快適性が向上します。
環境への配慮
架橋ポリエチレン管は、環境省が挙げている57項目の環境ホルモン物質を使用しておらず、ダイオキシンの発生もない環境に優しい配管材料です。
架橋ポリエチレン管の配管には、主に「ヘッダー工法」と「先分岐工法」の2つの施工方法があります。それぞれの工法には明確な違いとメリット・デメリットが存在します。
ヘッダー工法の特徴
ヘッダー工法は、メインのヘッダーから各水栓に直接配管を行う方法です。この工法では、各水栓への配管経路は最短距離を取ることが原則となり、配管図の作成が必須となります。
先分岐工法の特徴
工法選択のポイント
ヘッダー工法は初期コストがやや高くなりますが、長期的なメンテナンス性や水圧の安定性を考慮すると、総合的な評価が高くなります。特に、各水栓で同時使用した際の水圧低下が少ないため、快適な使用環境を提供できます。
ヘッダーの設置スペース
ヘッダー設置時には適切なスペースの確保が重要です。
架橋ポリエチレン管の施工には専用工具が必要なく、比較的簡単な作業で配管が可能です。しかし、適切な施工手順を守ることで、長期的な性能を確保できます。
通管作業の基本手順
施工時の重要な注意点
勾配と支持の設定
天井配管時には勾配1/100以上を設け、支持間隔は0.5m以下とすることが推奨されています。これにより、配管系統全体の安定性を確保できます。
養生と保温対策
さや管の端末部は浸水防止および保温対策として、シールキャップなどで適切に養生します。露出部については必要に応じて再保温加工を行い、ただし水栓ボックス側については保温の必要はありません。
架橋ポリエチレン管の継手システムは、従来の配管工法と大きく異なる特徴を持っています。金属管のようなネジ接続や、塩ビ管のような接着剤を使用せず、簡単な接続が可能です。
継手の種類と特徴
ワンタッチ型継手
拡径・圧入型継手
継手の材質バリエーション
継手の材質は製造メーカーによって多様で、以下のような種類があります。
これらはすべてJIS規格に適合しており、適切な施工と異物混入防止により、水漏れなどのトラブルはほぼ発生しません。
融着接続技術
ヘッダーとの接続には融着技術が使用されます。融着ソケットまたは融着レジューサーをヘッダーに取り付け後、架橋ポリエチレン管を差し込んで融着することで、強固で信頼性の高い接続が実現されます。
接続時の注意点
製造メーカーの信頼性
架橋ポリエチレン管工業会に属する主要8社(イノアック住環境、オンダ製作所、積水化学工業、タブチ、古河電気工業、前澤給装工業、三菱樹脂、未来工業)がすべて給水・給湯設備の一流メーカーであり、品質と信頼性が保証されています。
架橋ポリエチレン管工業会による詳細な技術情報と施工ガイドライン
http://www.jxpa.gr.jp/
架橋ポリエチレン管配管の最も注目すべき特徴の一つは、その優れた長期性能とメンテナンス性にあります。これは他の配管材料と比較して明確なアドバンテージとなっています。
クリープ特性と耐久性
架橋ポリエチレン管は、20℃~95℃で約10年におよぶ長期のクリープ試験結果により、建築物の寿命にも匹敵する安定した耐久強度が推定されています。実使用温度範囲で数10万時間にわたり脆性破壊が生じる屈曲点の発生が見られないことが確認されており、これは管材の寿命を示す重要な指標となります。
化学的安定性とメンテナンス頻度の削減
架橋ポリエチレン管は水道や給湯の使用条件では腐食や潰食を生じることがなく、長期間安全に使用できます。また、コンクリート、通常の土壌、迷走電流に対してもほぼ完璧な耐食性があり、埋設環境に関しては広い適応性を持っています。
メンテナンス時の特別な考慮点
定期点検項目
長期性能維持のポイント
他材料との比較優位性
金属管では避けられない錆による配管更新が不要で、塩ビ管のような経年劣化による強度低下も少ないため、ライフサイクルコスト全体では非常に経済的です。特に、赤水や青水の発生がないため、水質維持の観点からもメンテナンス負荷が大幅に軽減されます。
環境変化への対応力
架橋ポリエチレン管の分子構造により、温度変化や圧力変動に対する追従性が高く、建物の微細な変形にも柔軟に対応します。これにより、従来材料で問題となっていた接合部での応力集中による破損リスクが大幅に削減されています。
リニューアル時の利点
既存建物のリニューアル時には、軽量で可とう性に優れる特性により、既存配管ルートの活用や最小限の躯体工事での配管更新が可能です。この特性は、特に大規模修繕工事において工期短縮とコスト削減に大きく貢献します。
MESCO三井金属エンジニアリングによる工業用架橋ポリエチレン管の詳細仕様
https://www.mesco.co.jp/pipes/pipes_lineup/pxe/
モノタロウでの架橋ポリエチレン管製品ラインナップと価格情報
https://www.monotaro.com/k/store/%E6%9E%B6%E6%A9%8B%E3%83%9D%E3%83%AA%E3%82%A8%E3%83%81%E3%83%AC%E3%83%B3%E7%AE%A1/