鴨居と長押の違いを役割と構造で解説

鴨居と長押の違いを役割と構造で解説

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鴨居と長押の違い

鴨居と長押の主な違い
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鴨居は建具のレール

障子や襖を支える構造材で、溝が彫られている

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長押は装飾部材

鴨居の上部に設置される化粧材で構造上の役割はない

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設置位置の違い

鴨居は床から約180cm、長押は190~200cmの高さに配置

鴨居の基本的な役割と構造

鴨居とは、和室の開口部上部に取り付けられる横木のことで、障子や襖などの引き戸をはめ込むための溝が設けられた構造材です。建具をスムーズに開閉させることが主な目的であり、下部の敷居と対になって引き戸を支えています。
参考)https://diydoor-tsuhan.jp/blog/diy/1264/

鴨居の語源については諸説あり、下の敷居に対して上にあることから「上居(かみい)」が変化したという説や、引き戸が倒れないように溝が噛んでいることから「噛む居(かむい)」とする説があります。鴨という字が当てられたのは、水鳥であることから火災から家を守るという願いが込められていると言われています。
参考)https://polaris-hs.jp/zisyo_syosai/kamoi.html

建具の開閉を支える機能材として、鴨居には耐久性のある木材が使用され、使用頻度の高い開口部では特に丈夫な造りが求められます。溝の深さや幅は建具の厚みに合わせて精密に加工されており、スムーズな開閉動作を実現するための重要な要素となっています。
参考)https://meiyojuken.jp/faq/post-27308/

長押の本来の目的と現代での活用法

長押は、和室の壁面をぐるりと囲むように鴨居の上部に取り付けられる化粧部材です。もともと長押は柱と柱を繋ぐ重要な構造材として、奈良時代以降の法隆寺をはじめとする寺院建築で使われていました。
参考)https://precocirico.com/kabekake_syuunou/hukku/nageshi_kamoi.html

しかし、建築工法の変化や発展により、長押は構造材としての役割を失い、装飾材として現代に残りました。これは長押が上級層の住宅に使われていたため、建物の格付けやステータスシンボルとしての意味を持っていたことが理由です。
参考)https://polaris-hs.jp/zisyo_syosai/nageshi.html

現代の住宅では、長押の上部と壁との間にできる隙間を収納スペースとして活用することが一般的になっています。ハンガーをかけて洋服を吊るしたり、長押フックを取り付けて様々な物を掛けたりと、実用的な収納機能を持つ部材として再評価されています。また、額縁や写真、賞状などを飾る「見せる収納」としても活用され、インテリア性を高める役割も担っています。
参考)https://www.daiken.jp/reform/magazine/article/20210709c.html

大建工業の記事では長押の歴史的背景と現代での活用方法について詳しく解説されています

鴨居の種類と特徴の違い

鴨居には用途や設置場所によって複数の種類があり、それぞれ異なる特徴を持っています。
参考)https://www.tototo.biz/staffblog/what-kamoi-and-sills/

**無目鴨居(むめかもい)**は、溝を掘っていない鴨居のことで、床の間など引き戸を設けない開口部に使われます。建具のレールとしての機能は持たず、装飾的な役割や空間の統一感を出すために設置されます。
参考)https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%B4%A8%E5%B1%85

**薄鴨居(うすがもい)**は、欄間を差し込むために使用される通常よりも厚みの薄い鴨居です。欄間は天井と鴨居または長押との間に設けられ、通風や採光、部屋の装飾として機能します。
参考)https://www.naru-moku.co.jp/column/2144/

**差鴨居(さしかもい)**は、通常の鴨居よりも高さのある木材で、梁としての構造材の役目も果たしています。柱としっかり接合されており、古民家などで大きな開口部を設ける際に使用されることが多い重要な構造部材です。差鴨居は足固めも兼ねるため、建物の耐震性向上にも寄与しています。
参考)https://www.token.co.jp/estate/useful/archipedia/word.php?jid=00022amp;wid=30827amp;wdid=01

**付け鴨居(つけかもい)**は、障子や襖などの開口部がない壁面に、他の鴨居の高さに合わせて取り付ける装飾的な化粧材です。これを設置することで部屋全体に統一感が生まれ、和室としての完成度が高まります。付け鴨居の上には長押を設置することが一般的で、和室の内法高さを揃えるために重要な役割を果たしています。
参考)https://www.lixil.co.jp/reform/yougo/kouhou/shitsunai/34.htm

店舗デザインにおける鴨居の種類と活用方法について詳細が掲載されています

長押の種類と設置位置による名称

長押にも設置される位置によって様々な種類があり、それぞれ異なる名称で呼ばれています。
参考)https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%95%B7%E6%8A%BC

一般的に「長押」と呼ばれているのは**内法長押(うちのりなげし)**で、住宅などの和室で鴨居の上部に設置される化粧材を指します。内法長押は和室の壁面をぐるりと囲むように取り付けられ、最もよく見られる長押の形態です。
参考)https://www.renosy.com/magazine/words/24

柱の最下部に設置される長押は**地覆長押(じふくなげし)**と呼ばれ、特に書院造りや社寺建築、宮殿などで縁側外面の柱の足元に使用されます。地覆長押は構造的な意味合いも持ち、建物の基礎部分を装飾する役割を果たしています。
参考)https://www.token.co.jp/estate/useful/archipedia/word.php?jid=00016amp;wid=00309amp;wdid=01

格天井を設ける部屋では、天井と柱の取り合わせ部分に**蟻壁長押(ありかべなげし)**が取り付けられます。蟻壁とは柱の頂部を壁で塗りつぶした部分のことで、その下に蟻壁長押を設置することで天井と柱の切れ目を明確にします。蟻壁長押の「せい(幅)」は、内法長押の9割ほどが最適とされています。​
長押の幅は柱の寸法を基準に決められることが多く、柱の太さの8~9割の幅を持つものを本長押、6~7割のものを半長押と呼びます。その他にも腰長押、上長押、地長押、天井長押、廻縁長押などがあり、位置や用途によって使い分けられています。​

鴨居と長押の施工における注意点

鴨居の施工では、水平精度が建具の開閉性能を大きく左右します。経年変化により鴨居が湾曲すると、建具の立て付けが悪くなり、開閉がスムーズにできなくなります。古民家などの改修工事では、鴨居の下がった部分をジャッキアップして水平を確保した後、天井裏から長押ごと鴨居を吊り上げて修正する方法が取られることもあります。
参考)https://www.ee-shokunin.com/sks/26yn/jisseki8.html

鴨居の上端ラインは仕上げとして見える部分であるため、慎重な作業が求められます。矩(かね)を巻いて正確に寸法を測り、のこぎりとのみを使って取り付け部分に掘り込みを入れる作業は、熟練した技術が必要です。
参考)https://chuoko.ac.jp/2021/01/22/35023/

長押の施工では、鴨居のない部分に付鴨居を取り付けてから長押を設置します。和室の入隅をきれいに納めるため、留め(45度の角度で合わせる)加工を行う必要があり、細かい細工を駆使することで美しい仕上がりになります。​
後付けの長押を設置する場合は、耐荷重を事前に確認することが重要です。重量のある物を避け、長押に負荷をかけすぎないように注意しなければ、破損や壁の損傷につながります。また、洗面所やトイレ、キッチンなどの水回りでは、木製の長押ではなく水に強いステンレス製などの長押を選ぶことが推奨されます。
参考)https://myhome-style.com/column/kaji/191218287124/

長押の材質選びも重要で、収納として活用する場合は耐荷重の大きいしっかりとしたタイプ、写真や絵葉書などの小物を飾る場合はマルチレールなどの簡単に取り付けられるタイプを用途に応じて選ぶと良いでしょう。​

鴨居と長押のメンテナンスと維持管理の違い

鴨居のメンテナンスでは、溝部分の清掃が特に重要です。建具をスムーズに開閉させるためには、溝に溜まったホコリや汚れを定期的に取り除く必要があります。掃除機や細いブラシを使って溝の奥まで丁寧に掃除することで、建具の動きが改善されます。
参考)https://katazuke-kaitori.com/blog/10757/

白木の鴨居や長押は、週に1度の頻度で乾拭きを行うのが基本です。白木は非常に吸水性が高く、濡らしてしまうとシミや黒ずみの原因となるため、基本的なお手入れは乾拭きが原則となります。やわらかいブラシやハタキ、ハンディモップを使用してホコリを落とし、その後に乾拭きで仕上げる方法が有効です。
参考)https://www.sekisuiheim-owner.jp/maintenance/japanese/02.html

汚れが気になる場合は、住まいの洗剤をぬるま湯に入れ、雑巾を固く絞って拭き取ります。何度かゆすぎながら拭き、表面の手垢やその他の落ちる汚れをよく落としておくことが大切です。拭き掃除の後は必ず乾拭きで仕上げ、水分を残さないようにします。
参考)https://osoujimasters.com/diary/%E9%95%B7%E6%8A%BC%E3%81%AE%E3%81%8A%E6%89%8B%E5%85%A5%E3%82%8C.html

長押の上部は特にホコリが溜まりやすく、放置すると下に落ちてくる原因になります。大掃除の際には最低限でも長押の上部を拭くようにし、日常的にハタキやモップでホコリを落とすことが推奨されます。
参考)https://d-kanazawaya.com/media/cleaning_sho/

古くなった白木の柱、床、敷居、鴨居、長押などは、専用洗剤でアクを落とすことで新築のような美しさがよみがえります。ただし、白木本来の風合いを保つためには、日常的な乾拭きによる予防的なメンテナンスが最も重要です。
参考)https://www.osoujihonpo.com/guide/room/250708-01/

セキスイハイムの白木メンテナンスガイドでは具体的なお手入れ方法が紹介されています