観光資源一覧から見る建築業による地域活性化戦略

観光資源一覧から見る建築業による地域活性化戦略

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観光資源一覧

観光資源の基本構成
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自然資源(10種類)

山岳・高原・湿原・湖沼・河川・峡谷・滝・海岸・岬・岩石・洞窟・動植物・自然現象などの自然が生み出した観光対象

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人文資源(14種類)

史跡・神社仏閣・城郭・建造物・郷土景観・温泉・食・祭事・博物館など人間の活動により生まれた観光対象

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資源ランク評価

特A級(世界レベル)・A級(全国規模)・B級(地方規模)・C級(県内規模)の4段階で評価される仕組み

観光資源の分類体系と種類

公益財団法人日本交通公社が管理する観光資源台帳では、日本全国約8,000件の観光資源を体系的に分類しています。観光資源は大きく「自然資源」と「人文資源」の2つに区分され、自然資源は10種類、人文資源は14種類の計24種類に細分化されています。
参考)https://www.jtb.or.jp/page-search-tourism-resource/

自然資源には、山岳、高原・湿原・原野、湖沼、河川・峡谷、滝、海岸・岬、岩石・洞窟、動物、植物、自然現象(流氷など)が含まれます。一方、人文資源には、史跡、神社・寺院・教会、城跡・城郭・宮殿、集落・街、郷土景観、庭園・公園、建造物、年中行事(祭り・伝統行事)、動植物園・水族館、博物館・美術館、テーマ公園・テーマ施設、温泉、食、芸能・興行・イベントが該当します。
参考)https://www.scinex.co.jp/magazine/20250905/

建造物カテゴリーには、建物・橋・塔などの建築物や構築物で観光的魅力を持つものが含まれており、建築業従事者にとって特に注目すべき分野となっています。
参考)https://jichitai.works/article/details/2823

観光資源の評価基準とランキング

観光資源は「美しさ」「大きさ」「珍しさ」「古さ」「静けさ」「地方色」の6つの視点から評価され、4段階のランクで分類されています。特A級は世界に誇示できる日本を代表する資源で、日本のアイデンティティを示すもの、A級は特A級に準じ全国的な誘致力を持つもの、B級は地方スケールの誘致力を持つもの、C級は主に県民および周辺地域住民向けのものとされています。
参考)https://nlftp.mlit.go.jp/ksj/jpgis/datalist/KsjTmplt-P12.html

市区町村別の観光資源スコアランキングでは、京都市が3,795点で断トツの1位、奈良市1,365点、東京都台東区1,326点、大阪市1,139点と続いており、全国平均は64.3点となっています。都道府県別では東京都が7,054点で1位、京都府5,390点で2位、北海道4,643点で3位、長野県4,572点で4位となっており、自然豊かな地域が上位に入る傾向が見られます。
参考)https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000014.000039033.html

興味深いことに、町村でトップ100入りしているのは和歌山県高野町(309点)、奈良県斑鳩町、群馬県みなかみ町のわずか3町のみで、小規模自治体でも突出した観光資源を保有している例があります。​

観光資源における建築・土木施設の重要性

近年、土木施設そのものを観光資源として活用する「インフラツーリズム」が注目されています。ダム、橋、トンネル、下水道、港湾、空港など公共施設や土木景観を観光資源と位置づけ、施設見学ツアーや工事現場の特別公開などが各地で実施されています。
参考)http://library.jsce.or.jp/jsce/open/00039/201806_no57/57-01-11.pdf

土木施設の観光活用には、「普段は入れない場所の見学」「期間限定の工事現場見学」「施設内での操作・実体験」といった珍しさを魅力とする事例が多く見られます。建設現場すらも観光資源として有効活用している自治体もあり、来訪者にダム事業への興味関心を持ってもらうことで、自治体事業への理解促進にもつながっています。
参考)https://www.toshi.or.jp/app-def/wp/wp-content/uploads/2021/04/report194_3.pdf

土木学会が認定する選奨土木遺産を中心として、インフラツーリズムとヘリテージツーリズムの双方の魅力を兼ね備えた観光対象としての活用が進められています。建築業従事者は、施設の建設や維持管理だけでなく、観光資源としての価値創出にも関与できる立場にあります。
参考)https://www.kusanosk.co.jp/trivia/%E5%9C%9F%E6%9C%A8%E3%81%AE%E6%9C%AA%E6%9D%A5%E3%83%BB%E7%BE%8E%E3%81%97%E3%81%84%E5%BB%BA%E8%A8%AD%E6%A5%AD/%E5%8C%97%E6%B5%B7%E9%81%93%E3%81%AE%E6%9C%AA%E6%9D%A5%E3%81%B8%E3%81%AE%E6%8F%90%E8%A8%80/7263

国土交通省インフラツーリズムポータルサイトでは、全国各地のインフラツアー情報が集約されており、建築・土木施設を観光資源化する際の参考となります。

観光資源を活用した歴史的建造物の再生事例

歴史的資源を活用した観光まちづくりは、古民家や社寺などを観光を契機とした地方創生の核として活用する取り組みです。2025年までに取組地域を300地域、面的地域を50地域創出することが国の目標とされています。
参考)https://yamatogokoro.jp/rekimachi

兵庫県篠山市では、一般社団法人ノオトが古民家を再生し、魅力的な城下町の街並みを実現するとともに、限界集落だった丸山地区において宿泊施設「集落丸山」を開業しました。この取り組みにより、2.1ヘクタールの耕作放棄地が解消され、4人がUターンし、20名以上の移住者と50名近くの雇用が創出されました。
参考)https://visithachinohe.or.jp/wp-content/uploads/2019/07/0220_%E6%AD%B4%E5%8F%B2%E7%9A%84%E8%B3%87%E6%BA%90%E3%82%92%E6%B4%BB%E7%94%A8%E3%81%97%E3%81%9F%E8%A6%B3%E5%85%89%E3%81%BE%E3%81%A1%E3%81%A5%E3%81%8F%E3%82%8A%E6%88%90%E5%8A%9F%E4%BA%8B%E4%BE%8B%E9%9B%86.pdf

宮崎県日南市飫肥では、重要伝統的建造物群保存地区の歴史的町並みを活かし、古民家を改装した一棟貸しホテルを開業しています。地域経済活性化支援機構や宮崎銀行、行政による協調支援により、観光まちづくりの資金供給体制が整備されました。​
これらの事例では、建築の専門知識を持つ従事者が、耐震性確認、法的要件の確認、用途変更手続きなどで重要な役割を果たしています。建築業従事者は、古民家や歴史的建造物の価値を見極め、観光資源として再活用可能な形にする調査・提案業務を担うことができます。
参考)https://chiou.jp/kankou/

やまとごころ「歴史的資源を活用した観光まちづくり事業」では、全国の成功事例やノウハウが紹介されており、建築業従事者が観光まちづくりに参画する際の情報源となります。

建築業従事者が観光資源を発掘・活用するアプローチ

建築業従事者は、地域に眠る未活用の物件を調査し、観光資源としての価値を見極める専門性を持っています。具体的には、空き家となっている古民家の構造や法的条件を調査し、カフェ、アートスペース、宿泊施設などへの転用可能性を探ることから始まります。
参考)https://www.hone.jp/post/future-local-design

物件調査では、耐震性の確認(建物が安全に使用できる状態か)、法的要件(建築基準法や都市計画法に基づく用途変更の可否)、地域特性との一致(観光客が興味を持つ資源かどうか)という3つのポイントが重要です。建設プロジェクトにおける技術的知見を活かし、改修計画の立案や施工管理を担当することで、観光まちづくりに直接貢献できます。​
また、建築業界では従来の「建設する」役割だけでなく、「地域資源を発掘し活用する」視点が求められています。グランドレベルデザイン(建物の1階部分のデザイン)を重視したまちづくりでは、建築物と街並みの一体的な魅力向上が図られており、建築の視点を取り入れた成功事例が地域活性化に大きく貢献しています。​
建築業従事者にとって意外な活用法として、工事現場そのものを観光資源化する方法があります。大規模建設プロジェクトの工事過程を公開することで、建設業への理解促進と地域への経済効果を同時に達成できる可能性があります。観光資源としての土木施設活用には、施設の目的の見直しや既存ストックの有効活用という視点も含まれており、建設業界全体のイメージ向上にもつながります。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/jscejipm/75/5/75_I_315/_article/-char/ja/

📋 建築業従事者による観光資源活用のステップ

  • 地域の古民家・空き家などの調査と価値評価
  • 建築基準法・都市計画法に基づく用途変更可否の確認
  • 耐震性・安全性の専門的診断
  • 観光プロジェクトに適した改修計画の立案
  • 地域特性を反映したデザイン提案
  • 施工管理と品質確保
  • 完成後の維持管理計画策定

建築業従事者は、技術的専門性と地域資源への理解を組み合わせることで、観光まちづくりの重要なパートナーとなり得ます。施設の建設・改修だけでなく、地域の魅力を再発見し、観光資源として形にする役割が期待されています。​