
瓦寸法を正確に把握するには、専門用語の理解が不可欠です2122。最も重要な測定項目は「働き幅」と「利足」で、これらは屋根に設置された状態での実寸法を表します。
働き幅寸法は瓦が横方向に占める幅で、和型53判では266mmが標準です。一方、利足寸法は縦方向の寸法で、同じく53判では236mmとなっています。これらの数値は施工時の割り付け計算に直結するため、見積もり段階での正確な把握が重要です。
瓦の全体寸法と働き寸法は異なる点も注意が必要です。例えば、日本瓦の場合、全長は305mm程度ありますが、利足は235mmとなります。この差は瓦の重なり部分によるもので、施工面積の計算時には働き寸法を使用します。
測定時の注意点として、瓦は焼き物のため個体差があることが挙げられます。±4mm程度の誤差は許容範囲内とされていますが、大量発注時には現場確認が推奨されます。
各種瓦の詳細寸法を体系的に整理した一覧表を以下に示します。
桟瓦(地瓦)の主要規格
軒瓦の寸法規格
軒瓦は屋根の軒先に使用する特殊瓦で、標準的な万十軒瓦の価格は1,500円(標準価格の3.0倍)となっています。一文字軒瓦では寸法により価格が大きく変動し、1寸5分で2,750円、2寸で3,500円、2寸5分で4,250円と段階的に上昇します。
袖瓦・角瓦の規格
袖瓦は屋根の端部に使用される瓦で、標準的な袖瓦の価格は1,750円です。角瓦は袖瓦の軒先部分に使用され、万十袖角瓦で3,500円となっています。
丸瓦の寸法展開
丸瓦は棟部に使用される瓦で、直径により価格が決まります。
瓦の寸法は価格に大きく影響し、適切な選択により工事費用の最適化が可能です。標準的な桟瓦を基準価格500円とした場合、各種瓦の価格倍率は以下のようになります。
寸法と価格の相関関係
小幅桟瓦(地割調整用)は2.0倍の1,000円、幅広桟瓦(地割調整用)は3.3倍の1,650円と、特殊寸法になるほど価格が上昇します。これは製造工程の複雑さと需要量の差によるものです。
役瓦の価格設定
のし瓦は比較的安価で、厚のし瓦が1.2倍の600円、薄のし瓦が1.4倍の700円となっています。一方、装飾性の高い鬼瓦は大幅に高価で、3寸の覆輪雲付丸立鬼でも13.0倍の6,500円、9寸になると82.0倍の41,000円まで上昇します。
施工効率による選択基準
53判は坪当たり53枚、㎡当たり16.0枚必要で、56判では坪当たり56枚、㎡当たり17.0枚となります。施工効率を重視する場合は53判が有利ですが、屋根形状によっては他の規格が適している場合もあります。
淡路瓦工業組合の価格設定を参考にした詳細な価格情報はこちら
https://a-kawara.jp/data/add.php
日本の主要な瓦産地では、それぞれ独自の寸法規格や特徴があります。これらの地域差を理解することで、より適切な瓦選択が可能になります。
菊間瓦の特徴的寸法
愛媛県菊間町では、深カギと浅カギの2種類の桟瓦が主流で、利足7寸(約210mm)が標準となっています。中坪判では215mm、八九判では185mmという独自規格も存在します。
本葺瓦では9寸判(七通判)と8寸半(八通判)があり、それぞれ異なる寸法設定となっています。
石州瓦の施工寸法
島根県石州地方の瓦では、BSルーフ53Aという規格が使用され、利足215mm、葺き幅265±4mmで施工されます。軒先瓦の出は75mmを標準とし、軒先先端より215mmを第1瓦桟の位置として設定します。
施工時の寸法調整方法
現場での寸法調整は重要な技術で、桁行き方向では265±4mmの範囲内で調整を行います。瓦桟の設置は利足寸法に基づいて順次行い、タテ桟テープはタル木ピッチ455mm以下で割り付けます。
流れ方向の寸法計算では、利足の枚数を基準とした割り付けが必要で、勾配による流れ寸法の安全限度も考慮する必要があります。
瓦寸法の誤認識や測定ミスは重大な施工トラブルにつながるため、事前の確認が不可欠です。特に既存屋根の部分修理や増築工事では、既設瓦との寸法適合性の確認が重要になります。
寸法測定時の注意点
瓦の寸法測定では、全長・全幅と利足・利幅を混同しないよう注意が必要です。一般の方が見ると同じ瓦のように見えても、微妙に異なる種類の瓦で、破損した瓦と交換できない場合があります。
測定箇所の明確化も重要で、瓦の最大寸法ではなく、実際の働き寸法を正確に測定する必要があります。特に古い瓦の場合、経年変化により寸法が変化している可能性もあります。
発注時のトラブル防止策
瓦の発注時には、製品写真だけでなく詳細な寸法図面の確認が必要です。製造メーカーにより微細な寸法差がある場合があり、これが施工時の不具合につながる可能性があります。
特に特注寸法の瓦を使用する場合は、製造可能な寸法範囲と納期を事前に確認し、工程に影響を与えないよう計画する必要があります。
施工精度の確保方法
瓦桟木の施工ピッチは、現場の瓦の実寸法を確認してから決定することが推奨されています。瓦は焼き物のため大小のばらつきが避けられず、理論値のみでの施工は不具合の原因となります。
勾配による施工限界も重要な要素で、4/10勾配では9.0m、6/10勾配では27.0mという安全限度が設定されています。これらの基準を超える場合は、瓦の規格変更や補強方法の検討が必要です。
瓦施工の詳細な技術マニュアルはこちら
https://www.kawara.co.jp/wp-content/upfiles/bsroof_manual.pdf