企業文化と企業風土の違いとは|建設業の組織づくり

企業文化と企業風土の違いとは|建設業の組織づくり

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企業文化と企業風土の違い

この記事のポイント
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企業文化は意図的に構築

経営層のビジョンや理念から能動的に作り上げる価値観で、明文化されたルールや方針として組織に浸透します

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企業風土は自然発生的

社員間の人間関係や職場の雰囲気から自然に生まれるもので、暗黙のルールや行動パターンとして定着します

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建設現場での重要性

チームワークが求められる建設業では、両者の違いを理解し適切に管理することが現場の生産性向上につながります

企業文化の定義と特徴

 

企業文化とは、経営層が明確に定めた価値観や理念に基づいて、能動的に作り上げていく組織の行動原理です。具体的には、企業のビジョン、ミッション、経営方針などが反映されたもので、社内規則や人事制度といった形で明文化されています。建設業界においては、安全第一の方針や品質管理基準など、経営側が意図的に設定した価値観が企業文化として機能します。
参考)https://squareup.com/jp/ja/townsquare/company-culture

企業文化の最大の特徴は、経営管理の一環として形作られるため、基本的にポジティブな要素で構成される点です。また、社外からの影響を受けず、自社の要素だけで醸成されるという独自性があります。建設現場では、チームワークを重視する文化や技術者としてのプロ意識を育む文化など、組織の方向性を示す指針として機能しています。
参考)https://www.kaonavi.jp/dictionary/kigyobunka/

企業文化を構成する要素には、ビジョン、ミッション、価値観、慣行、人材、ストーリー、場所、外部環境の8つがあります。これらの要素が複雑に絡み合うことで、その組織独自の文化が形成されます。建設業では、プロジェクトの成功体験や先輩から受け継がれる技術ノウハウなども、企業文化を強化する重要な要素となっています。
参考)https://www.nishimatsu.co.jp/recruit/talk02/

企業風土の定義と形成プロセス

企業風土とは、職場でのコミュニケーションのとり方、社員の仕事への取り組み姿勢、人間関係を土台とした労働環境を指します。「風通しが良い」「雰囲気が暗い」「前向きな姿勢」といった職場環境の描写が企業風土にあたり、社員一人ひとりが感じ取ることで初めて風土として定着するものです。建設現場においては、朝礼での情報共有の仕方や、職人同士の助け合いの文化など、現場の空気感として現れます。
参考)https://growth-recruit.jp/column/detail/20250803090015/

企業風土は明文化されない形で共有される、暗黙的な考え方や行動パターンとして存在します。ポジティブな風土もあればネガティブな風土もあり、「上司に意見を言いにくい」「新しい試みがしにくい」といった問題のある慣習も企業風土の一部です。建設業界では、ベテラン職人の経験則が重視される反面、若手の意見が取り入れられにくいといったネガティブな風土が課題となるケースもあります。
参考)https://www.sumitomokenki.co.jp/power/report/1319/

企業風土を構成する要素には、ハード的要素とソフト的要素の2つがあります。ハード的要素には企業理念、社是社訓、人事制度などの明文化されたルールが含まれ、ソフト的要素には職場の人間関係、従業員エンゲージメント、暗黙のルールなどが該当します。これらの要素は相互に影響を与え合い、建設現場では作業工程の相互依存性が高いため、風土の影響が成果に直結する特徴があります。
参考)https://schoo.jp/biz/column/1098

企業文化と企業風土の本質的な違い

企業文化と企業風土の最も大きな違いは、その形成プロセスにあります。企業文化は経営層が理念の提示など表面的なレベルで働きかけ、企業が自らの手で作り上げていく価値観という要素が強いのに対し、企業風土は暗黙的に共有されている組織独自の考え方や行動パターンです。建設業界では、経営方針として掲げる「安全第一」が企業文化であり、それが現場で実際にどう実践されているかが企業風土として現れます。
参考)https://uedakk.com/pages/54/

企業文化は経営管理の一環として形作られるためネガティブなものはほぼありませんが、企業風土はポジティブなものもネガティブなものも含まれます。例えば「企業風土の刷新」という文脈で使われる場合、問題を指摘せず隠蔽する傾向や、自部署の利益ばかりを主張して他部署と協力できないといったネガティブな慣習を指すことが多いのです。建設現場においては、形式的な安全管理と実際の現場での安全意識のギャップが、文化と風土の違いとして表面化することがあります。​
変革の難易度も両者で大きく異なります。企業文化は明確なビジョンや制度設計によって比較的短期間で変更できる可能性がありますが、企業風土は暗黙的に共有されているため刷新は困難な傾向があります。建設業では、安全管理の制度を整備しても、現場レベルでの意識改革が進まなければ、真の安全文化は定着しません。このため、企業文化の確立と企業風土の改善を並行して進めることが、組織の成長には不可欠となります。
参考)https://www.sofia-inc.com/blog/13804.html

建設業における企業文化の重要性

建設業において企業文化が重要視される理由は、複数の専門職が同じ目標に向かって動くため、共通の価値観が成果に直結するからです。作業工程が相互に依存している建設現場では、一つのミスが全体に影響を及ぼすため、明確な企業文化による行動指針が必要とされます。例えば、基礎工事の遅れが内装作業に波及するケースでは、工程管理や情報共有の文化が品質と納期を守る鍵となります。​
建設現場では、チームワークを重視する企業文化が特に重要です。現場監督が工程を統括し、大工や配管工、電気技師などが連携して各工程を進める際、朝礼での作業内容や安全確認の共有、日々の進捗報告といった文化が、全員が同じ目標に向かって動ける体制を築きます。西松建設のように「温かい思いやりと心くばりを、現場の隅々まで」というスローガンを掲げる企業では、職人さんが気持ちよく効率的に作業できる環境づくりを文化として定着させています。​
プロとしての誇りと責任を育む企業文化も、建設業の特徴です。専門的な知識や技能を身につけ、自分たちの仕事が人々の役に立っているのを実感することで、プロとしての誇りと責任感が大きくなります。このような文化は、若手社員の提案を年齢に関係なく後押しする風土や、新しい試みを歓迎する姿勢として現れ、組織の革新性を高める効果があります。建設業界全体が「脱・昭和」の組織改革に取り組む中、明確な企業文化の確立が若者が憧れる職場づくりの基盤となっています。​

企業文化と企業風土を建設現場で活かす実践方法

建設現場で企業文化と企業風土を効果的に活かすには、まず明確な役割分担と信頼関係の構築が必要です。現場監督が指示を出し、職人が技術を発揮し、資材管理担当がサポートする協働体制を整えることで、各自が専門分野に集中できる環境が全体の効率と品質を高めます。役割を明確化したうえで、日頃から小さなコミュニケーションを積み重ねることが、信頼構築の実践策となります。​
情報共有の仕組みづくりも重要な実践方法です。朝礼での情報共有や工程ごとのチェックリスト作成など、実践的な仕組みを導入することで、連携強化が図れます。悪天候による工期の遅れなど予期せぬトラブルに対しても、全員で工程の見直しや追加作業の調整を行い、メンバー同士が積極的に意見を出し合って柔軟に対応する姿勢が、チームの力を引き出します。このような経験の積み重ねが、困難を乗り越える企業風土を形成していきます。​
企業文化を浸透させるには、経営層のビジョンを現場レベルに落とし込む工夫が求められます。定期的な面談やグループワークを通じて、コミュニケーション能力や考える力を養い、伝える力と人の話を聞く力を育てることが効果的です。建設業では、カルチャーフィット(企業の社風に適応できるかどうか)を重視した採用活動も重要で、会社の価値基準に共感し行動に反映できる人材を選ぶことで、チームワークが大切な現場における文化の定着が促進されます。
参考)https://tokuno-kk.jp/company/culture/

<参考リンク>
企業風土と企業文化の違いについて詳しく解説されています。

 

https://squareup.com/jp/ja/townsquare/company-culture
組織文化の構成要素と形成方法について具体的に説明されています。

 

https://hrd.php.co.jp/hr-strategy/od/post-1349.php
建設現場でのチームワークの重要性と実践方法が紹介されています。

 

https://growth-recruit.jp/column/detail/20250803090015/

企業文化をデザインする 戦略を超えた「一体感」のつくり方