

道路交通法施行令第26条の3の2第3項では、やむを得ない理由がある場合にチャイルドシートの使用義務が免除されることを明確に定めています。特に緊急搬送については、子どもの急病やケガで医療機関へ急いで搬送する必要がある場合、チャイルドシートを装着せずに乗車させることが認められています。
参考)https://atomfirm.com/media/129308
この免除規定は、子どもの生命や健康を最優先するための措置です。例えば、子どもが高熱を出して痙攣を起こしている場合や、転倒して頭部を強打した場合など、一刻を争う状況では、チャイルドシートの装着に時間をかけるよりも迅速な搬送が優先されます。
参考)https://www.nextage.jp/replace_guide/info/454516/
ただし、この免除はあくまで「緊急時」に限定されており、通常の通院や定期検診などでは適用されません。緊急性の判断に迷った場合は、地元の警察署に相談することが推奨されています。
参考)https://www.2ndstreet.jp/2ndstyle/kids/24482/
救急車を呼ぶべきか自家用車で搬送すべきかの判断も重要です。救急車の場合は当然チャイルドシートは不要ですが、自家用車で搬送する際も、子どもの状態によっては大人が抱きかかえて後部座席に乗車することが認められます。このような緊急時の対応については、事前に119番通報で指示を仰ぐことも一つの方法です。
参考)https://www.rentio.jp/matome/2020/03/child-seat-term/
不動産従事者の視点では、賃貸物件の入居者に子育て世帯が多い場合、このような緊急時の情報提供も入居者サービスの一環として価値があります。物件周辺の医療機関マップや緊急時の対応手順を入居時に提供することで、入居者の安心感を高めることができます。
緊急搬送以外にも、法律でチャイルドシートの使用義務が免除される状況がいくつか存在します。まず、座席の構造上の問題として、シートベルトが装備されていない車両や、3点式・4点式などの特殊なシートベルトが搭載されている車両では、チャイルドシートを固定できないため使用義務が免除されます。
参考)https://www.goo-net.com/magazine/knowhow/carlife/43691/
乗車定員との関係では、後部座席に3人の子どもを乗せる必要があるが、チャイルドシートを3つ設置する幅がない場合など、座席数以上のチャイルドシートを設置できない状況も免除対象となります。ただし、この免除は乗車定員を超えない範囲内での適用が条件です。
参考)https://www.drivers-work.com/column/knowledge/child-seat/
健康上・身体的理由による免除も認められています。具体的には、皮膚疾患や骨折、脱臼などの怪我により、チャイルドシートの着用が子どもの健康に悪影響を及ぼす場合や、極端な肥満などでチャイルドシートに着座できない場合が該当します。
参考)https://carnext.jp/magazine/article/child_car_seat_st99/
日常的な世話に関する一時的な免除として、運転者以外の同乗者が授乳やおむつ替えを行う際には、その作業中に限りチャイルドシートの使用義務が免除されます。ただし、世話が終わった後は速やかにチャイルドシートに戻す必要があります。
これらの免除規定を知っておくことは、不動産業界で子育て世帯向けの物件を扱う際にも有用です。例えば、3人兄弟の家族が車を所有している場合、車種によってはチャイルドシートを3つ設置できない可能性があり、駐車場の広さや複数台駐車の可否が物件選びの重要なポイントになることがあります。
タクシーやハイヤー、バスなどの一般旅客自動車運送事業の車両に乗車する場合、チャイルドシートの使用義務は法的に免除されています。これは道路交通法施行令で明確に定められており、営業用車両では6歳未満の子どもを乗せる際もチャイルドシートを設置する必要がありません。
参考)https://driver-first.com/column/archives/1680
この免除規定の背景には、タクシーやバスでは子どもの乗車を事前に予測することが難しく、すべての車両にチャイルドシートを常備することが現実的でないという事情があります。また、シートベルトが装着されていないバスや、座席の構造上チャイルドシートの設置が難しい車両も多く存在します。
ただし、法律上免除されているからといって、安全性が保証されているわけではありません。実際には、チャイルドシート不使用時の致死率は使用時の約4.7倍にも上るというデータがあります。タクシー乗車時でも可能な限り安全対策を講じることが推奨されています。
参考)https://event.rakuten.co.jp/family/story/article/2024/taxi-childseat/
具体的な安全対策としては、子どもを後部座席の中央に座らせ、大人が隣で支えることや、シートベルトを着用させる(身長が低い場合は大人用のベルトが適切に機能しない可能性がありますが、着用しないよりは安全です)などがあります。また、急ブレーキや急カーブでは子どもが座席から転げ落ちないよう、常に大人が注意を払う必要があります。
貸切バスについては、事前にバス会社に相談することでチャイルドシートの設置を依頼できる場合があります。幼稚園の送迎バスに関しては特殊な規定があり、通常の幼稚園バスは国から幼児送迎用として認められた車両であり、座席も幼児専用になっているためチャイルドシートの設置ができません。一方、過疎バスを幼稚園送迎目的で使用する場合にはチャイルドシートが必要となります。
不動産業界では、駅から離れた物件や公共交通機関が不便なエリアの物件を扱う際、タクシー利用の利便性も訴求ポイントになります。子育て世帯に対しては、タクシーでのチャイルドシート免除規定を伝えることで、車を持たない世帯でも安心して暮らせることをアピールできます。
チャイルドシート不使用による違反は「幼児用補助装置使用義務違反」として、運転者に対して違反点数1点が加点されます。ただし、反則金や罰金などの金銭的な罰則は科されません。これは比較的軽い罰則に見えますが、違反点数が累積して6点に達すると30日間の免許停止となるため、注意が必要です。
参考)https://leaman.jp/faq/%E3%83%81%E3%83%A3%E3%82%A4%E3%83%AB%E3%83%89%E3%82%B7%E3%83%BC%E3%83%88%E3%82%92%E3%81%A4%E3%81%91%E3%81%AA%E3%81%84%E3%81%A7%E5%AD%90%E3%81%A9%E3%82%82%E3%82%92%E4%B9%97%E3%81%9B%E3%81%9F%E5%A0%B4
興味深いのは、チャイルドシート義務化から20年以上が経過した現在でも、使用率が約82.4%にとどまっているという事実です。つまり、6歳未満の子どもの約6分の1がチャイルドシートを使用していない状態で乗車しています。これは法律違反であるにもかかわらず、実際の取り締まりが十分に行われていない現状を示唆しています。
参考)https://jaf.or.jp/common/news/2025/20250925-001
検挙されにくい理由としては、チャイルドシート不使用は車内の状況を外から確認しなければならず、通常の交通違反に比べて発見が困難である点が挙げられます。また、警察の取り締まりも飲酒運転やスピード違反など、より重大な違反に重点が置かれている傾向があります。
参考)https://autoc-one.jp/special/5006875/
しかし、検挙率の低さは安全性とは無関係です。統計データによると、チャイルドシート不使用時の致死率は適正使用時の0.10%に対して0.49%と、約4.7倍も高くなっています。2024年から2025年の調査期間中、6歳未満の子どもの自動車同乗中の死傷者数は減少傾向にありますが、依然として多くの子どもが事故に巻き込まれています。
参考)https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/anzen/img/childseat/R6_childseat_toukei.pdf
年齢別の使用率を見ると、1歳未満が93.2%、1歳から4歳が84.8%と比較的高い一方で、5歳児の使用率は66.7%と著しく低くなっています。これは「もうすぐ6歳だから」という親の油断や、子ども自身が嫌がることが原因と考えられます。
参考)https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/anzen/childseat.html
さらに深刻な問題として、チャイルドシートを使用していても、適切な取り付けができている割合は74.8%、幼児を適切に着座させることができている割合は55.6%にとどまっています。つまり、使用していても正しく使えていないケースが多く、本来の安全効果が発揮されていない可能性があります。
不動産業界では、駐車場付き物件を扱う際に、チャイルドシートの重要性と正しい使用方法について情報提供することも付加価値となります。特にファミリー向け物件では、車の出し入れがしやすい駐車場の設計や、チャイルドシートの着脱がしやすい広さの確保なども検討ポイントとなります。
乗車定員とチャイルドシートの関係は、意外と複雑なルールがあります。道路交通法では、12歳未満の子どもは3人で大人2人分として計算されるため、5人乗りの車であれば理論上は大人2人と子ども4人が乗車できます。しかし、チャイルドシートの設置義務との兼ね合いで、実際にはより複雑な判断が必要になります。
参考)https://seatbelt-childseat.jp/project
例えば、後部座席に6歳未満の子どもを3人乗せる必要がある場合、座席の幅の関係でチャイルドシートを3つ並べて設置することが物理的に不可能なケースがあります。このような場合、道路交通法施行令では「座席数以上の数のチャイルドシートのすべてを固定して用いることができない場合」として、設置できない分については使用義務が免除されます。
参考)https://aqrent.jp/blog/%E3%83%81%E3%83%A3%E3%82%A4%E3%83%AB%E3%83%89%E3%82%B7%E3%83%BC%E3%83%88%E3%81%AE%E4%BD%BF%E7%94%A8%E7%BE%A9%E5%8B%99%E3%81%8C%E5%85%8D%E9%99%A4%E3%81%95%E3%82%8C%E3%82%8B%E6%9D%A1%E4%BB%B6/
ただし、この免除には重要な条件があります。まず、乗車定員の範囲内であることが絶対条件です。定員を超えての乗車は別の道路交通法違反(定員外乗車違反)となり、違反点数1点と反則金(普通車で6,000円)が科されます。また、「設置できる限りでチャイルドシートを設置する」ことが前提となっており、設置可能な座席には必ずチャイルドシートを装着しなければなりません。
参考)https://www.e-rabbit.jp/carticle/child-seat/
現実的な対応としては、以下のような方法があります。まず、チャイルドシートを2つまで設置し、3人目の子どもについては大人が抱きかかえるか、年齢が高い子どもであればシートベルトのみで着座させる方法です。ただし、これは法的には免除されますが、安全性の観点からは推奨されません。
参考)https://www.okanetametai.com/nochildseat/
より安全な解決策としては、車両の買い替えや車種の変更が挙げられます。3列シート車(ミニバンなど)であれば、チャイルドシートを3つ並べて設置できる場合が多くあります。また、幅が狭いコンパクトタイプのチャイルドシートや、スライド機能付きのシートを選ぶことで、後部座席に3つ並べて設置できる可能性が高まります。
不動産業界で3人以上の子どもがいる家族向けの物件を提案する際は、駐車場のスペースも重要な要素です。ミニバンや大型車を駐車できる広さがあるか、複数台駐車が可能かといった点は、子育て世帯にとって物件選びの重要な判断材料となります。
また、都心部などで車を持たない選択をする家族も増えています。その場合、カーシェアリングやレンタカーの利用可能性、タクシーの利用しやすさなども物件の訴求ポイントとなります。チャイルドシート付きのレンタカーサービスや、事前予約制のチャイルドシート付きタクシーなど、周辺のサービス情報を提供することも入居者満足度の向上につながります。
警察庁の公式サイトでは、チャイルドシート使用状況の全国調査結果や適切な取り付け方法の詳細情報が掲載されています。正しい使用方法を確認する際の参考になります。
国土交通省のチャイルドシートアセスメント資料では、各製品の安全性能評価や選び方のポイントが詳しく解説されています。購入時の参考資料として有用です。