

金属結合と共有結合は、原子同士が電子を介して結びつく化学結合ですが、その仕組みには大きな違いがあります。共有結合は非金属元素同士が不対電子を出し合い、電子対を共有することで形成される結合です。一方、金属結合は金属元素の陽イオンが自由電子によって繋ぎ止められてできる結合で、電子が特定の原子間ではなく全ての原子間で共有されています。
参考)https://xn--8pr038b9h2am7a.com/method_ch/14052/
共有結合では、各原子が電子を出し合って電子対を作り、その電子対を共有することで結合が生じます。この結合は電子を受け取ろうとする傾向の強い原子間、つまり非金属元素と非金属元素の間で形成されます。例えば、水素分子H₂や酸素分子O₂、アンモニアNH₃、メタンCH₄などが共有結合で形成される代表的な物質です。
参考)https://www.tokkin.co.jp/media/technicalcolumn/2304070
金属結合の場合、金属原子は電気陰性度が小さく、電子を引きつける力が弱いため、共有電子対はどちらの原子のものにもなりません。このため電子は自由に動き回ることができ、この電子を「自由電子」と呼びます。金属原子は電子を失って陽イオンになり、全ての陽イオンで自由電子を共有しているような状態になります。代表的な金属結合の物質としては、ナトリウムNa、アルミニウムAl、鉄Fe、銅Cuなどがあります。
参考)https://kimika.net/r3kinzokuketsugou.html
電気陰性度は化学結合の種類を決定する重要な要素であり、金属結合と共有結合の違いを理解する上で欠かせない概念です。電気陰性度とは、原子が共有電子対を自分の方に引っ張る強さを表す指標です。周期表の右上にいくほど電気陰性度は大きくなり、ハロゲンのフッ素が最大値を示します。
参考)https://rikeilabo.com/electronegativity
非金属元素は陰性が強く電子を欲しがるため電気陰性度が大きく、金属元素は陽性が強く電子を欲しがらないため電気陰性度が小さいという特徴があります。結合している元素の電気陰性度によって、化学結合は以下のように分類されます。原子間の電気陰性度が小さい同士の場合は金属結合に、電気陰性度が大きい同士の場合は共有結合のままになります。
参考)https://mirai-eggs.org/science_blog/%E5%8C%96%E5%AD%A6%E7%B5%90%E5%90%88%E3%81%AE%E7%A8%AE%E9%A1%9E/
電気陰性度の周期表と化学結合の分類について詳しく解説
ケテラーの三角形は、電気陰性度の平均と差を用いて、金属結合、共有結合、イオン結合を視覚的に分類する図です。電気陰性度の差が1.7以上の結合をイオン結合、1.7以下の結合を共有結合または金属結合と分類します。電気陰性度がどちらも小さい場合、電子は勝手に動き回るため金属結合となります。youtube
参考)https://www.molecularscience.jp/lecture/BasicInorg11.pdf
金属結合と共有結合では、結合の仕組みの違いにより、物質の物性に大きな差が生じます。結合の強さは一般的に、共有結合>イオン結合>金属結合の順になり、金属結合の結合力は共有結合やイオン結合に比べると低くなっています。
参考)https://www-it.jwes.or.jp/qa/details.jsp?pg_no=0050020020
| 金属結合 | 共有結合 | |
|---|---|---|
| 組み合わせ | 金属原子と金属原子 | 非金属原子と非金属原子 |
| 結合方法 | 自由電子と陽イオンのクーロン力 | 原子同士が出し合った価電子の共有 |
| 物質例 | Na、Al、Fe、Cu | ダイヤモンド、黒鉛、N₂、CH₄ |
| 電気伝導性 | 高い | 低い |
| 熱伝導性 | 高い | 低い |
| 延性・展性 | 大きい | 小さい(非常に硬い) |
| 融点 | 中程度 | 非常に高い(共有結合結晶の場合) |
参考)https://pweb.cc.sophia.ac.jp/takai-k/12-web-shiryou-1.pdf
金属結合では自由電子が存在するため、電圧を加えると電流が生じ、電気を通すことができます。この性質を電気伝導性といい、金属の代表的な特徴です。また、自由電子により金属は熱伝導性や金属光沢といった特性も持ちます。
参考)https://www.monodukuri.com/gihou/article/3569
共有結合で形成された物質、特に共有結合結晶は、電子が各原子と強く結び付いているため自由に移動できず、電気伝導性が低くなります。しかし、共有結合結晶は非常に硬く、融点も非常に高いという特徴があります。高校化学で扱う共有結合結晶としては、黒鉛C、ダイヤモンドC、単体のケイ素Si、二酸化ケイ素SiO₂、炭化ケイ素SiCの5種類が代表的です。
参考)https://note.com/rapparapa18/n/nfad59680ba38
金属結合において自由電子が果たす役割は極めて重要であり、金属材料の特性を決定する主要因となっています。自由電子とは、原子核の束縛から解放され、金属全体を自由に動き回ることができる電子のことです。金属元素は電気陰性度が低いため、電子を外に出して陽イオンになろうとする性質があります。
参考)https://agus.co.jp/?p=7882
自由電子の数が1原子あたりで多いほど金属結合は強くなり、融点が高くなる傾向があります。また、自由電子の数が同じ場合、金属原子の原子半径が小さいほど結合が強くなります。この自由電子の動きが、金属の電気伝導性、熱伝導性、金属光沢といった特徴的な性質をもたらしています。
金属の延性や展性も自由電子の存在に起因します。金属結合では電子が特定の原子間で共有されているのではなく、全ての原子間で共有されているため、共有結合のような方向性がみられません。このため、外部から力が加わって原子の位置がずれても、自由電子が陽イオン間を繋ぎ止め続けることができ、再結合性が良く非常に延性に優れます。
参考)https://kazubara.net/mechanical-design/syoshinnsyademowakarukikaizairyou/syoshinnsyademowakarukikaizairyou4-ketugou/
不動産業界で扱う建築材料において、鉄骨などの金属材料は引っ張りに強く伸びもあり、塑性領域が大きくすぐに破断しないという特徴があります。これは金属結合における自由電子の性質によるものです。一方、コンクリートのようなセラミックス系の材料は共有結合やイオン結合で形成されており、圧縮力に強いですが引っ張ると破断しやすいという対照的な性質を持ちます。
参考)https://www.nipponsteel.com/company/publications/monthly-nsc/pdf/2005_8_9_151_09_12.pdf
建築材料の選定において、金属結合と共有結合の違いを理解することは極めて重要です。不動産業界では、材料の化学結合の種類が構造物の性能や耐久性に直接影響を与えるため、適材適所での使用が求められます。
参考)http://www.sustain-dpl.com/UploadFile/article/202405271545004098.pdf
鉄筋コンクリート(RC:Reinforced Concrete)は、金属とセラミックスを複合化させた代表的な複合材料です。セメント、石、砂でできているコンクリートはセラミックスに分類され、圧縮力に強いですが引っ張ると破断しやすいという性質があります。これに対して、金属である鉄は引っ張りに強く伸びもあり、塑性領域が大きくすぐに破断しないという特徴を持ちます。
金属結合の特徴である再結合性の高さは、建築材料の加工性や施工性に大きく影響します。鉄骨構造では、溶接や接合が容易に行えるのは金属結合の性質によるものです。さらに、自由電子による高い電気伝導性と熱伝導性は、建築物の配線計画や断熱設計において考慮すべき重要な要素となります。
金属とセラミックスの変形特性の違いについて詳細な解説(新日本製鐵株式会社資料)
建築業界では、スチール・コンクリート複合構造壁など、金属とコンクリートの強みを組み合わせた構造が一般的になっています。金属の引張強度と延性、コンクリートの圧縮強度を最大限に活用することで、より安全で効率的な建築物が実現されています。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9959073/
共有結合で形成される材料としては、ガラスやセラミックスタイルなどが建築材料として使用されます。これらは電気陰性度の差が大きな元素間の結合でイオン性の強い化学結合を持ち、透明性や脆性といった特徴があります。共有結合結晶の代表である二酸化ケイ素SiO₂は、ガラスの主成分として窓材や外装材に広く利用されています。
金属結合の融点は共有結合やイオン結合に比べて低めですが、自由電子の数が多いほど融点が高くなる傾向があります。この性質は、建築材料の耐火性能を評価する際の重要な指標となります。また、結合の強さは一般的に共有結合>イオン結合>金属結合の順になるため、用途に応じた材料選定が必要です。
参考)https://kimino-school.com/study/post-2414/
不動産従事者にとって、これらの化学結合の違いを理解することは、建築材料の特性を正確に把握し、適切な提案を行う上で不可欠な知識となります。金属結合による延性と共有結合による硬度、それぞれの特性を活かした複合材料の開発は、今後も建築技術の進歩において重要な役割を果たすでしょう。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8069853/