複合材料一覧と種類を建築事業者向けに解説

複合材料一覧と種類を建築事業者向けに解説

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複合材料一覧と種類

この記事でわかること
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複合材料の基本分類

CFRP、GFRP、FRPなど建築用複合材料の全体像を把握できます

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建築事業での活用方法

各複合材料のメリットと施工時の注意点を理解できます

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選定のポイント

用途に応じた最適な複合材料の選び方がわかります

複合材料とは、異なる2種類以上の素材を組み合わせることで、単一材料では発揮できない優れた特性を持つ材料の総称です。建築分野では、強化材として繊維を、母材としてプラスチック樹脂を使用するのが一般的で、これにより軽量でありながら高強度な構造材を実現できます。
参考)複合材料一覧

複合材料の主な分類として、強化繊維の種類によって呼び名が変わります。ガラス繊維を使用したものはGFRP(Glass Fiber Reinforced Plastics)、炭素繊維を使用したものはCFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics)、アラミド繊維を使用したものはAFRP(Aramid Fiber Reinforced Plastics)と区別されます。
参考)「環境に配慮した先端複合材料」 ~リサイクル性・加工性・コス…

複合材料の主要な種類と特徴一覧

建築事業で使用される複合材料は、それぞれ異なる特性を持っています。以下の表は、主要な複合材料の比較です。
参考)繊維強化プラスチック(FRP,GFRP)入門

材料名 強化繊維 主な特徴 建築用途
CFRP 炭素繊維 高強度・高剛性・軽量・耐腐食性 橋梁補強材、構造補強、高層建築
GFRP ガラス繊維 高強度・耐腐食性・電気絶縁性・コスト効率 外壁パネル、屋根材、床材
AFRP アラミド繊維 高強度・耐熱性・難燃性 防護材、耐震補強
CFRTP 炭素繊維 熱可塑性・リサイクル性 建築部材

CFRPは鉄の1/5の軽さでありながら強度は2倍以上を誇り、航空宇宙産業や高級車だけでなく、土木建築の補強材として広く採用されています。腐食や腐食環境に対する耐性があり、金属代替素材として最適です。
参考)土木

GFRPは建築産業において、軽量でありながら強度があり、耐候性や耐腐食性にも優れているため、外壁パネル、屋根材、床材などの建築材料として幅広く使用されています。CFRPに比べて材料コストが低く、経済的な選択肢となります。
参考)【強化プラスチック】GFRP CFRP FRPとは?強化プラ…

複合材料に使用される強化繊維一覧

複合材料の性能は、使用する強化繊維によって大きく異なります。炭素繊維は高強度、高弾性率、軽量、耐熱性に優れ、航空宇宙産業、自動車産業、建築・土木の補強材として使用されます。​
ガラス繊維は高強度、軽量、耐熱性、絶縁性を持ち、建築土木の補強材や断熱材、自動車産業の車体部品などに広く採用されています。バサルト繊維は天然素材であり環境に優しく、高強度、高弾性率、耐熱性、耐摩耗性を備えています。​
アラミド繊維は高強度、高弾性率、耐熱性、耐薬品性に優れており、防弾チョッキや防護服、航空宇宙産業の複合材料、自動車産業のタイヤコードなどに使用されます。SiC繊維は高強度、高弾性率、耐熱性、耐酸化性を持ち、航空宇宙産業のエンジン部品や原子力発電などのエネルギー産業で活用されています。​

複合材料のマトリックス樹脂と製造技術

複合材料の母材となるマトリックス樹脂には、熱硬化性樹脂熱可塑性樹脂があります。熱硬化性樹脂には不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂フェノール樹脂などがあり、熱可塑性樹脂にはポリプロピレン(PP)やナイロンなどが使用されます。
参考)3 次元織物複合材料の有限要素モデリング手法の構築と力学的特…

バインダーは繊維を束ねて糸状にする際に重要な役割を果たし、強化用繊維の生産を容易にし、マトリックス樹脂との組み合わせにおいて作業性を向上させます。複合材料の界面でバインダーが作用することで、強化用繊維とマトリックス樹脂の特長を最大限に発揮させることができます。​
近年の製造技術として、自動化繊維配置(AFP)、樹脂移動モールディング(RTM)、3D印刷などの革新的な生産プロセスが複合材料の生産と適用方法に革命をもたらしています。これらの自動製造技術により、繊維の向きと樹脂分布を正確に制御でき、より強く、軽量で信頼性の高い複合構造が実現できます。
参考)https://www.fortunebusinessinsights.com/jp/%E8%A4%87%E5%90%88%E6%9D%90%E6%96%99%E5%B8%82%E5%A0%B4-102295

複合材料の建築分野における用途展開

複合材料は建築・土木分野において多様な用途で活用されています。ユニットバス、橋梁などの構造物から、外壁パネル、屋根材、床材まで幅広い建築材料として採用されています。​
CFRPは土木建築補強用途において、腐食や腐食環境に本質的に耐性があり、金属代替素材として最適です。狭いスペースでも作業しやすく、居ながら作業が可能という取り扱いの容易さも建築現場での大きなメリットとなっています。​
複合材料を用いた配管補修技術として、炭素繊維とエポキシ樹脂のコンポジットを積層することで、減肉配管の強度復元、漏れ止め、防食ができる技術も開発されています。この技術により、最大設計寿命20年の強度復元が可能で、低圧ラインのピンホール漏れ止めにも有効です。
参考)コンポジットリペア href="https://www.furmanite.co.jp/service/composite" target="_blank">https://www.furmanite.co.jp/service/compositeamp;#8211; 富士ファーマナイト株式会…

複合材料一覧から見る建築業界での選定基準

建築事業者が複合材料を選定する際には、強度、重量、コスト、環境、加工性のバランスを考慮する必要があります。材料選定のプロセスとして、まず要求仕様の確認(強度・重量・環境条件)を行い、候補材料の抽出(金属・樹脂・複合材)、加工性やコストの比較、規格や安全基準の確認(JIS、ISO等)を経て、試作と評価を実施します。
参考)https://ts-e.jp/diary/193091

材料の機械的特性として、引張試験や曲げ試験によって強度を評価し、化学試験では耐薬品性や腐食に対する耐性を確認します。熱分析試験では熱膨張や熱履歴に対する耐性を評価することが重要です。
参考)試作における複合材料の利用と特性評価のポイント

実務では最適解は一つではなく、トレードオフを理解したうえで選定することが求められます。試作段階での特性評価は量産時の品質に大きく影響するため、材料のロット間変動なども考慮しながら進めることが重要です。​
複合材料の選定では、用途や求められる特性に応じて最適な材料と組み合わせを探す必要があり、機械的特性(強度、弾性率、破断伸び)、熱的特性(熱膨張率熱伝導率)、耐環境性(耐食性、耐紫外線性)、加工性(成型方法、加工コスト)などの要素を総合的に評価します。​

複合材料一覧における施工方法と注意点

複合フローリングなど建築材料として複合材料を使用する場合、施工方法を厳守することが重要です。下地材には12mm厚以上の耐水合板を使用し、下地合板は糊釘併用で固定します。
参考)株式会社モリアンむく単板貼り(複合)フローリング 施工ガイド

床下の換気口は十分に設けて風通しを良くし、含水率は12%以内にする必要があります。大引は90mm角以上、根太は45mm角以上の乾燥材を使用し、大引の間隔は909mm、根太の間隔は303mmとします。​
施工は必ず釘とウレタン系接着剤を併用し、接着剤は直径6mmくらいの帯状に塗布します。糊の剥がれによる床鳴り防止のため、根太上の位置にしっかり塗布することがポイントです。​
雨濡れなど湿った状態の下地には施工せず、下地の不陸がないことを確認し、下地合板の継ぎ目の段差は0.3mm以内にします。接着剤が硬化するまで(24時間以上)は上に乗らないよう注意が必要です。​

複合材料一覧に見る耐久性とメンテナンス

アルミ複合板を例にとると、正しく使えば屋外でも5年以上、屋内なら10年以上使える優れた耐久性を持っています。三層構造(表層アルミニウム約0.2〜0.3mm、芯材ポリエチレン樹脂、裏層アルミニウム)により、耐候性・軽量性・加工性に優れた性能を実現しています。
参考)アルミ複合板の寿命は?耐久性や屋外使用時の注意点をプロが徹底…

複合材料の最大のメリットは軽量性と耐久性であり、軽量でありながら非常に丈夫で、耐候性にも優れているため屋外での長期使用が可能です。従来のプラスチック製品と比べ、高強度化できることにより肉厚を減らしたり、構成部品が不要になったり、構造を一体化できるなど様々なメリットがあります。
参考)複合材料 メリット デメリット

CFRPの特徴は「軽くて・強くて・腐食しない」ことであり、疲労強度に強い、耐薬品性に優れる、通常の熱的環境では安定といった様々な特性があります。使用環境、施工方法、メンテナンス次第で寿命には差が出るため、導入前に設置条件をしっかり把握しておくことが重要です。
参考)CFRPとは? 特徴や用途から成形方法の選び方まで詳しく解説

コンポジットリペアでは、積層したコンポジットは剥離する恐れがなく、防食の進行を完璧に防ぎます。再塗装などの費用が不要となるため、補修後のメンテナンスも容易になります。​

複合材料一覧から見る特性評価方法

複合材料の性能評価は、材料の特性を理解し適切に利用するために欠かせないプロセスです。単層の主荷重方向における機械的特性、および多層複合積層板の対応する特性値は、静的引張試験、圧縮試験、せん断試験によって測定されます。
参考)https://ameblo.jp/kagakusyanotamago12345/entry-12883991516.html

品質保証の目的では、曲げ試験や層間せん断強度(ILSS)測定試験などの単純な静的試験が一般的に用いられます。一般的な積層FRP積層板の層間剥離挙動を理解するために、層間エネルギー解放率を測定する静的試験が行われます。
参考)複合材試験

樹脂複合材料(CFRP)の層間剥離の発生およびき裂進展に対する抵抗値である破壊靭性を求める試験も重要です。開口型(モードⅠ)、縦せん断型(モードⅡ)およびそれらの混合型に対する破壊靭性の測定が可能で、DCB法、ENF法、MMB法などの試験法が規格化されています。
参考)樹脂・複合材料の強度評価

衝撃後圧縮試験(CAI)は、航空宇宙で使用される複合材構造において重要であり、衝撃荷重によって事前に損傷を受けた積層板の静的圧縮残留強度を測定するために使用されます。​

複合材料一覧における技術動向と将来性

世界の複合材料市場規模は、予測期間中に年平均成長率(CAGR)7.8%で成長し、2024年の889億8000万ドルから2032年までに1626億6000万ドルに達すると予測されています。腐食抵抗、高強度比、長寿命などの特性により、インフラストラクチャプロジェクトに非常に適しています。​
道路、水・排水システム、橋、護岸など、弾力性のある構造を構築するために複合材料が使用されています。米国では600,000を超える橋が状態が悪く緊急の修理が必要とされており、老朽化したインフラストラクチャは市場にとって潜在的に大きな機会となっています。​
複合材料の科学的進歩は、急速な工業化と技術開発により勢いを増しています。自動化繊維配置(AFP)、樹脂移動モールディング(RTM)、3D印刷などの生産プロセスの革新により、生産時間と材料の廃棄物を削減し、コスト削減と効率の向上につながっています。​
3D印刷、または添加剤の製造は、最小限の材料使用とリードタイムの短縮で複雑な複合部品を生産するための新しい可能性を開いています。メーカーは従来の方法で達成することが困難または不可能なカスタムシェイプとサイズを作成できるようになっています。​

複合材料一覧に基づく建築現場での実践的活用法

建築現場において複合材料を効果的に活用するには、各材料の特性を理解した上で適材適所の配置が求められます。CFRPは構造補強や橋梁補強材として優れた性能を発揮し、特に既存構造物の耐震補強では軽量性と高強度を活かした施工が可能です。
参考)https://www.mdpi.com/2075-5309/13/6/1509/pdf?version=1686546122

複合材料の利点として、従来材料と比べて優れた疲労抵抗性と腐食抵抗性、剛性と高強度、温度要因への対応力があります。建設分野では、これらの特性を活かして様々な建物構造要素への応用が進んでいます。​
複合材料は2種類以上の材料を組み合わせ成形することによって、素材単独では持つことのできない性質を発揮できる材料であり、少なくとも二つの科学的に異なった物質を組み合わせたものと定義されています。旅客機や軍用機、自動車、新幹線、橋梁など幅広い分野で使用されています。​
繊維強化複合材料(FRP)は複合材料の中でも工業化の進んだ人工材料であり、高強度・高剛性などの優れた機械的特性に加えて、優れた耐食性と構造用材料としての軽量性を有しています。最も単純な形態は繊維が軸方向一方向に配向している一方向材(UD材)で軸方向の特性に優れますが、実構造物では荷重が面内軸垂直方向に作用する場合があるため、繊維を多方向に配向した形態のFRPを製造することが必要です。​
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