コンクリート工生産性向上に施工効率化と技術革新を実現

コンクリート工生産性向上に施工効率化と技術革新を実現

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コンクリート工の生産性向上

この記事のポイント
🏗️
規格標準化による効率化

部材サイズの標準化とプレキャスト化で現場作業を大幅削減

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先進技術の導入

機械式継手や高流動コンクリートで工期短縮と省人化を実現

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デジタル技術活用

BIM/CIMとICTで建設プロセス全体を最適化

コンクリート工における生産性向上の重要性

建設業界では技能労働者約340万人のうち、約110万人の高齢者が10年間で離職すると予想されており、労働力不足が深刻化しています。国土交通省はi-Constructionの一環として、2025年度までに建設現場の生産性を2割向上させる目標を掲げ、さらにi-Construction 2.0では2040年度までに省人化を3割進め、生産性を1.5倍向上することを目指しています。

 

土工やコンクリート工は直轄工事の全技能労働者の約4割を占めており、トンネル工事が約50年間で生産性を最大10倍向上させたのに対し、これらの工種には改善の余地が大きく残されています。コンクリート工の生産性向上は、建設業界全体の競争力強化と労働環境改善の鍵となっています。

 

気象条件に影響されやすく計画的な施工が困難であること、現場ごとに型枠設置や鉄筋組立が異なり複雑であること、一品受注生産のためスケールメリットが働きにくいことなど、従来のコンクリート工には多くの課題があります。これらを解決するため、規格の標準化、要素技術の一般化、サプライチェーンマネジメントの導入が推進されています。

 

国土交通省「コンクリート工の生産性向上に向けた取組方針」では、全体最適設計の導入と工程改善の具体的な方策が示されています

コンクリート工のプレキャスト化による効率化

プレキャスト工法は、コンクリート部材を工場で製造し、現場で組み立てる工法です。橋脚、桁、ボックスカルバートなどの規格を標準化し、定型部材を組み合わせた施工により、大幅な生産性向上が実現します。

 

工場生産によるメリットは多岐にわたります。現場作業の屋内作業化により、天候に左右されない計画的な施工が可能になります。型枠や鉄筋のセットを正確に行え、コンクリートの充填も型枠の隅々まで均一におこなえることで、品質が高いレベルで均一化されます。在来工法と比較して約3分の2の工期で済み、現場での型枠設置、鉄筋組立、コンクリート打設、養生作業が不要となるため、少ない作業員で工事を進められます。

 

令和6年3月に公表された「VFMによるコンクリート構造物の工法比較に関する試行要領(案)」では、プレキャスト工法の採用判断にVFM(Value for Money)の概念が導入されました。施工費だけでなく、省人化効果、工期短縮効果、さらには低炭素コンクリートの採用しやすさなど、総合的な価値を評価する仕組みです。改正品確法においても「経済性に配慮しつつ、総合的に価値の最も高い資材等を採用する」ことが明記され、プレキャスト工法の導入が加速しています。

 

一般財団法人建設業技術者センター「コンクリート工事における生産性向上とプレキャスト工法の活用」では、最新の取り組み事例が紹介されています

コンクリート工の鉄筋組立作業の効率化技術

鉄筋コンクリート構造物は耐震設計規定の改定に伴い高密度配筋となる事例が増え、鉄筋の加工・組立てをいかに効率的に行うかが生産性向上の鍵となっています。

 

機械式継手・機械式定着工法は、従来のガス圧接継手や折り曲げ定着に代わる革新的な技術です。鉄筋の端部にカプラーやスリーブ等を取り付けて機械的に接続するこの工法により、難易度の高い継手作業が改善されます。モルタル充てん継手、ねじふし鉄筋継手、スリーブ圧着ネジ継手、摩擦圧接ネジ継手などの種類があり、機械式鉄筋継手を採用した場合、鉄筋の組立工事が工期で20~30%短縮、作業員数で15~20%程度削減できることが確認されています。
鉄筋のプレハブ化も重要な効率化策です。現場における鉄筋組立て作業を工場でのプレハブ化に転換することで、広い場所での作業が可能となり、鉄筋組立効率が従来の方法より約1.2倍向上します。足場上での作業時間を短縮できることから、災害リスクの低減にもつながっています。

 

埋設型枠の活用により、型枠を構造物の一部として使用することで、型枠設置作業の効率化と脱型作業が不要になります。これらの技術を組み合わせることで、現場作業の大幅な削減と安全性の向上が同時に実現できます。

 

コンクリート工の高流動コンクリート活用による施工改善

高流動コンクリートは、使用する水を通常のコンクリートより少なくし、高い流動性を有するコンクリートです。この技術は1986年に岡村甫先生が提唱され、振動締固めを行う作業員の熟練度によらずに高品質なコンクリートが構築できる画期的な技術として注目されています。

 

高流動コンクリートの導入効果は多面的です。締固め作業の軽減により、バイブレーター作業が不要または大幅に削減され、作業員の負担が軽減されます。打込み作業時間が短縮されることで、工期の短縮と労働生産性の向上が実現します。密実な充填が可能なため、高密度配筋部分でも品質の高いコンクリートを構築でき、耐久性の向上にもつながります。

 

国土交通省が策定した「流動性を高めた現場打ちコンクリートの活用に関するガイドライン」では、適切な配合設計や施工方法が示されています。今後、現場打ちコンクリートの施工技術の自動化・高度化に伴い、高流動コンクリートを用いることによりコンクリート工事の生産性が著しく向上することも期待されています。

 

連続打設工法との組み合わせにより、打設中断を最小限に抑え、さらなる効率化が図られます。生産性向上だけでなく、品質の均一化や耐久性向上など、コンクリート構造物の長寿命化にも貢献する重要な技術です。

 

コンクリート工のICT・BIM/CIM活用による全体最適化

デジタル技術の活用は、コンクリート工の生産性向上において新たな次元の効率化をもたらしています。BIM/CIM(Building/Construction Information Modeling)は、3次元モデルに時間軸や施工情報を加え、建設プロセス全体を可視化・最適化する技術です。

 

設計段階でのBIM/CIM活用により、構造物の干渉チェックや施工性の検証が可能になり、手戻りの防止や設計品質の向上が実現します。3次元モデルから数量を自動算出することで、積算業務の効率化と精度向上が図られます。プレキャスト部材の設計においても、BIM技術により効率的で正確な設計が可能になります。
施工段階では、ICT建設機械の自動制御により、建設現場のIoT化が進んでいます。ドローン等による3次元測量を活用した出来形管理により、検査項目が半減し、書類による検査が不要になります。画像解析やAIを活用した品質管理、点群データを活用した出来形管理などにより、施工から維持管理段階に至るまでの効率的な情報伝達が実現します。

 

デジタルツイン技術の導入により、現実の建設現場を仮想空間に再現し、資材や建設機械、作業員の位置・稼働データなどをリアルタイムで把握できます。AR・VRにより設計情報を現場に投影し、施工のイメージを関係者全員で共有することで、手戻りやミスの防止、効率的な作業の実現が可能になります。
サプライチェーン全域での情報共有化により、コンクリートの使用材料から製造、運搬、打込み、品質までを含めたデータのクラウド化が進められています。これにより、在庫削減、ジャストインタイム納入の実現、待ち時間などのロスを減少させ、建設生産プロセス全体の効率化が図られています。

 

国土交通省「コンクリート工における生産性向上」のページでは、i-Constructionの最新情報や技術資料が公開されています