高所作業用ヘルメット規格の基礎知識と選び方

高所作業用ヘルメット規格の基礎知識と選び方

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高所作業用ヘルメット規格の基礎

高所作業用ヘルメット規格の重要ポイント
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法的義務

2メートル以上の高所作業では墜落時保護用ヘルメットの着用が義務付けられています

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国家検定規格

厚生労働省の保護帽の規格に適合し「労・検」ラベルが貼付された製品を選択する必要があります

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使用区分

墜落時保護用・飛来落下物用・電気工事用の3つの使用区分があり、作業内容に応じた選択が重要です

高所作業用ヘルメットの法的根拠と義務

労働安全衛生規則第518条、519条、520条により、2メートル以上の高さで作業を行う場合、労働者は保護帽(ヘルメット)の着用が義務付けられています。この規則は使用者・労働者双方に適用され、違反した場合は法律違反となります。
特に高所作業においては、墜落時の頭部保護が最優先となるため、「墜落時保護用」の機能を有した保護帽を必ず着用することが求められています。単に作業用ヘルメットであれば何でも良いというわけではなく、用途に応じた適切な規格のヘルメットを選択する必要があります。

高所作業用ヘルメットの国家検定規格と試験基準

高所作業用ヘルメットは、昭和50年の労働省告示第66号で定められた保護帽の規格に基づいて製造されています。この規格では、材料や構造について詳細に規定されており、以下の試験をクリアした製品のみが市場に出荷されます:

  • 耐貫通性試験:鋭利な物体が帽体を貫通しないかを検証
  • 衝撃吸収性試験:落下物や墜落時の衝撃を適切に吸収するかを確認

墜落時保護用ヘルメットに関しては特に厳格な基準が設けられており、衝撃吸収性試験と耐貫通性試験の二つの試験に合格しなければ墜落時保護用として販売することはできません。国家検定に合格した製品には「労・検」のラベルが貼付されているため、購入時には必ずこのラベルの確認を行いましょう。
興味深い事実として、保護帽を被らずに質量5kgのストライカを1mの高さから落下させる実験を行った場合、頭にかかる衝撃は39kN~49kNという驚異的な数値になります。これは人体が耐えられる限界を大きく超える衝撃であり、適切な規格のヘルメットがいかに重要かを物語っています。

高所作業用ヘルメットの種類と使用区分の詳細

作業用ヘルメットは大きく分けて3つの使用区分があり、それぞれ異なる国家検定規格が適用されています:

使用区分 構造の特徴 主な使用目的
墜落時保護用 帽体・装着体・衝撃吸収ライナー・あごひも 墜落時の頭部保護
飛来・落下物用 帽体・装着体・あごひも 上部からの落下物から頭部を保護
電気工事用 帽体・装着体・あごひも(通気孔なし) 感電から頭部を保護

高所作業では墜落時保護用ヘルメットを選択することが適切です。このタイプのヘルメットには衝撃吸収ライナー(発泡スチロール)が装備されており、墜落時の衝撃を効果的に分散・吸収する設計となっています。
近年では、複数の使用区分を満たす多機能ヘルメットも開発されており、「飛来・落下物用、墜落時保護用、電気用」の3つの規格をすべて満たした製品も市場に登場しています。これらの製品は作業環境が多様な現場で重宝されています。

高所作業用ヘルメットの材質と安全機能の技術的特徴

現代の高所作業用ヘルメットには様々な材質が使用されており、それぞれ異なる特性を持っています:

  • ABS樹脂:軽量で耐衝撃性に優れ、一般的な高所作業に最適
  • ポリカーボネート:透明性が高く、耐熱性・耐候性に優れている
  • 高強度ポリエステル:化学薬品に対する耐性が高い
  • ポリエチレン:軽量で電気絶縁性に優れている

最新の高所作業用ヘルメットには、従来にはなかった革新的な機能が搭載されています。例えば、「フリップ&フィット」システムにより、ヘッドバンドを素早く頭部の適切な位置にセットできる機能や、作業環境に応じてあごひもの強度を変更できるデュアルストレングス機能などが挙げられます。
特に注目すべきは、通気性の改善です。最新モデルでは従来品と比較して約2.4倍の面積で空気を取り入れ、蒸れた空気を素早く排出する設計となっており、長時間の高所作業でも快適性を保持できます。

高所作業用ヘルメットの適切な選定基準と維持管理

高所作業用ヘルメットを選定する際は、以下の基準を満たすことが重要です。
選定時の必須チェック項目

  • 国家検定合格品である「労・検」ラベルの確認
  • 墜落時保護用の使用区分表示
  • 作業環境に適した材質の選択
  • 頭囲に合ったサイズ調整機能の有無
  • 必要に応じたアクセサリー取付機能

ヘルメットの維持管理については、製品ごとに使用期限が設定されており、一般的にABS樹脂製は3年、ポリカーボネート製は5年が目安となっています。ただし、これらは適切な保管状況での目安であり、直射日光や高温環境での使用が多い場合はより短期間での交換が推奨されます。
意外と知られていない事実として、ヘルメットの衝撃吸収ライナーは一度大きな衝撃を受けると性能が低下するため、墜落や落下物の直撃を受けた場合は、外見上の損傷がなくても交換する必要があります。これは安全性を確保するうえで極めて重要なポイントです。

 

また、現場での実践的な運用では、脱げ防止機構を備えたヘルメットの選択も重要です。前後からの衝撃によるヘルメットの脱げ・ズレを防ぐこの機能により、緊急時でも確実に頭部を保護することができます。雨天時の屋外作業では、レインガード(雨垂れ防止溝)付きのモデルを選択することで、作業効率と安全性の両方を向上させることが可能です。