

交通量の多い少ないを判断する基準は、道路構造令によって明確に定められています。道路の種類や地形に応じて、1車線あたりの設計基準交通量が設定されており、第3種第1級の道路では平地部で11,000台/日、第2級では平地部9,000台/日・山地部7,000台/日という基準があります。
参考)https://www.mlit.go.jp/road/sign/pdf/kouzourei_3.pdf
具体的な判断では、計画交通量がこれらの設計基準交通量を超えるかどうかで車線数が決定されます。例えば20,000台/日以上の交通量がある道路は一般的に4車線以上が必要とされ、「交通量の多い道路」として分類されます。
参考)https://www.pref.toyama.jp/documents/5409/01115908.pdf
一方、「交通量の少ない道路」は、500〜1,500台/日程度の交通量が目安となり、第3種第4級に分類されます。さらに交通量が少ない場合は、待避所で対向車とすれ違える1車線道路(第3種第5級)に該当します。
参考)https://sites.google.com/view/senmitsu/%E4%BA%A4%E9%80%9A%E7%B3%BB/3-1-%E9%81%93%E8%B7%AF%E6%A7%8B%E9%80%A0%E4%BB%A4%E3%81%AB%E3%82%88%E3%82%8B%E9%81%93%E8%B7%AF%E5%8C%BA%E5%88%86
不動産業界では、この基準値を理解することで、物件周辺道路の整備状況や将来的な拡張計画の可能性を予測することができます。道路の改善計画が発表された地域では、交通の利便性向上により不動産需要が高まる傾向があります。
参考)https://chiou.jp/dourochousa/
道路の混雑状況を数値化した「混雑度」は、実測交通量と設計交通容量の比率で算出されます。混雑度1.0が設計通りの交通量で利用されている状態を示し、この数値が道路の混み具合を評価する重要な指標となります。
参考)https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B7%B7%E9%9B%91%E5%BA%A6
混雑度による道路状況の目安は以下のように区分されます。
🚦 混雑度1.0未満:道路が混雑することなく円滑に走行できる状態
🚦 混雑度1.0〜1.25:1〜2時間の混雑時間帯があるが、連続混雑の可能性は低い
🚦 混雑度1.25〜1.75:ピーク時を中心に混雑時間帯が急増する過渡状態
🚦 混雑度1.75以上:慢性的な混雑状態で昼間12時間の約50〜70%が混雑
不動産取引において、混雑度は物件周辺の交通環境を客観的に説明する際の有効なデータとなります。特に住宅物件では、混雑度1.75以上の道路に面している場合、騒音や排気ガスの影響が大きく、評価額に影響を与える可能性があります。
参考)https://f-mikata.jp/rosette-502/
ただし、混雑度は昼間12時間の平均値であるため、時間帯による変動を表せない欠点があります。朝夕のピーク時だけ渋滞する道路と、終日混雑している道路では、実際の住環境への影響が異なるため、現地確認が重要です。
参考)https://safie.jp/article/post_19692/
交通量調査は、道路計画や都市計画の基礎データとして実施される重要な調査です。国土交通省が主体となって5年に一度実施する「道路交通センサス」が、全国の交通量データの基盤となっています。
参考)https://www.onkyo.net/ototorukun-column/20250919
調査方法には、人力による観測と機械による測定の2種類があります。人力調査では、調査員がカウンターを使って車種別(乗用車・バス・普通貨物車・小型貨物車)に計測し、断面交通量調査では自動車5分類と歩行者を2方向ずつ、交差点交通量調査では自動車12方向、歩行者8方向を計測します。
参考)https://www.zenrin-datacom.net/solution/blog/traffic-survey
機械調査ではトラフィックカウンターという専用測定器を道路上に設置し、赤外線センサーやチューブ式カウンターで24時間の長期間観測を行います。人件費を抑えられる利点がありますが、詳細な車種分類や交差点の複雑な動きの捉えにくさが課題です。
不動産調査では、物件周辺道路の交通量を把握する際、これらの公的データを活用できます。自動車交通量4,000台/日以上、自転車500台/日以上、歩行者500人/日以上が「交通量が多い」道路の目安とされています。この基準を超える道路に面した物件では、騒音対策や振動対策の必要性を考慮した評価が求められます。
参考)https://www.maff.go.jp/j/council/seisaku/nousin/seibibukai/gijutu_syoiinkai/R502/attach/pdf/siryou-24.pdf
国土交通省:道路交通センサスの調査概要と交通容量の基準値について詳細に解説されています
道路の交通量は、不動産価値に直接的な影響を与える重要な要素です。交通量の多い幹線道路に面した物件は、アクセス性や利便性が高い反面、騒音・振動・排気ガスなどのマイナス要因も抱えています。
参考)https://fuji-sogo.com/sozoku_knowledge/main_road/
海外の研究事例では、交通量の多い地点からの距離が住宅価格にプラスの影響を与え、逆に交通量の増加は価格にマイナスの影響を与えることが実証されています。日本国内でも、交通量の激しい幹線道路に面した宅地は、相続税評価において減額評価の対象となるケースがあります。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6950656/
不動産評価における具体的な影響は以下の通りです。
✅ 交通量8,000台/日未満の生活道路:静かな住環境で住宅需要が高い
⚠️ 交通量10,000〜20,000台/日の準幹線道路:利便性と住環境のバランスが重要
❌ 交通量20,000台/日以上の幹線道路:騒音・振動問題で住宅価値が低下傾向
道路の整備計画や拡張計画も不動産市場に大きな影響を与えます。新しい高速道路や交差点の整備により交通の円滑化が実現されると、不動産へのアクセスが向上し、地域の需要や価値が高まる傾向があります。公共交通機関の整備や交通信号の改善によって通勤時間が短縮されることも、物件の魅力を高める要因となります。
環境省:道路騒音の評価マニュアルで交通量と騒音レベルの関係が詳しく説明されています
交通量データを不動産実務に効果的に活用するためには、複数の視点からの分析が必要です。国土交通省が提供する「道路データビューア」を利用することで、物件周辺道路の混雑状況や交通騒音の具体的なデータを入手できます。
実務での活用場面としては、以下のような状況が考えられます。
📋 物件調査時:周辺道路の交通量データを確認し、騒音・振動リスクを事前評価
📋 顧客説明時:混雑度などの客観的データで交通環境を具体的に説明
📋 価格査定時:交通量による影響を評価額に反映させる根拠として活用
意外な知見として、程よい街の喧騒は住戸内の生活音をかき消す効果もあるという指摘があります。完全な静寂よりも、適度な環境音がある方が快適に感じる居住者も存在するため、一概に交通量の多さがマイナスとは限りません。
参考)https://www.dr-asset.jp/blog/%E3%81%86%E3%82%8B%E3%81%95%E3%81%84%EF%BC%9F%E5%AE%9F%E3%81%AF%E3%83%A1%E3%83%AA%E3%83%83%E3%83%88%E3%82%82%E3%81%84%E3%81%A3%E3%81%B1%E3%81%84%EF%BC%81%E5%B9%B9%E7%B7%9A%E9%81%93%E8%B7%AF%E6%B2%BF/
道路の幅員も重要な要素で、8メートル道路は場所によって評価が分かれます。住宅街の中で車が通らない8メートル道路は人気がありますが、多くの場合は「交通量の多い8メートル道路」として、騒音問題が懸念されます。
参考)https://saifudousan.co.jp/%EF%BC%95%EF%BC%94%E3%80%81%E9%81%93%E8%B7%AF%E3%81%AE%E5%B9%85%E5%93%A1%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6%EF%BC%88%E7%8B%AD%E3%81%84%E9%81%93%E3%80%81%E5%BA%83%E3%81%84%E9%81%93%E3%80%81%E4%BE%A1/
前面道路の広さは地域全体の利便性にも影響を与え、幅の広い道路は交通量を効率よく捌くことができるため、周囲の道路網にも好影響をもたらします。このような複合的な視点で交通量データを分析することが、適切な不動産評価につながります。
参考)https://nikkohkanzai.jp/2020/07/17/blog1/
国土交通省国土技術政策総合研究所:設計時間交通量の算出方法と基準値の詳細データが参照できます