
道路構造令では、車線を持たない1車線道路(第3種第5級・第4種第4級)の車道幅員を4mと定めています。この基準は、乗用車相互のすれ違いや消防活動を考慮して設定された最小限の幅員です。ただし、計画交通量が極めて少なく、地形の状況その他の特別な理由によりやむを得ない場合には3mまで縮小することができます。
参考)道路構造令 - Wikipedia
道路構造令は昭和33年(1958年)に道路法第30条に基づく政令として公布され、昭和45年(1970年)には規格の体系化、車線主義の採用、建築限界の拡大等を盛り込んだ全面改正が行われました。この改正により、交通量に応じた車線数の規定が導入され、現在の道路構造の技術的基準の基礎が確立されました。
参考)https://www.mlit.go.jp/road/sign/pdf/kouzourei_2.pdf
建築基準法では、接道義務を満たすために必要な道路幅員を「幅員4メートル以上」と規定しています。建築基準法第43条では、建築物の敷地は4m以上の幅の道路に2m以上接することが定められており、これは災害時の避難や緊急車両の乗り入れを確保するための基準です。
参考)建築基準法の道路幅員の4m。なぜ4mなの?
建築基準法の道路幅員と道路法の道路幅員は異なる概念です。道路法では、道路構造令に基づいて道路の種類や交通量に応じて幅員が設定され、車道、歩道、路肩、植樹帯などを含む全体の幅を指します。一方、建築基準法では側溝の外側を道路境界とみなして幅員を測定するのが一般的で、前面道路の幅員が4m未満の場合は「セットバック」が適用されます。
参考)道路幅との関係 接道義務とは|建築ルール|住まいの知識|家サ…
国土交通省:道路構造令の各規定の解説
道路構造令の詳細な規定と解説が掲載されており、幅員基準の技術的根拠を確認できます。
道路幅員4mの設定には、緊急車両の通行確保という重要な目的があります。消防ポンプ車の幅は約2m、はしご車の幅は約2.5m、救急車の幅は約1.9mあるため、4m道路では対向車とのすれ違いや路上駐車がある場合に通行が困難になる可能性があります。
参考)4m道路だと後悔する?前面道路の幅が4mの後悔から解放される…
実際には、幅員4m未満の狭い道路(建築基準法42条2項に規定する道路)に接して建物を建築する場合、道路の中心線から2m後退して建物や塀を建てなければなりません。これはセットバックと呼ばれ、災害時に消防車や救急車などの緊急車両が通行できるようにすることが目的の一つです。
参考)【幅員4m未満の道路】緊急車両の通行
一部の区域では自治体により道路の幅が6mなければならないと定められており、これは路上駐車があっても緊急車両がスムーズに通行し、消防・救急活動を行えるように配慮されたものです。
参考)建築基準法における6つの道路種別を分かりやすく解説
道路構造令では、車道の幅員を車両の物理的幅を必要条件、走行速度に対する余裕幅を十分条件として定めています。普通自動車の幅を2.5mとし、すれ違いに必要な余裕幅25cmを加算して、車線の最小幅を2.75mと定めており、第3種第4級・第4種第3級の道路がこの値を確保します。
参考)【道路構造令早見表】href="https://haiana1989.com/archives/2226" target="_blank">https://haiana1989.com/archives/2226lt;brhref="https://haiana1989.com/archives/2226" target="_blank">https://haiana1989.com/archives/2226gt;車線幅員│道路技術者支援ブロク
設計速度が高い道路では、大型車の混入割合によって異なりますが、すれ違いや追い越しを安全に行うために十分な余裕幅がさらに必要になります。走行速度80km/hを超えるような高速走行の道路では、車道幅員を7m以上(3.5m×2)としています。
参考)https://www.zurich.co.jp/carlife/cc-whatis-roadway-outsideline/
車線数の決定方法
車線数は、道路構造令第5条2項・3項の規定により、道路の区分、地形、設計基準交通量と日単位の計画交通量によって決まります。例えば、第四種第一級では計画交通量が12,000台/日以上で車線数が4以上、第三種第三級の平地部では8,000台/日以上で車線数が2となります。
道路の区分(○種○級)、車線数、歩道等の幅員から必要とする横断面構成要素を決定し、各要素の必要幅員を設定して横断面構成を決定します。
参考)https://www.pref.aichi.jp/uploaded/attachment/561456.pdf
建築基準法における4m基準は、昭和13年(1938年)の市街地建築物法の改正時に設定されました。当初は大正9年(1920年)の市街地建築物法施行時に「道路は9尺(約2.7m)」でしたが、昭和13年の改正で4mに変更されたのです。現在の建築基準法は昭和25年(1950年)に施行され、市街地建築物法を引き継ぎました。
道路構造令については、戦前の(旧)道路構造令が大正8年(1919年)12月に内務省令として制定され、当時は「道路構造令」と「街路構造令」の二本立てでした。大正15年(1926年)には「道路構造に関する細則」が定められ、昭和10年(1935年)に「道路構造に関する細則」として改められました。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/jscejipm/67/3/67_3_203/_pdf
戦後は昭和33年(1958年)に新しい道路構造令が制定され、交通量に応じた車道の幅員を規定するなど、道路に関する一般的技術基準が明確化されました。昭和45年(1970年)の全面改定では、構造令の適用範囲を道路法上の道路全てに拡大し、交通量に応じた車線数の規定、設計車両の高さ変更(3.5m→3.8m)、設計速度の引き上げ(80km/h→120km/h)などが行われました。
設計速度は曲率半径・幅員・視距に直接関係する値であり、道路の区分によって決められています。道路構造令では設計速度が30km/h以上の道路については10または20km/h減じた値まで縮小することができます。
参考)千三つさんが教える土木工学 - 3.2 設計速度・設計区間・…
車線幅員は道路の種類と設計速度により異なります。第一種第一級の普通道路では3.5m、第三種第四級では2.75mが標準です。小型道路の場合、第一種第一級で3m、第二級以降では2.75mとなります。
参考)https://www.pref.toyama.jp/documents/5409/01115908.pdf
設計速度別の最小曲線半径
設計速度 | 曲線半径 |
---|---|
120km/h | 710m(望ましい値1,000m) |
100km/h | 460m(望ましい値700m) |
80km/h | 280m(望ましい値400m) |
60km/h | 150m(望ましい値200m) |
40km/h | 60m(望ましい値100m) |
30km/h | 30m(望ましい値65m) |
参考)【道路構造令早見表】href="https://haiana1989.com/archives/2284" target="_blank">https://haiana1989.com/archives/2284lt;brhref="https://haiana1989.com/archives/2284" target="_blank">https://haiana1989.com/archives/2284gt;曲線│道路技術者支援ブロク
設計速度に応じて最小曲線長も規定されており、例えば設計速度120km/hでは1,400/θ(最小200m)、60km/hでは700/θ(最小100m)となります。
道路構造令第8条では路肩の構造について定めており、車道の左側に設ける路肩の幅員は道路の種類に応じて規定されています。路肩は全路肩(2.50~2.35m)、半路肩(1.25~1.75m)、狭路肩(0.50~0.75m)に分類され、車両の停車可能性や側方余裕によって区分されます。
参考)路肩 - Wikipedia
第三種第一級の普通道路(