港湾施設の種類と分類を徹底解説

港湾施設の種類と分類を徹底解説

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港湾施設の種類と分類

港湾施設の主要カテゴリ
水域・外郭施設

航路、泊地などの水域施設と、防波堤、護岸などの外郭施設が港湾の基本構造を形成

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係留・交通施設

岸壁、物揚場などの係留施設と臨港道路などの交通施設が物流機能を支える

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荷役・保管施設

荷さばき施設、倉庫、野積場などが貨物の取扱いと保管を担当

港湾法第2条第5項に基づき、港湾施設は港湾区域及び臨港地区内における固定施設と、港湾の利用・管理に必要な可動施設の両方を含みます。これらの施設は全体で14のカテゴリに分類され、それぞれが港湾の機能を維持するために重要な役割を果たしています。
参考)https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B8%AF%E6%B9%BE%E6%96%BD%E8%A8%AD

港湾施設における水域施設の構成要素

 

水域施設は船舶が安全に航行し停泊するための基盤となる施設で、航路、泊地、船だまりの3つで構成されます。航路は船舶が港に出入りするための水路であり、船の大きさに応じて必要な水深と幅が設定されています。泊地は船舶が停泊するための水域で、荷役作業や待機のために使用されます。船だまりは小型船舶が係留するための限定的な水域です。
参考)https://chansato.com/doboku/harbor-facilities/

これらの水域施設は定期的な浚渫工事によって維持管理されています。港湾では河川からの土砂流入や潮流によって水深が浅くなるため、船舶の安全確保のために海底の土砂を取り去る浚渫作業が不可欠です。名古屋港では年間30万㎥の土砂が流入しており、コンテナ船や自動車運搬船の大型化に対応するため、継続的な浚渫が実施されています。
参考)https://kitaqport.jp/jap/ct/shunsetsu.html

港湾施設における外郭施設の種類と構造

外郭施設は波浪や津波から港湾を防護する施設で、防波堤、防砂堤、防潮堤、導流堤、水門、閘門、護岸、堤防、突堤、胸壁が含まれます。これらの施設は港湾内の静穏を保ち、係留施設や陸域を保護する重要な役割を担っています。
参考)https://www.soumu.go.jp/main_content/000144853.pdf

防波堤の構造は基本的に4つのタイプに分類されます。傾斜堤は石や消波ブロックを積み上げて建設する最も歴史的な形式です。直立堤はコンクリートブロックやケーソンを使い、海底から海面上まで垂直に構築します。混成堤は傾斜堤を基礎にその上部に直立堤を設置した構造で、現在の日本における主流となっています。消波ブロック被覆堤は直立堤や混成堤の外洋側を消波ブロックで被覆し、越波や反射波を低減する機能を持つ日本独自の優れた構造です。
参考)https://www.umeshunkyo.or.jp/marinevoice21/promenade/219/index.html

ケーソン式混成堤は安定性の高さから日本の防波堤の主流となっており、1960年代以降全国の港湾で多く建設されてきました。近年では上部パイラー式防波堤など、より経済的で機能性の高い特殊防波堤も開発されています。
参考)https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%98%B2%E6%B3%A2%E5%A0%A4

港湾施設における係留施設の岸壁と物揚場の違い

係留施設は船舶が離着岸し、貨客の積降しや乗降を行うための施設で、岸壁、係船浮標、係船くい、桟橋、浮桟橋、物揚場、船揚場があります。これらの中で最も重要なのが岸壁と物揚場です。
参考)https://www.umeshunkyo.or.jp/marinevoice21/promenade/220/index.html

岸壁と物揚場は実は同じ係留施設で構造も同一ですが、前面の水深によって呼び方が異なります。港湾施設では水深4.5m以上を岸壁、4.5m未満を物揚場と区分しています。一方、漁港施設では水深3.0m以上を岸壁、3.0m未満を物揚場と呼びます。この区分は船舶の大きさと必要な水深に基づいており、岸壁は大型船舶、物揚場は小型船舶の係留に使用されます。
参考)https://hayakomablog.com/quays/

係留施設の構造には重力式、矢板式、桟橋式などがあり、水深や地盤条件に応じて適切な形式が選択されます。水深7.5m以上の係留施設や危険物積載船・旅客船を係留するための係留施設は、港湾法により技術基準への適合性確認が義務付けられています。
参考)https://www.cdit.or.jp/tekigou/

港湾施設における臨港交通施設と荷役機能

臨港交通施設は港湾と背後地を結ぶ物流ネットワークを形成する施設で、臨港道路、臨港鉄道、運河、駐車場などが含まれます。これらの施設は貨物の効率的な輸送を実現し、港湾の物流機能を支える基盤となっています。​
荷さばき施設は荷さばき地、荷役機械、上屋で構成され、貨物の積み卸し作業を行う場所です。コンテナターミナルではガントリークレーン、トランスファークレーン、ストラドルキャリアなどの専門的な荷役機械が配置され、コンテナの迅速な取扱いを可能にしています。
参考)https://www.jisf.or.jp/info/event/dobokushinpo/documents/1_dobokushinpo23.pdf

保管施設には倉庫、野積場、貯木場、貯炭場、危険物置場、貯油施設があり、貨物の一時保管機能を提供します。これらの施設は貨物の種類や性質に応じて適切に配置され、港湾の総合的な物流機能を完成させています。​

港湾施設の維持管理における独自の課題と対策

港湾施設の維持管理は予防保全型のアプローチが重視されており、施設の長寿命化とライフサイクルコストの最小化が目指されています。港湾管理者は日々の点検によって各施設の老朽化状況や利用状況を把握し、修繕・更新を予防的かつ効率的に行うことで管理コストの平準化を図っています。
参考)https://www.pasco.co.jp/biz/service/kouwan/

港湾施設の維持管理における独自の課題として、海洋環境による腐食・劣化の進行があります。塩分や波浪の影響を常に受ける港湾施設は、陸上施設に比べて劣化速度が速く、定期的な点検と適切な補修が不可欠です。コンテナクレーンなどの荷役機械では、定期点検や日常点検とともに小修繕を合わせたフルメンテナンス管理が導入され、質の高いサービス提供と維持管理コスト縮減の両立が図られています。
参考)https://www.tptc.co.jp/guide/maintenance

さらに、浚渫土砂の処分場確保も重要な課題です。長年の浚渫により既存の処分場の残余容量が減少しているため、新たな土砂処分場の整備が進められています。一方で、浚渫土砂を埋立地造成や漁場環境改善に有効利用する取り組みも行われており、循環型の港湾管理が推進されています。
参考)https://www.pa.cbr.mlit.go.jp/24095/index.html

港湾施設の技術基準は港湾法第56条の2の2に基づき規定され、施設を建設・改良・維持する際に適用されます。平成19年には性能規定化が実施され、より柔軟で合理的な設計が可能になりました。技術基準対象施設については、国土交通省の登録確認審査所による適合性確認が義務付けられており、施設の安全性が厳格に管理されています。
参考)https://www.kanchi.or.jp/gyoumu/gyoumu4_1.php

参考リンク:港湾施設の技術基準に関する詳細情報
国土交通省 港湾の施設の技術上の基準について
参考リンク:港湾施設の維持管理計画策定に関するガイドライン
国土交通省 港湾施設の維持管理