構造用合板と建築における壁倍率と釘ピッチの重要性

構造用合板と建築における壁倍率と釘ピッチの重要性

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構造用合板と建築の基礎知識と活用方法

構造用合板の基本情報
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耐震性向上

木造住宅の構造耐力上主要な部分に使用され、耐震性・耐風性を高める

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JAS規格準拠

日本農林規格で厳密に定められた品質基準を満たす建材

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施工の重要性

正確な釘ピッチと適切な壁体構成が性能発揮のカギ

構造用合板の定義とJAS規格による種類分類

構造用合板とは、建築物の構造耐力上主要な部分に使用することを目的として製造された合板です。丸太をカツラ剝きにした薄い単板を、繊維方向が直交するように接着剤で貼り合わせて作られています。一般的には5枚(5プライ9mm厚)や7枚(7プライ15mm厚)のように複数枚を重ねることで、寸法変形を最小限に抑えつつ強度を増す工夫がなされています。

 

JAS規格日本農林規格)では、構造用合板を以下のように分類しています。

  1. 接着剤の種類による分類
  2. 品質による分類
    • 1級:高度な性能が求められる用途向け
    • 2級:標準的な性能の用途向け
  3. 板面品質による分類
    • アルファベット2文字(A~D)の記号で表板・裏板の品質を表示

さらに、健康安全性の観点から「低ホルムアルデヒド合板」の規格も設けられており、F☆☆☆☆からF☆までの4段階(星が多いほど放散量が少ない)で分類されています。これはシックハウス対策として建築基準法改正により制定されたものです。

 

構造用合板の壁倍率と耐震性能への影響

木造住宅の耐震設計において、構造用合板は非常に重要な役割を果たしています。壁倍率とは、15mm×90mm断面の片筋交い壁を1としたときの壁の強さを相対的に表したもので、この数値が高いほど耐震性能が高いことを意味します。

 

平成30年の国土交通省告示では、構造用合板の壁倍率に関して、より高倍率な仕様が追加されました。

  • 従来:5mm厚以上の構造用合板の片側施工で壁倍率2.5倍
  • 改正後:9mm厚以上の構造用合板を大壁仕様で、N50釘からCN釘に変え、釘ピッチを150mm間隔から75mmに縮めることで、片側施工でも壁倍率3.7倍が可能に

この改正により、耐震壁の設計の自由度が増し、耐震等級3の設計性能を実現することがより容易になりました。枠組壁工法においても同様に、CN50やCN65の釘ピッチを縮めることで、壁倍率を最大4.8倍(12mm厚以上の場合)まで高めることが可能になっています。

 

構造用合板を使用することで、筋交いによらずに壁内に剛性を作り出せるため、外壁に断熱材を充填しやすくなるというメリットもあります。これにより、耐震性と断熱性を両立させた住宅設計が可能になります。

 

構造用合板の施工における釘ピッチの重要性と注意点

構造用合板の性能を最大限に発揮させるためには、適切な釘打ちが極めて重要です。特に釘のピッチ(間隔)は、合板の耐力に直接影響する要素となります。

 

SE構法(SE工法)などの構造計算を行う木造工法では、合板の場所によって釘のピッチが異なるように指示されています。これは場所により耐力壁の役割が異なるためです。注意すべきポイントとして。

  • 必要以上に構造用合板を張ることは適切ではない
  • 指示されたピッチより細かすぎても問題がある(多ければ良いというわけではない)
  • 専用合板にはピッチの印がついているので、それを目安に構造図を確認する
  • 壁用・床用の釘は色分けされており、合板の印の色と合わせて使用する

床の施工においても、28mm厚の構造用合板を使用することで根太が不要になり、すっきりとした構造にできますが、この場合も床合板の釘ピッチが重要になります。上棟時に床の釘ピッチをチェックすることが最も効果的です。

 

施工ミスを防ぐためには、構造図をしっかり確認し、指定された釘と正確なピッチで施工することが不可欠です。これにより、設計どおりの耐震性能を確保することができます。

 

構造用合板のサイズ選定と用途別の厚み基準

構造用合板は様々なサイズと厚みがあり、用途に応じて適切なものを選定することが重要です。主なサイズと用途は以下の通りです。
幅のバリエーション

  • 900mm、910mm、1000mm:住宅モジュールに合わせたサイズ
  • 955mm、1220mm:端部用などの特殊サイズ

長さのバリエーション

  • 1800mm~2730mm:一般的に流通している長さ

厚みと主な用途

  • 9mm:屋根下地、壁下地、床下地(根太仕様)
  • 12mm:屋根下地、壁下地、床下地(根太仕様)
  • 15mm:屋根下地、壁下地、床下地(根太仕様)
  • 18mm:屋根下地、壁下地、床下地(根太仕様)
  • 24mm、28mm:根太省略仕様の床

一枚の単板(プライ)の厚みは通常2.0mm~4.0mmで、製品の厚みや性能に応じて3~9層を重ねて構成されています。最近では「Jパネル」という大臣認定の構造用面材も登場しており、厚み12mmの国産針葉樹を3層重ねした36mm厚の製品も使用されています。

 

適切なサイズと厚みの選定は、建築物の構造性能だけでなく、コストや施工性にも大きく影響します。特に床材としての使用では、根太の有無によって必要な厚みが変わってくるため、設計段階での十分な検討が必要です。

 

構造用合板と結露対策の関係性と透湿抵抗値の比較

構造用合板は他の壁材に比べて透湿抵抗が高いため、壁体内で結露が発生しやすいのではないかという懸念があります。特に常時湿潤状態でも性能を維持する接着剤で製造されているため、透湿性能は高くありません。

 

結露対策として重要なのは、まず壁内に湿気を入れないことです。適切な壁体構成と気密施工が基本となります。理想的な壁構成は以下の通りです。
室内側から外側への壁構成

  1. 室内側面材
  2. 防湿シート
  3. 断熱材(できれば防湿紙にくるまれた断熱材の耳を室内側に貼る)
  4. 構造用合板
  5. 透湿防水シート(湿気は抜きつつ外部からの水の侵入を防ぐ)
  6. 通気層(外気圧の調節)
  7. 外装材

この構成により、室内から湿気の侵入を防ぎ、断熱材が適切に機能することで、構造用合板に達した際には室内温度の影響が少なくなり、外部との温度差による結露を防ぐことができます。

 

また、構造用合板は外部から壁内への湿度侵入も防ぐ役割を果たします。ただし、施工精度や気密不足によって室内から湿気が入る可能性もあるため、家全体で壁体内に湿気や水が入り込む隙間がないよう注意する必要があります。

 

結露リスクを評価する際に重要な指標として、各材料の透湿抵抗値があります。主な建材の透湿抵抗値を比較すると。

  • ハイベストウッド:透湿抵抗値2.0
  • ダイライトMS:透湿抵抗値2.3
  • あんしん合板:透湿抵抗値8.0
  • 構造用合板:透湿抵抗値10.3
  • ノボパン:透湿抵抗値12.4

結露リスクを低減したい場合は、透湿抵抗の低いダイライトやハイベストウッドなどの材料を検討することも一つの選択肢です。ただし、壁体内結露計算を行い、適切な壁体構成を設計することが最も重要です。

 

構造用合板の環境配慮と国産材活用の最新動向

構造用合板の材料としては、従来は主に東南アジア産のラワン材が使用されてきましたが、熱帯雨林の枯渇問題への配慮から、管理された森林による針葉樹合板への移行が進んでいます。特に高度な性能が求められる1級の構造用合板では、この傾向が顕著です。

 

現在、針葉樹合板の主流はヨーロッパカラマツであるラーチ合板ですが、最近では国産の広葉樹や針葉樹を活用した構造用合板も製造されるようになってきました。これにより、輸送に伴うCO2排出量の削減や国内林業の活性化にもつながっています。

 

国産材を活用した構造用合板の利点は以下の通りです。

  • 輸送距離の短縮によるカーボンフットプリントの削減
  • 国内林業の持続可能な発展への貢献
  • 地域経済の活性化
  • 森林の適切な管理による国土保全

また、環境配慮の観点からは、前述のホルムアルデヒド放散量の少ないF☆☆☆☆等級の製品を選択することも重要です。シックハウス症候群対策として、建築基準法の改正によりホルムアルデヒドの放散量が面積で制限されるようになったことを受け、より安全な接着剤を使用した製品が主流となっています。

 

今後の展望としては、さらなる国産材の活用促進や、より環境負荷の少ない接着剤の開発、リサイクル可能な構造用合板の研究などが進められています。建築業界全体が持続可能性を重視する中、構造用合板もその流れに沿った進化を続けていくでしょう。

 

構造用合板は、比較的安価でありながら木造住宅にとって重要な建材であり続けています。熱帯雨林由来から管理された森林由来のものへ、さらには国産材の有効活用先として、その可能性はまだまだ広がっています。利用の際はメリット・デメリットを十分に理解し、適切に使用することが大切です。