
区分マンションの相続税評価額は、建物部分と土地部分を分けて計算します。建物部分は固定資産税評価額をベースとし、土地部分は路線価に敷地権割合を乗じて算出されます。
従来の計算方法では、マンションの相続税評価額は市場価格の約6割程度となるのが一般的でした。しかし、タワーマンションなどの高層物件では、相続税評価額が市場価格の3~4割程度まで下がるケースも少なくありませんでした。
建物部分の評価
土地部分の評価
この評価方法により、1億円の現金を区分マンションに投資した場合、相続税評価額は約4,200万円程度まで圧縮される効果が期待できました。
区分マンションを賃貸に出すことで、さらなる相続税の節税効果を得ることができます。賃貸中の区分マンションは、借家権割合30%が全国一律で適用されるため、自用の場合と比較して評価額が大幅に下がります。
賃貸マンションの評価計算
借地権割合は地域によって30%~90%の範囲で設定されており、都市部では高い割合が適用されることが多いです。例えば、借地権割合が70%の地域では、土地部分の評価額は自用の場合の79%まで下がります。
この仕組みを活用することで、現金1億円を賃貸用区分マンションに投資した場合、相続税評価額は約4,200万円となり、相続税は1,220万円から60万円まで大幅に節税できる計算になります。
賃貸マンション投資による相続対策の詳細な評価方法について
https://chester-tax.com/encyclopedia/15680.html
令和6年1月1日以降、区分マンションの相続税評価方法が大幅に改正されました。この改正により、「区分所有補正率」という新しい概念が導入され、マンションの相続税評価額が市場価格の6割程度となるよう調整されることになりました。
改正の背景
新しい計算方法
区分マンションの相続税評価額 = (建物評価額 × 区分所有補正率) + (土地評価額 × 区分所有補正率)
区分所有補正率は「評価水準」によって決定され、評価水準が高い(市場価格との乖離が大きい)物件ほど、補正率が高くなり、結果として相続税評価額が上昇します。
改正による影響例
東京・港区高輪のマンションの場合。
この改正により、特にタワーマンションや都心部の高額物件を利用した相続対策の効果は大幅に縮小されることになりました。
税制改正後も、区分マンション投資による相続対策は一定の効果を維持しています。ただし、従来ほどの大幅な節税効果は期待できなくなったため、より慎重な検討が必要です。
現在も有効な理由
注意すべきポイント
特に重要なのは、相続対策だけでなく、相続後の収益性も考慮した物件選びです。好立地で安定した賃料収入が見込める物件でなければ、相続人にとって「負動産」となってしまう可能性があります。
物件選びのポイント
区分マンションは相続時の分割がしやすいという特徴があります。複数の相続人がいる場合、戸数を分けることで比較的公平な分割が可能になります。
分割方法の選択肢
現物分割を行う場合は、各物件の価値を正確に評価することが重要です。同じマンション内でも階数や方角によって価値が異なるため、面積比ではなく価値比で分割することがポイントになります。
相続後の活用戦略
相続した区分マンションの管理・運用には専門知識が必要なため、不動産管理会社や税理士との連携が重要です。特に複数物件を相続した場合は、効率的な管理体制の構築が収益性向上の鍵となります。
区分マンション相続における分割方法の詳細解説
https://home4u-owners.jp/contents/tax_inheritance-54-10931
また、相続対策として区分マンションを購入する際は、相続人の意向も事前に確認しておくことが大切です。相続人が不動産経営に関心がない場合や、遠方に住んでいる場合は、売却しやすい立地の物件を選ぶなど、出口戦略も含めた総合的な判断が求められます。