区分マンション相続対策の評価方法と税制改正の影響

区分マンション相続対策の評価方法と税制改正の影響

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区分マンション相続対策

区分マンション相続対策の基本構造
🏢
評価額の圧縮効果

現金を区分マンションに変換することで相続税評価額を大幅に圧縮可能

📊
賃貸による更なる節税

借家権割合30%を適用し、さらに評価額を下げる仕組み

⚖️
税制改正の影響

令和6年から区分所有補正率導入により評価方法が変更

区分マンション相続税評価額の計算方法

区分マンションの相続税評価額は、建物部分と土地部分を分けて計算します。建物部分は固定資産税評価額をベースとし、土地部分は路線価に敷地権割合を乗じて算出されます。

 

従来の計算方法では、マンションの相続税評価額は市場価格の約6割程度となるのが一般的でした。しかし、タワーマンションなどの高層物件では、相続税評価額が市場価格の3~4割程度まで下がるケースも少なくありませんでした。

 

建物部分の評価

  • 固定資産税評価額 × 1.0
  • 新築時は建築費の約50~60%が目安

土地部分の評価

  • 路線価 × 敷地権割合 × 専有面積
  • 路線価は公示価格の約80%水準

この評価方法により、1億円の現金を区分マンションに投資した場合、相続税評価額は約4,200万円程度まで圧縮される効果が期待できました。

 

区分マンション賃貸による借家権割合の適用

区分マンションを賃貸に出すことで、さらなる相続税の節税効果を得ることができます。賃貸中の区分マンションは、借家権割合30%が全国一律で適用されるため、自用の場合と比較して評価額が大幅に下がります。

 

賃貸マンションの評価計算

  • 建物:自用評価額 × (1 - 借家権割合30%)
  • 土地:自用評価額 × (1 - 借地権割合 × 借家権割合30%)

借地権割合は地域によって30%~90%の範囲で設定されており、都市部では高い割合が適用されることが多いです。例えば、借地権割合が70%の地域では、土地部分の評価額は自用の場合の79%まで下がります。

 

この仕組みを活用することで、現金1億円を賃貸用区分マンションに投資した場合、相続税評価額は約4,200万円となり、相続税は1,220万円から60万円まで大幅に節税できる計算になります。

 

賃貸マンション投資による相続対策の詳細な評価方法について
https://chester-tax.com/encyclopedia/15680.html

区分マンション評価の税制改正と区分所有補正率

令和6年1月1日以降、区分マンションの相続税評価方法が大幅に改正されました。この改正により、「区分所有補正率」という新しい概念が導入され、マンションの相続税評価額が市場価格の6割程度となるよう調整されることになりました。

 

改正の背景

  • 相続税評価額と市場価格の過度な乖離(平成30年で2.34倍)
  • タワーマンションを利用した過度な節税対策への対応
  • 最高裁判所の司法判断(2022年6月)による影響

新しい計算方法
区分マンションの相続税評価額 = (建物評価額 × 区分所有補正率) + (土地評価額 × 区分所有補正率)
区分所有補正率は「評価水準」によって決定され、評価水準が高い(市場価格との乖離が大きい)物件ほど、補正率が高くなり、結果として相続税評価額が上昇します。

 

改正による影響例
東京・港区高輪のマンションの場合。

  • 従来の評価額:約2,300万円
  • 改正後の評価額:約4,200万円(1.8倍)
  • 相続税:約112万円 → 約350万円(238万円増)

この改正により、特にタワーマンションや都心部の高額物件を利用した相続対策の効果は大幅に縮小されることになりました。

 

区分マンション相続対策の現在の有効性と注意点

税制改正後も、区分マンション投資による相続対策は一定の効果を維持しています。ただし、従来ほどの大幅な節税効果は期待できなくなったため、より慎重な検討が必要です。

 

現在も有効な理由

  • 相続税評価額は依然として市場価格の6割程度
  • 賃貸による借家権割合30%の適用は継続
  • 小規模宅地等の特例との併用可能性

注意すべきポイント

  • 区分所有補正率による評価額の上昇
  • 立地や築年数による収益性の違い
  • 管理費・修繕積立金等のランニングコスト
  • 空室リスクや賃料下落リスク

特に重要なのは、相続対策だけでなく、相続後の収益性も考慮した物件選びです。好立地で安定した賃料収入が見込める物件でなければ、相続人にとって「負動産」となってしまう可能性があります。

 

物件選びのポイント

  • 駅徒歩10分以内の立地
  • 築年数20年以内の物件
  • 周辺相場と比較した適正な賃料設定
  • 管理会社の実績と信頼性

区分マンション相続時の分割方法と活用戦略

区分マンションは相続時の分割がしやすいという特徴があります。複数の相続人がいる場合、戸数を分けることで比較的公平な分割が可能になります。

 

分割方法の選択肢

  • 現物分割:各相続人が区分マンションを1戸ずつ相続
  • 換価分割:売却して現金化してから分割
  • 代償分割:1人が相続し、他の相続人に現金を支払う

現物分割を行う場合は、各物件の価値を正確に評価することが重要です。同じマンション内でも階数や方角によって価値が異なるため、面積比ではなく価値比で分割することがポイントになります。

 

相続後の活用戦略

  1. 賃貸経営の継続:既存入居者がいる場合に適している
  2. 自己居住への転用:ただしローン条件の変更が必要な場合あり
  3. 売却による現金化:分割しやすく、相続税納税資金の確保も可能

相続した区分マンションの管理・運用には専門知識が必要なため、不動産管理会社や税理士との連携が重要です。特に複数物件を相続した場合は、効率的な管理体制の構築が収益性向上の鍵となります。

 

区分マンション相続における分割方法の詳細解説
https://home4u-owners.jp/contents/tax_inheritance-54-10931
また、相続対策として区分マンションを購入する際は、相続人の意向も事前に確認しておくことが大切です。相続人が不動産経営に関心がない場合や、遠方に住んでいる場合は、売却しやすい立地の物件を選ぶなど、出口戦略も含めた総合的な判断が求められます。