相続税圧縮不動産活用法と評価額減額特例

相続税圧縮不動産活用法と評価額減額特例

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相続税圧縮不動産活用法

相続税圧縮のポイント
🏠
評価額の圧縮

不動産は時価と相続税評価額に差があり、現金から不動産へ資産組み換えで評価額を圧縮できます

📊
賃貸物件化

貸家建付地や貸家として評価され、借家権割合分の評価減が受けられます

⚖️
特例の活用

小規模宅地等の特例により最大80%の評価減が可能です

相続税評価額と時価の乖離による圧縮効果

不動産による相続税圧縮の根本的な仕組みは、時価と相続税評価額の乖離にあります。現金や預貯金、有価証券は時価100%で評価される一方、不動産は以下の特殊な評価方法が適用されます。
土地の評価方法 📍

  • 路線価方式:実勢価格の約80%で評価
  • 倍率方式:固定資産税評価額×倍率

建物の評価方法 🏢

  • 固定資産税評価額をそのまま使用
  • 新築時の建築費の約60%程度に相当

具体的な圧縮効果の例を見てみましょう。時価2億2000万円の収益物件(土地1億2000万円、建物1億円)を購入した場合。

項目 時価 相続税評価額 圧縮率
土地 1億2000万円 4100万円 約66%減
建物 1億円 4900万円 約51%減
合計 2億2000万円 9000万円 約59%減

この評価額の差額1億3000万円が、相続税の圧縮効果として働きます。

 

相続税対策における賃貸物件の評価減メカニズム

賃貸物件の取得は、単純な不動産購入以上の評価減効果をもたらします。これは借家権という概念が関係しているためです。

 

貸家建付地の評価額計算式 🏘️

貸家建付地の評価額 = 更地の評価額 × (1 - 借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合)

貸家の評価額計算式 🏠

貸家の評価額 = 建物の固定資産税評価額 × (1 - 借家権割合 × 賃貸割合)

ここで重要なのは以下の割合です。

  • 借地権割合:地域により30%~90%(一般的に70%前後)
  • 借家権割合:全国一律30%
  • 賃貸割合:実際の賃貸状況により決定

実際の計算例を示します。先ほどの物件が賃貸物件として運用されている場合。
土地(貸家建付地)の評価

  • 更地評価額:4100万円
  • 借地権割合:70%
  • 借家権割合:30%
  • 賃貸割合:100%

計算:4100万円 × (1 - 0.7 × 0.3 × 1.0) = 4100万円 × 0.79 = 3239万円
建物(貸家)の評価

  • 固定資産税評価額:4900万円
  • 借家権割合:30%
  • 賃貸割合:100%

計算:4900万円 × (1 - 0.3 × 1.0) = 4900万円 × 0.7 = 3430万円
合計評価額:6669万円(時価2億2000万円に対して約70%の圧縮効果)

相続税小規模宅地等の特例による評価減の活用

小規模宅地等の特例は、相続税圧縮において最も強力な武器の一つです。この特例により、最大80%の評価減が可能となります。

 

特例の種類と減額割合 ⚖️

宅地の種類 限度面積 減額割合 主な要件
特定居住用宅地等 330㎡ 80% 被相続人の自宅、同居親族が相続
特定事業用宅地等 400㎡ 80% 被相続人の事業用地、事業継続
貸付事業用宅地等 200㎡ 50% 賃貸事業用地、事業継続

実際の節税効果
評価額1億円の居住用宅地(330㎡以内)の場合。

  • 特例適用前:1億円
  • 特例適用後:2000万円(80%減額)
  • 節税効果:8000万円の評価減

ただし、2023年の税制改正により相続開始前3年以内に新たに貸付事業を開始した宅地については、原則として特例の適用が制限されています。この「3年ルール」は相続税対策の安易な駆け込み需要を防ぐためのものです。

 

特例適用のポイント 📝

  • 申告期限(相続開始から10か月)まで所有継続が必要
  • 居住用の場合は同居要件または家なき子特例の適用
  • 事業用の場合は事業継続要件
  • 複数の宅地がある場合は限度面積の調整計算

相続税マンション投資の圧縮効果と2026年改正対応

マンション投資、特にタワーマンションを活用した相続税圧縮は、これまで富裕層に人気の手法でした。しかし、2026年1月1日から適用される税制改正により、この手法には大きな変更が予定されています。

 

従来のマンション投資による圧縮効果
区分マンション(時価3500万円)の場合。

  • 土地部分:固定資産税評価額1400万円
  • 建物部分:固定資産税評価額1000万円
  • 合計評価額:2400万円
  • 圧縮効果:1100万円(約31%減)

さらに賃貸物件として運用する場合。

  • 土地(貸家建付地):1400万円 × 0.79 = 1106万円
  • 建物(貸家):1000万円 × 0.7 = 700万円
  • 合計評価額:1806万円(約48%減)

2026年改正の影響 ⚠️
新しい評価方法では、以下の基準が適用されます。

  • 評価乖離率1.67倍超の区分所有建物は市場価格の60%で評価
  • 評価額が市場価格を上回る場合は100%で評価

この改正により、従来の大幅な圧縮効果は制限されますが、適正な範囲内での評価減は引き続き可能です。

 

改正後の対策ポイント 🎯

  • 評価乖離率の事前チェック
  • 一般的な収益物件への投資シフト
  • 立地や収益性を重視した物件選定
  • 複数の圧縮手法の組み合わせ活用

相続税圧縮における不動産活用の税務否認リスクと対策

不動産を活用した相続税圧縮には、税務否認リスクが潜んでいます。特に以下のような行為は税務調査で問題となる可能性があります。

 

税務否認されやすいケース 🚨

  • 相続直前の駆け込み不動産購入
  • 明らかに時価を上回る価格での物件取得
  • 収益性を無視した立地の悪い物件購入
  • 短期間での売却予定が明らかな投資

具体的な否認事例
ある事例では、相続開始1か月前に5億円の現金でマンションを購入し、相続税評価額を2億円に圧縮しましたが、相続後すぐに売却したため「租税回避行為」として否認されました。

 

税務否認を回避する対策 🛡️

  • 事業性の確保:継続的な賃貸経営を前提とした投資
  • 適正価格での取得:不動産鑑定評価書の取得
  • 相当期間の保有:最低3年以上の保有計画
  • 収益性の重視:立地や利回りを考慮した物件選定
  • 専門家との連携:税理士、不動産鑑定士との事前相談

否認されにくい投資パターン

  • 相続開始3年以上前からの計画的投資
  • 地域の賃貸需要を考慮した立地選定
  • 適正な利回りを確保できる物件
  • 長期的な賃貸経営を前提とした設備投資

税務当局は「通常の経済人の行動」から逸脱した取引を厳しくチェックします。そのため、相続税圧縮を目的とする場合でも、実質的な不動産投資として成立する内容であることが重要です。

 

また、生前贈与と組み合わせた対策も有効です。小規模宅地等の特例と併用することで、より効果的な相続税圧縮が可能になります。

 

まとめ 📋
不動産を活用した相続税圧縮は、適切に行えば大きな節税効果が期待できます。ただし、税制改正や税務否認リスクを十分に理解し、専門家のアドバイスを受けながら長期的な視点で取り組むことが成功の鍵となります。

 

相続税評価額の専門的な計算方法や最新の税制改正情報について
国税庁:相続税の計算
小規模宅地等の特例の詳細な適用要件について
国税庁:小規模宅地等の特例