
マイクロプレートの規格は、主にANSI/SLAS(American National Standards Institute/Society for Laboratory Automation and Screening)規格によって国際的に標準化されています。この規格により、自動実験室機器での使用を考慮して、フットプリント寸法やプレートの高さ、フランジ寸法、面取り、側壁の剛性、ウェル位置などについて詳細な標準化が行われています。
標準的なマイクロプレートの外寸は、縦85.48mm(3.365inch)、横127.76mm(5.029inch)となっており、これは業界で広く採用されている基本寸法です。さらに詳細には、W127.7~127.8mm×D85.3~85.4mm×H14.7mmという寸法が一般的に使用されています。
ANSI/SLAS規格では、特に自動化機器との互換性を重視し、各メーカーの装置間でプレートの交換性を確保しています。これにより、異なるメーカーの機器間でも同一のマイクロプレートを使用することが可能となり、実験の効率化と標準化が実現されています。
一方で、ウェルの数や形状をはじめとするいくつかの項目については規格化されておらず、さまざまな仕様のマイクロプレートが使用されているのが現状です。
マイクロプレートのウェル数は実験の種類や必要なサンプル量によって選択され、主に96、384、1536、3456ウェルなどの規格が存在します。ウェル数が多くなるほど個々のウェルサイズは小さくなり、使用するサンプルの推奨容量も異なってきます。
ウェル数による推奨容量の詳細
96ウェルプレートは最も一般的な規格で、1ウェルあたりの容量が400μLと大きく、細胞培養や一般的なアッセイに幅広く使用されています。384ウェルプレートはハイスループットスクリーニングに適しており、少量サンプルでの効率的な実験が可能です。
さらに高密度な1536ウェルや3456ウェルは、創薬研究における大規模スクリーニングで威力を発揮し、極微量サンプルでの実験を実現しています。これらの選択により、実験コストの削減と効率の向上が期待できます。
マイクロプレートのウェル形状には平底(フラットボトム)、丸底(ラウンドボトム)、V字底などがあり、それぞれ異なる実験目的に最適化されています。平底は顕微鏡観察や細胞培養に適しており、均一な細胞の分布と観察の容易さを提供します。
底面高の設計も重要な規格要素で、一般的には1~5mmの高さが確保されていますが、Low-Baseデザインでは1mm以下に設計されたものもあります。このLow-Baseデザインは、顕微鏡による下からの観察を容易にし、特にイメージング用途で重要な特徴となっています。
材質による規格の違いも考慮すべき要素で、ポリスチレン製が一般的ですが、ガラス製マイクロプレートも特定の用途で使用されています。ガラス製の場合、本体寸法127.5×85×H13.5mm、底板厚み2mm、ウェル外径φ8mmという規格が採用されており、化学的安定性が要求される実験に適用されます。
さらに、シクロオレフィンポリマー製のプレートも登場しており、ガラスに近い透明性を持ち、イメージング用途で優れた性能を発揮します。
マイクロプレートの色は実験の測定方法に直結する重要な規格要素で、主にクリア、白、黒、および複合型(白クリアボトム、黒クリアボトム)があります。それぞれの色には明確な使用目的があり、適切な選択により実験の精度が大きく向上します。
色による用途の分類
経験則として、白いマイクロプレートは発光(ルミネッセンス)測定に使用され、黒いマイクロプレートは蛍光測定に使用されることが一般的です。この選択により、測定精度の向上とバックグラウンドノイズの最小化が実現できます。
透明度に関しても、特にイメージング用途では重要で、シクロオレフィンポリマー製のプレートなどは、ガラスに近い透明性を提供し、光照射による細胞への影響を抑制します。
標準的な規格品以外にも、特定の研究ニーズに対応した独自形状のマイクロプレートが開発されています。6ウェル、24ウェル、96ウェル、384ウェル、1536ウェルという一般的な規格品では対応できない特殊な実験要求に対して、カスタムメイドのプレート製作が行われています。
独自規格のプレート開発には金型製作が必要となり高額になりますが、特定の実験プロトコルや装置に最適化された仕様を実現できます。例えば、特殊な細胞培養条件や、独特な測定機器に対応したプレート設計などが該当します。
また、表面処理による機能性付与も重要な差別化要素となっており、細胞付着性を向上させる表面処理や、特定の化学反応を促進する表面改質などが施されたプレートも存在します。これらの特殊仕様は、研究の精度向上や新たな実験手法の開発に寄与しています。
さらに、近年では3Dプリンティング技術を活用したマイクロプレートの試作も行われており、従来の射出成形では困難な複雑形状や、少量多品種の製作が可能となっています。これにより、研究開発段階での迅速なプロトタイピングが実現されています。