

モルタルで張れば御影石タイルは絶対に剥がれない、は完全に間違いです。
LIXILが展開する御影石タイルの代表格が「インテグレート セレクション 御影石タイプ(品番:COM-A255/GN-1〜GN-8)」です。深みのある石面のモザイクタイルで、重厚感ある壁面演出を目的とした外装壁向け商品として位置づけられています。
規格は50mm二丁(実寸:95×45mm)を基本とし、目地共寸法は300×300mm。1ケース22.0シート入りで重量は約24.5kgと、職人1人での持ち運びにはやや注意が必要な重さです。ハガキの横幅が100mmほどですから、タイル1枚のサイズはその半分以下と小ぶりな部類に入ります。
標準価格は5,600円/㎡、90°曲紙張り品(COM-A255/90-14)では4,400円/mと公表されています(2025年4月現在)。これは御影石タイルの大手カテゴリの中でも施工実績の多い価格帯で、天然御影石の1㎡あたり相場9,000〜30,000円超と比較すると、大幅なコスト圧縮が可能です。
材質はBⅠ(磁器質)の施釉品です。磁器質は吸水率が1%以下と非常に低く、屋外での耐久性・耐凍害性に優れています。つまり外装壁に御影石タイルを使いたいが予算や施工管理が心配、という現場での有力な選択肢になります。
重要な点は全品番が「注文生産品」という扱いです。300㎡以下の発注では価格割増があり、また納期確認が必須となっています。工程管理上、発注タイミングは余裕をもって行うのが原則です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| シリーズ名 | インテグレート セレクション 御影石タイプ |
| 品番 | COM-A255/GN-1〜GN-8(8色展開) |
| 目地共寸法 | 300×300mm(50mm二丁) |
| 厚さ | 7.0mm |
| 材質 | BⅠ(磁器質)・施釉 |
| 標準価格 | 5,600円/㎡(注文生産品) |
| 生産区分 | 注文生産品(300㎡以下は割増あり) |
色見本はカタログやWeb上の画像だけでは実物と差が出やすい素材です。GN-1〜GN-8で微妙な色味が異なるため、施工前にカットサンプル(ミ-COM-A255-GN-1〜GN-8)を必ず請求して現物確認するのが基本です。
LIXILの公式製品ページでは品番ごとの施工事例画像や規格表が確認できます。
LIXIL ビジネス情報|インテグレート セレクション 御影石タイプ 製品ページ(biz-lixil.com)
インテグレート セレクション 御影石タイプは、LIXILの製品仕様として「接着剤張り専用商品」と明記されています。モルタル施工やタイル先付PCaパネル工法には対応しておらず、誤って使用すると剥離の原因になると公式が警告しています。これは見落とされやすいポイントです。
なぜ接着剤張り(はるかべ工法)を推奨するのか。LIXILの施工研究員の解説によると、タイル剥離の主な原因は「施工者の技術ミス」ではなく、建物に生じる歪みにあります。気温変化や乾燥・湿潤の繰り返しによって、コンクリート躯体・モルタル・タイルがそれぞれ異なる伸縮を起こし、界面に応力が蓄積されていきます。
特に近年では、型枠材の再利用化・離型剤の多用によってコンクリート躯体表面が滑らかになったことで、モルタルとの物理的噛み合わせが弱くなっています。剥離が起きているのは多くの場合「モルタルとタイルの間」ではなく、「コンクリート躯体とモルタルの界面」だということです。厳しいところですね。
これに対してはるかべ工法が有効な理由は、弾性接着剤が下地の動きを吸収するためです。モルタルが硬化後に剛性を持つのに対し、有機系接着剤(弾性接着剤)は固結後も弾性が残り、躯体の伸縮を接着剤層そのもので緩和します。化学的結合・分子間の物理的結合も働くため、モルタルより接着強度も高くなります。
推奨工法は以下の3パターンです。
張付材にはEGR-V2SP(屋外壁モルタル下地)またはEGR-V2EW(同)、屋内壁ではSN-REを使用します。目地材はイナメジが指定されています。副部材の組み合わせを間違えると、接着性能が担保されない可能性があります。副部材まで確認するのが条件です。
また、施工時にも注意が必要な点があります。「強くたたき押さえしない」「タイルを張り付ける際は接着剤にもみ込むように押さえ付ける」と仕様書に明示されています。力任せに押し込むとタイル割れの原因になり、それが後工程のクレームや補修コストにつながります。
タイル剥離の仕組みとLIXIL接着剤工法の詳細はこちらの記事が参考になります。
「タイルが落ちた!剥離の仕組みと対策は?」LIXIL担当者インタビュー(astas.co.jp)
施工前に必ず確認しなければならないのが「適用下地」の条件です。インテグレート セレクション 御影石タイプは、適用下地がコンクリート・コンクリート+モルタル・押出成形セメント板(厚さ60mm以上、フラットパネル)・ALCパネル(厚さ100mm以上)に限定されています。ALCが100mm以上という点は、薄いパネルでは使えないということです。
目地の選定も実は細かい判断が必要です。目地を詰めるか空目地にするかで、仕上がりの見え方が大きく変わります。特に空目地施工を採用する場合、タイル表面と小端面(切断面)の色差が目立つことがあります。現場で実物確認せずに決定すると、施主からのクレームになりかねません。これは使えそうな知識です。
黒目地を使用する場合も要注意です。目地残りによってタイル面が汚染されやすいため、目立たない場所で必ず試し張りを行うよう指定されています。モザイクタイルは1枚が小さいぶん、目地材が表面に入り込む面積も多くなるので特に慎重に対応する必要があります。
濃色タイル(GN-6・GN-8など)は「虹彩現象」が目立つ場合があると明記されています。虹彩現象とは、光の当たり方によってタイル表面が虹色に変化して見える現象です。施主が「イメージと違う」と感じるケースがあるため、採用前に光源条件の確認と事前説明が重要です。
紙張り仕様については、施工後の剥がし洗いを「張付材硬化後に直ちに必ず行う」よう求められています。この洗浄が遅れると、紙の糊がタイル表面に残り、汚染の原因になります。マイクロガード加工品は特に念入りな洗浄が必要で、防汚性能の発揮に直接影響します。
目地材や施工注意事項はLIXILのスペック資料集で詳細を確認できます。発注前に必ず目を通すのが原則です。
施工部位別の詳細な工法解説はLIXIL公式の技術記事が参考になります。
建築業に携わっていると、施主から「天然御影石にしたい」という要望を受けることは珍しくありません。ここでは御影石タイル(磁器質)と天然御影石を実務的な観点から整理します。
天然御影石(花崗岩)の300角の価格相場は1㎡あたり9,000〜30,000円超です。一方、LIXILの御影石タイプ(COM-A255)は5,600円/㎡。単純計算でも材料費が半額以下になるケースがあります。施工費を含めると、全体のコスト差はさらに広がります。天然石の石張り工事費は1㎡あたり26,000〜36,000円とされており、タイル工事費(1㎡あたり約12,000〜22,000円)とは大きな差があります。
つまりコストの差は歴然です。
メンテナンス面でも違いが出ます。天然御影石は吸水率が低い石材ですが、経年で表面が汚染されると撥水処理が必要になります。磁器質の御影石タイルはほとんど吸水しないため、基本的に撥水処理は不要で、中性洗剤で大半の汚れが落とせます。管理コストを意識する施主には、このメリットをしっかり伝えておくと提案の説得力が上がります。
寸法の安定性も実務では重要です。天然石は採石ロットや個体ごとに寸法・色のばらつきが大きく、施工精度に影響します。工業製品である磁器質タイルは寸法誤差が管理されており、施工のスピードと仕上がり精度が向上します。
ただし、天然御影石にしか出せない「自然の表情(クリスタル感・鉱物の粒感)」があるのも事実です。高級感の本物志向を求める施主には代替できません。用途・予算・デザインコンセプトに応じて、どちらが適切かを判断する材料を持っておくことが、建築業従事者としての提案力につながります。
天然石と石調タイルの特徴・違いについて詳しく解説されています。
天然石と石調タイル|タイル研究室 福ラボ(danto.jp)
御影石タイルのカラー選定は「GN-1(白系)〜GN-8(黒系)」の8色展開です。しかしカタログの色合いで判断するのは危険で、実際の施工後の見え方とはズレが生じることがあります。ディスプレイ上の色とリアルな素材の色は異なる、と覚えておけばOKです。
LIXILでは「タイルマンセル値検索」という独自ツールを提供しています。色相・明度・彩度(マンセル値)を指定して、条件に合致したタイルを逆引きで検索できる仕組みです。例えばグレー系の落ち着いた外装壁を計画する場合、マンセル値「N6〜N7」で検索すると、候補となる品番を絞り込めます。これを活用することで、施主へのカラーの説明が数字で共有できるため、色のイメージ違いによるトラブルを減らせます。
意外なのが「都市景観法」との関係です。景観計画区域内の建築物では、外装壁のカラーに制限が設けられている地域があります。建築業従事者がこの確認を怠ると、完成後に是正指導を受けるリスクがあります。対象区域かどうかは、各自治体の景観計画を確認するのが原則です。施工前の確認ステップとして、景観計画区域の有無と外装カラー制限の確認を組み込んでおくことをおすすめします。
現場では「施主の好みでカラーを決める」という流れが多いですが、外装壁の場合は周辺建物との調和も考慮する必要があります。GN-1〜GN-3のライトグレー系は汚れが目立ちにくく、建物の経年変化にも合わせやすい傾向があります。GN-6〜GN-8の濃色系は竣工直後の重厚感が際立ちますが、前述の虹彩現象や汚れの視認性に注意が必要です。
カラーを含む施工計画は、サンプルを屋外に持ち出して実際の採光条件で確認することが重要です。屋内と屋外では色の見え方が大きく変わります。この一手間が、施主満足度と後工程のトラブル防止に直結します。
タイルのカラー選びとマンセル値、都市景観法の関係について詳しく解説されています。