
見守りサービスとは、センサーやカメラ、電話確認、訪問などの方法で高齢者の健康状態の把握や異常を監視し、早期発見するためのサービスです。マンション経営において、高齢者入居者の増加に伴い、このサービスの重要性が急速に高まっています。
現在の日本では、高齢化社会の進展により一人暮らしの高齢者が急増しており、賃貸マンションにおける孤独死のリスクが深刻な問題となっています。孤独死は不審死扱いとなり事故物件となるため、相続放棄になりやすく、管理費の入らない空き家になる可能性があります。
マンション管理における見守りサービスの特徴。
民間のセキュリティ会社、ガス、電気、介護事業者など多くの企業がサービスを提供しており、自治体も民間会社と連携して見守りサービスを展開しています。
マンション向け見守りサービスは主に5つのタイプに分類されます。それぞれの特徴と適用場面を詳しく解説します。
センサー型見守りサービス
部屋にセンサーを設置し、高齢者の生活を確認するタイプです。冷蔵庫やトイレなどの利用を感知し、一定時間以上利用がない場合に家族のスマートフォンに通知が送られます。
訪問型見守りサービス
介護事業所の職員や郵便局、電力会社、ガス会社などの地域巡回業務のある企業社員が定期的に訪問し、健康状態や安否を確認します。
通報型見守りサービス
室内に緊急時用ボタンを設置し、異常時に入居者が押すことで警備会社や救急車への通報が行われます。
カメラ型見守りサービス
室内にカメラを設置し、24時間リアルタイムで様子を確認できます。
対話型見守りサービス
定期的な電話による安否確認を行い、会話の様子を家族にメールで報告します。
見守りサービスの導入費用は、サービス種類によって大きく異なります。マンション経営者にとって重要なのは、初期投資と継続的な運用コストのバランスです。
初期費用の内訳
月額運用費用の比較
費用対効果の評価指標
孤独死対策で重要なのは早期発見です。3日以内の発見を目標とする場合、最低でも3日に1回の確認が必要となります。
センサー型や監視カメラ、スマートメーターなどは24時間の状況確認が可能で、早期発見に最も効果的です。安価に導入できるものもあるため、費用負担を抑えながら効果的な見守りが実現できます。
投資回収期間の計算
事故物件化による損失を考慮すると、見守りサービスの導入は経済的にも合理的な判断といえます。一般的な孤独死による損失額(原状回復費用、空室期間の家賃損失、風評被害)は数百万円に及ぶため、月額数千円の見守りサービス費用は十分に回収可能です。
見守りサービスの導入において最も重要なのは、入居者に納得してもらうことです。高齢者の中には見守りサービスに対して抵抗感を示す方も多いため、適切なアプローチが必要です。
入居者の心理的障壁
受け入れ促進のための選択肢提供
入居者が見守りサービスを選択できるよう、複数の選択肢を用意することが効果的です。
プライバシー配慮型サービス
電気などのスマートメーターを活用した見守りは、直接監視されているわけではないため、導入のハードルが低くなります。通常の生活パターンと異なる状態が発生した場合のみ異常とみなすため、入居者の心理的負担が軽減されます。
操作不要型サービス
操作に不安がある高齢者には、操作の必要がないセンサー型サービスを提案します。冷蔵庫の開閉やトイレの使用など、日常生活の中で自然に発生する行動を検知するため、特別な操作を覚える必要がありません。
段階的導入アプローチ
家族との連携強化
入居者の家族に対しても、見守りサービスの重要性と効果を説明し、家族からの説得を促すことが有効です。家族の安心感が入居者の納得につながるケースが多く見られます。
マンションにおける見守りサービスの導入には、管理組合の業務範囲との関係で法的な検討が必要です。この分野は検索上位記事ではあまり詳しく触れられていない重要な視点です。
管理組合業務の原則と例外
管理組合の業務対象は、基本的に共用部分及びその敷地が原則です。専有部分を対象とする見守りサービスは、原則として管理組合の業務範囲外となります。
個別契約による解決方法
特定の区分所有者や高齢者を対象とする見守りサービスは、費用負担をめぐるトラブルを避けるため、個別契約とすることが望ましいとされています。
共同決定による導入方法
標準管理規約32条12号の解釈において、総会や規約で共同決定していく方法があります。マンション全体の合意形成が前提となりますが、より包括的な見守り体制の構築が可能になります。
民法上の組合としての運営
管理組合や自治会とは別の形で、区分所有者や居住者が民法上の「組合」として見守り体制を作る方法もあります。この場合、管理組合の業務とは関係なく、任意に「見守り見守られる」関係を構築できます。
あんしん登録カードの活用
実際の成功事例では、「あんしん登録カード」を提出してもらい定期的に更新することで、290戸中9割以上の住民が参加する見守り体制を構築しています。この情報は見守りだけでなく、修繕工事時の協力要請など様々な場面で活用されています。
4者連携による包括的運営
管理組合・自治会・災害協力隊・高齢者等見守り支援協議会の4者が年4回の定期会議を開催し、包括的な見守り体制を運営している事例もあります。このような多角的なアプローチにより、より効果的な見守りサービスの提供が可能になります。
法的リスクの回避策
見守りサービス導入時には、個人情報保護法への対応、緊急時の対応責任の明確化、サービス提供者との契約内容の精査が重要です。特に、異常発生時の駆けつけサービスについては、責任範囲を明確に定めておく必要があります。
国土交通省が新設した「見守り付き賃貸」制度では、安否確認や訪問等による見守りを行う「居住サポート住宅の認定」が創設されており、制度的な後押しも期待できます。