

二分法の意味は、語感どおり「物事を2つに分ける枠組み」を指すことが多く、議論や分類でよく登場します。
論理学の文脈では、2つの概念が互いに矛盾や対立をしているような状態を「二項対立(dichotomy / binary opposition)」と呼び、元は一つの概念を二分して対立関係へ持っていくことも含めて説明されます。
建築の会話でも「構造体/非構造」「可燃/不燃」「合格/不合格」のように二項で整理すると伝達が速くなる一方、実務では“条件付きで成立する中間”が多いので、二項対立の便利さと危うさをセットで理解するのが安全です。
具体例として、仕様協議で「やる/やらない」だけに落とすと、実は存在する「部分的にやる」「代替でやる」「時期を分ける」といった手段を捨てやすくなります。
二分法は“思考の棚”として役立ちますが、棚の外にある要素(規格、現場制約、近隣、天候、納期、施工順序)を排除しない運用が重要です。
「二分法」は数学・数値解析では、方程式 \(f(x)=0\) の解が含まれる区間を半分に切り詰める操作を繰り返して解を探す求根アルゴリズム(bisection method)を指します。
この二分法は、解がある範囲を「ここまで」と区間で押さえ、毎回中点を評価して区間を狭めるという、手順が明確で堅牢なやり方として説明されています。
建築実務に直結するのは「計算」そのものよりも、合意形成・調査・原因究明を“区間を狭める”発想で進めるメタファーで、例えば「不具合原因を一気に断定する」のではなく「条件を二分しながら切り分ける」進め方に近いです。
たとえば漏水なら、上階由来か外壁由来かで大きく二分し、次に雨天のみ発生か常時か、さらに特定方位か全周か、というように観察条件で“区間”を狭めていくと、闇雲な解体や不要な散水試験の回数を減らせます。
ここで言う二分法は「Yes/Noで詰める」だけでなく、「中点を取って確かめる(中間条件を試す)」という姿勢が要点になります。
参考)二分法 - Wikipedia
誤った二分法(false dichotomy / false dilemma)は、実際には他にも選択肢があるのに、二つの選択肢だけしか考慮しない状況を指す非論理的な誤謬です。
この誤謬は、相手に選択を強いる場面で生じやすく、「仲間か敵か」のように二択を押し付ける説明が典型例として挙げられています。
さらに、二つだけにすると両極端になりがちで、「別の道がない」印象を与えて主張を信じさせる効果がある、とも説明されています。
建築の会議で起きやすいのは、たとえば「コストを守るなら品質を捨てるしかない」「工期を守るなら安全を諦めるしかない」といった構図です。
実際には「仕様の優先順位を再整理する」「施工手順の変更で安全を確保しつつ工期影響を最小化する」「材料を変えずに納まりを変える」など選択肢があり得るので、二択に見えた時点で“第三案の義務探索”をルール化すると事故が減ります。
誤った二分法を避ける実務フレーズ(議事録にも残しやすい)を挙げます。
白黒思考(black-and-white thinking)は、誤った二分法と密接に関連する概念として挙げられ、典型例として「いい人/悪い人」のように無意識に分類してしまう傾向が説明されています。
また、白黒思考(=二分化思考)を「物事を極端に二分化して捉え、中間的なグレーゾーンを認めない思考パターン」として整理する説明もあります。
建築の現場では、炎上案件・是正対応・クレーム対応などで精神的負荷が高いほど「白か黒か」に寄りやすく、結果として関係者の発言が防衛的になり、情報共有が詰まることがあります。
白黒思考を“個人の性格”にせず、仕組みで薄めるのがコツです。
意外に効く小技は、レビューの場で「グレー項目(未確定・要確認)一覧」を先に共有することです。
“グレーが存在してよい”と合意できると、誤った二分法の圧力が下がり、設計・施工・監理の役割分担も現実的に回りやすくなります。
検索上位の一般解説は「二分法=二項対立」「誤った二分法」「白黒思考」「数学の二分法」に寄りがちですが、建築従事者にとっての盲点は“図面・仕様書の書き方そのものが二分法を誘発する”点です。
例えば仕様書で「○○とする/○○としてはならない」が増えるほど、現場は二択(できる/できない)で受け取りやすくなり、納まり・代替材・施工誤差の“許容レンジ”が消えていきます。
結果として、軽微な条件違いをすべて「不可」に倒して工程が詰まるか、逆に「可」に倒して品質事故が起きるか、どちらかに振れやすくなります。
この問題は、設計変更や施工計画の議論が「A案 or B案」の二者択一になった瞬間に悪化します。
そこで、仕様の文章にも“グラデーションを設計する”発想を入れます(ただし曖昧にするのではなく、判断基準を明確化する)。
さらに、二分法を“武器”として使う場面もあります。
災害時・緊急時は判断速度が最優先なので、「退避する/しない」「通電する/しない」のような二分は命を守ります。
つまり建築の実務では、二分法を「普段の議論で乱用しない」一方で、「緊急の判断では迷いを減らす」ように、場面で使い分けるのがプロの運用です。
参考:誤った二分法(定義、白黒思考との関係、例、関連概念)が整理されています。
Wikipedia「誤った二分法」
参考:数値計算の二分法(区間を狭める反復手順)が手順として確認できます。