

小学生ののこぎり指導で最初に揃えるべきは「切り方の技術」よりも、安全に切るための場所確保です。机の配置を考え、周囲に人が入り込まない作業スペースを作るだけで、接触事故の確率が大きく下がります。文部科学省の指導資料でも、机配置や土台(箱型いす等)の配置など、作業場所の確保を最初のステップに置いています。
次に重要なのが「運ぶ」動作です。のこぎりは歩いている最中が最も不意の接触が起きやすく、授業や家庭でもケガのきっかけになりがちです。文部科学省の資料では、人に向けないよう注意して運ぶことを明記しています。
参考)https://www.semanticscholar.org/paper/7b408c07e838bef8227ab90e0ed1a232eff1ac2c
置くときも同じで、使っていない時間に危険が増えます。机の端からのこぎりが出ている状態は、通った人の衣服や手が引っかかりやすく、落下や接触の原因になります。カバーがある場合はカバーを付け、置き方を事前に確認することが推奨されています。
・安全のチェックリスト(授業・家庭共通)
✅ 作業場所に人が入らない動線にした
✅ のこぎりを持って歩く距離を短くした
✅ 机の端から刃が出ない置き方にした
✅ カバーの着脱を「置く前」にルール化した
建築でも図工でも、のこぎりの上達を左右するのは材料固定です。材料が動くと、刃が溝から外れて曲がり、戻そうとして力が入り、結果として危険と失敗が増えます。文部科学省資料でも、友達に押さえてもらう・手や足で押さえる・万力やクランプで固定する・箱型いすの止め部分にひっかける等、複数の固定手段を提示しています。
固定の「意外な落とし穴」は、“押さえる人の手の位置”が曖昧なまま始めてしまうことです。押さえる側が材料の近くに手を置くと、切り進めるうちに手が刃線に近づき、ヒヤリが起きます。固定は「材料を動かさない」だけでなく、「手を刃線から遠ざける」ための仕組みにするのが、現場の安全設計の発想です。
・固定のおすすめ優先順位(現場視点)
🗜️ 万力・クランプ:最優先(手が刃線に入りにくい)
🪑 箱型いすの止め部分:授業環境で再現しやすい
🤝 友達に押さえてもらう:役割分担と立ち位置ルールが必須
🦶 手や足で押さえる:最後の手段(姿勢が崩れやすい)
・材料固定のコツ(失敗しやすい点を先に潰す)
姿勢と持ち方は、切断の精度と安全が同時に決まる基本です。文部科学省資料では、切るときは利き手が手前になるように持ち、材料に合わせて縦引き・横引きを使い分けることを示しています。
小学生がよくやりがちな失敗は、目線が刃先に近づきすぎる姿勢です。目線が近いと「線は見える」一方、上体が前のめりになって腕が突っ張り、結果として刃が左右にぶれます。建築の指導では、刃線は“顔で覗き込む”のではなく、“肩と肘の可動域”で追従するように教えると、無理な力が抜けて安定しやすいです。
もう一つは、材料と刃の関係を理解することです。「縦引き・横引き」は単なる用語ではなく、木目方向に対して刃の形(切れ方)が違うという前提があります。授業や家庭では、最初の1本だけでも「この板は木目がこっちだから、今日はこっちの刃」と言語化してあげると、道具の選択が“当てずっぽう”から卒業できます。
・姿勢のポイント(覚えやすい合言葉)
切り始めが一番難しく、ここで失敗するとその後もずっと曲がります。文部科学省資料では、安全に気を付けて親指を刃の脇に添え、数回前に押し出して溝を付ける手順が示されています。
この「親指を添える」は、単なる補助ではなく、刃先のブレを物理的に抑えるガイドです。建築現場でも、墨線に対して初動で刃を暴れさせないことが最重要で、最初の数ストロークは“切る”より“溝を作る”意識で行います。小学生には「最初は音を小さく、動きも小さく」と伝えると、力任せの押し切りを減らせます。
切り進めは「刃をまっすぐにひく」ことが基本で、板の厚さに合わせて角度を調整するとされています。
ここで意外と効くのが「線を目で追う位置」を一定にすることです。刃先だけを見ると蛇行に気づくのが遅れ、刃元だけを見ると線とのズレを見落とします。おすすめは“刃の中央付近が線上を通っているか”を見続けることで、修正が早くなり結果としてまっすぐ切れます。
切り終えも事故が起きやすい場面です。文部科学省資料では、切り終えるときに固定していない方も押さえ、板が割れたり落ちたりしないようにすることが示されています。
最後に力を入れると、切断片が落ちて割れたり、刃が抜けた反動で手首をひねったりします。切り終わりは“速度を落として、支えを追加して、軽く引く”が基本です。
・切断の3段階(小学生にも教えやすい)
切り始め・切り進め・切り終わりの具体手順(図工の安全指導の要点)
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zukou/nokogiri/inclass/index.htm
検索上位の解説は「持ち方・溝・固定」に集中しがちですが、建築従事者の視点で差が出るのは“墨付け(線の作り方)と固定計画”です。線が太い、線が途切れている、材料が反っているのに無理に固定する、といった条件が揃うと、小学生はまっすぐ切る以前に「どこを切れば合っているのか」が分からなくなります。だから指導側は、切る前の準備として「細い線を、端まで、見える場所に」作ってあげるのが効果的です。
固定計画も同様で、ただ万力で挟めば良いわけではありません。切り落ちる側が長いと自重で割れやすく、短いと最後に材料が跳ねて刃を噛みやすいなど、“切断片の重さ”が挙動を変えます。文部科学省資料でも、切り終えるときは固定していない方も押さえるなどして割れ・落下を防ぐ点が強調されており、これは「切断片の挙動をコントロールする」という現場の考え方と一致します。
さらに意外と知られていないのが、「指導の順番」を変えるだけで上達が早くなる点です。最初から長い距離を切らせると、途中で疲れてフォームが崩れます。短い試し切り(溝づくり→数cm進める→止める)を繰り返し、最後に本番の長さを切るようにすると、親指ガイドや直線の感覚を体で覚えやすくなります。
・建築視点の“授業設計”チェック(そのまま現場教育にも応用可)