
クランプは建築現場で材料を固定する工具として、種類ごとに明確な役割があります。最も一般的なC型クランプは、シャコ万力やG型クランプとも呼ばれ、ネジ式の締付機構により強力な固定力を発揮します。鍛造製の本体は充分な締付力が得られ、木材の切断など強い力が加わる作業で活躍します。
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F型クランプ(L型・スライディングクランプ)は、アゴ部分をスライドさせて素早く口幅を調整できる構造が特徴です。開口幅は120mmから500mmまでのサイズがあり、分厚い材料や重ねた材料の固定に適しています。締付力はC型より控えめですが、作業性の高さから本格的な家具づくりやDIYで重宝されます。
参考)クランプ (工具) - Wikipedia
建築現場の足場組立では、単管パイプを緊結する専用クランプが必須です。直交クランプは単管パイプ同士を直角(90度)に固定し、引っ張り強度1,500kg以上、許容荷重500kgで足場のメイン構造を形成します。自在クランプは可動式で自由な角度での接続が可能ですが、引っ張り強度1,000kg以上、許容荷重350kgと直交型より劣るため補助的に用いられます。
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締付力は作業の安全性と仕上がりを左右する重要な要素です。C型クランプはシンプルな仕組みで強力に締めつけられるため、木材の切断など強い力が加わる作業で活躍しますが、強く絞めすぎると材料が壊れたり跡がついたりする点に注意が必要です。材料を保護するには、カバーつきのクランプや当て木を使うのが有効です。
参考)クランプの種類と使い方
足場用クランプでは、種類によって強度規格が明確に定められています。厚生労働省の定める規格では、直交型は引っ張り強度1,500kg以上、自在型は1,000kg以上が必要とされ、業界標準の許容荷重は直交型500kg、自在型350kgです。この強度差から、本来直交クランプで固定すべき部分に自在クランプを使うと安定性が低下し、足場全体のバランスに影響が及びかねません。
クランプの引っ張り強度と許容荷重
クランプ種類 | 引っ張り強度(厚生労働省規格) | 許容荷重(業界標準) | 主な用途 |
---|---|---|---|
直交型クランプ | 1,500kg以上 | 500kg | 足場メイン構造 |
自在型クランプ | 1,000kg以上 | 350kg | 補助的固定 |
C型クランプ | - | - | 木材切断・強固定 |
F型クランプ | - | - | 厚物・仮固定 |
F型クランプはスチール製やアルミ合金製で腐食防止コーティングが施されており、広い範囲を均等に抑えることができます。C型クランプは鋳鉄や高硬度合金が使われ、ネジ部の太さやタッピング加工の精度が長寿命のポイントとなります。
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クランプの寸法のなかでも、最大口幅(厚み)と奥行き(深さ)は固定できる材料のサイズに直結します。木工クラフトであれば10cm程度で十分ですが、本格的な家具づくりやDIYに取り組むなら最大口幅20cm前後を目安にすると使い方の幅が広がります。分厚い材料や複数重ねた材料の固定には、最大口幅1m前後の大きなクランプも選択肢となります。
作業台や木板など面積の広いものを固定するときに、フチではなく奥側で締めたいなら深型のクランプを選びましょう。一般的なモデルは奥行き(深さ)が浅めですが、深型ならフチよりも中央に寄った位置で固定できるため、クランプの安定性を高めるのに役立ちます。C型・F型クランプは深型を中心に奥行きのあるモデルが豊富で、クイックバークランプ・バネクランプなどは構造上、奥行きの浅いものが多めです。
最も使いやすいサイズの目安として、クイックバークランプでは口開き150mm×奥行63mmが推奨されます。当て木を使う場合は、当て木込みの厚みを考慮する必要があり、一般的な木材の加工に使うなら当て木の厚さは3cmほどあれば十分です。金属製のC型クランプを使う場合などは、もう少し厚めの当て木を用意するとよいでしょう。
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用途に応じた適切なクランプの選択は、作業効率だけでなく安全性にも関わります。材料を強い力で締めつけたい場合にはC型クランプが適しており、シンプルな仕組みで強力に締めつけられるため木材の切断など強い力が加わる作業で活躍します。初心者でも簡単に扱えるクランプがほしいなら、クイックバークランプがベターで、レバー(トリガー)を引くだけで締まるため片手でも操作ができます。
仮組みなどを簡単に固定したいときには、バネクランプ(スプリングクランプ)がうってつけです。挟む力の強い洗濯ばさみ・クリップのように使え、細かく口幅を調整できるクランプと比べると締めつけ力は控えめですが、パワーが一定で調整する必要がないのはメリットです。撮影用の布や薄手の板など、それほど厚みのないものを固定するときにぴったりです。
特定用途に使われる足場用クランプ
クランプ種類 | 特徴・用途 | 使用例 |
---|---|---|
垂木止めクランプ | 単管パイプと垂木を接続(直交・平行・自在の3種類) | 簡易倉庫や仮設建物の構造づくり |
筋交い止めクランプ | 単管パイプと手すりやブレス(筋交い)を接続 | 足場の補強 |
巾木止めクランプ | 巾木を設置、ノズル(押さえ棒)で押さえる | 落下物防止措置としての巾木設置 |
板止めクランプ | 板材(コンパネなど)を固定(直交・平行・自在、コーナー型) | 目隠し・雪よけ・仕切り等の設置 |
リング付きクランプ | 墜落制止用器具を取り付けるリング付き金具 | 安全対策用途 |
2つの材料を垂直に接着させて固定するには、コーナークランプが有効で、額縁や木箱などの製作・加工には重宝します。仮組みした箱などをしっかり固定する作業では、ベルトクランプが適しており、長さを調整したベルトを仮組みした箱などに巻きつけ周囲から力をかけて固定します。
作業台・加工物のダメージを防ぐには保護キャップが便利です。ゴム製のキャップが口を覆っているため、弾力でダメージを抑えるだけでなく滑り止めとして役立つ点もメリットです。繊細な木材などの材料を固定するなら、保護キャップつきのクランプを選びましょう。締めつけの強いクランプは部分的に過剰な力がかかりやすく、金属部がむき出しのものは凹み・割れなどの原因になる可能性があります。
高温急冷で作られた鋳鉄を採用したF型クランプは、鉄よりも高い強度と耐久性を備えています。接地部分には樹脂製の保護キャップが付いており、素材を傷めることなく使えるだけでなく、保護キャップは簡単に取り外せて溶接作業を始めとする熱を持つ作業にも対応できるのが魅力です。材料を保護するだけでなく滑り止めの役割も果たし、当て木でも保護できますが保護キャップつきなら厚みを考慮する必要がありません。
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足場用クランプでは、対応するパイプのサイズの確認も必要です。クランプには取り付けられるパイプの外径(対応サイズ)に応じた種類があり、パイプ径に合わないクランプを使用するとしっかり固定できず事故の原因になります。主に使用されるサイズは、φ48.6mm(単管足場の単管パイプ用)とφ42.7mm(枠組足場の建枠パイプ用)の2種類で、基本的には単管用クランプと枠組足場用クランプは規格の異なる別物であり互換性はありません。
クランプは力がかかる方向に「受け」が来るように取り付けるのが原則です。誤って逆向きに取り付けてしまうと、力がかかり続けた末にクランプが緩み、最悪の場合パイプが抜け落ちる可能性があるからです。特に、受けが上でボルトが下に来る「逆さクランプ」はリスクが高く、大きな事故の原因にもなり得るので要注意です。グッと荷重のかかるパイプを手で受けて支えることをイメージすると、わかりやすいでしょう。
クランプを締め付ける際には、メーカーが推奨するトルクを守ることも重要で、一般的には250kg/cm~350kg/cmの範囲が適正とされています。締め付けが弱すぎると不十分な固定となり、強過ぎるとクランプやパイプの損傷につながるからです。トルクを設定できるタイプのラチェットレンチなら、締め付けトルクを一定に保てるため、締め付け不足や締め付け過ぎのリスクが減り安心です。
クランプは繰り返し使ううちに劣化が進み、ネジ部やアゴ部分の摩耗、錆や腐食、本体の変形やひび割れといった状態が見られるクランプは使用を避けましょう。劣化したクランプは、たとえ一見まだ使えそうであったとしても締め付け機能が落ちてパイプをしっかり固定できず、事故につながる恐れがあるからです。カムや旋回アゴ(ジョー)の歯が摩耗・目詰まり・欠落した物や、ロックスプリングのききの悪いクランプは使用せず、必ず作業開始前の点検を実施してください。
参考)使用上の注意|イーグルクランプ株式会社 コーポレートサイト
クランプによる事故の90%以上は取り扱いや使用上のミスによって引き起こされています。作業に慣れた頃やクランプが古くなった頃が要注意で、正しい使用方法を習得し安全な作業をしなければなりません。異常が認められた場合は使用禁止とし、分解点検を行い部品の手入れ・交換をするか、メーカー(またはメーカー指定の場所)に送付し修理しなければなりません。
足場用クランプの種類・選び方・価格・注意点の詳細ガイド(株式会社エルライン)
足場組立に必要なクランプの強度基準、対応パイプサイズ、正しい取付方向について専門的な解説があります。
クランプ使用上の安全注意事項(イーグルクランプ株式会社)
クランプによる事故の大半を占める誤った作業方法と、点検基準について詳細な情報が掲載されています。