
オイルダンパー制振装置は、シリンダー内部のオイルとピストンの抵抗を利用して地震や風による建物の揺れを吸収し、損傷を抑制する装置です。揺れを受けるとピストンが作動し、筒状の容器に開けられた穴からオイルが移動することで圧力が発生し、減衰力が生まれます。
オイルの通り道や粘度によって制振性能が調整できるため、建物の用途や設計条件に応じた最適な制振効果を発揮できます。
特に繰り返しの揺れや余震に対しても安定した効果を発揮し、新築だけでなく既存建物のリフォームにも対応可能な施工性の高さが注目されています[2][4][6]。
オイルダンパー制振装置には、筋違型やシアリンク型、間柱型など複数の種類があり、建物の構造や設計方針に合わせて選択できます。
例えば、筋違型は木造や鉄骨造の耐震補強に多く用いられ、シアリンク型や間柱型は高層ビルや特殊用途建築物にも対応します[3]。
ダンパー容量(kN)や配置方法によって減衰効果が異なり、設計段階で建物の揺れ方や応答解析を行い、最適な配置・容量を決定することが重要です。
トグル制震ブレースのような増幅機構を持つタイプでは、同じ容量でもより高い制振効果が得られる場合があります[1]。
オイルダンパー制振装置は、
オイルダンパー制振装置は、超高層ビルから戸建住宅、木造ラーメン構造まで幅広く適用されています。
例えば、森ビルの超高層プロジェクトやアリーナ施設など、耐震・制振性能が厳しく求められる建物での採用実績が増加しています[3]。
応答解析では、オイルダンパーを追加することで層間変形角や最大応答値が大幅に低減され、建物の損傷リスクが抑制されることが確認されています[1][5]。
木造建物でも、オイルダンパーの付加による応答制御と耐震設計法が確立されつつあり、数値実験や振動台実験で有効性が検証されています[5]。
オイルダンパー制振装置の選定では、単に耐震性能やコストだけでなく、建物用途やライフサイクルコスト、将来的なリフォーム・増改築への対応性も考慮することが重要です。
さらに、各メーカーが提供する減衰特性や応答解析データ、設置後のメンテナンス体制、トレーサビリティの有無なども比較検討ポイントとなります。
近年はBIM(Building Information Modeling)を活用した設計・施工の一元管理や、IoTセンサーによるダンパー状態の遠隔監視など、デジタル技術との連携も進みつつあります。
これにより、従来は難しかった長期的な性能管理やリスク評価も可能となり、建物の価値向上や維持管理コストの最適化が期待されています。
【参考リンク】
オイルダンパーの基本構造や設計ポイントの詳細解説
建築用制震ダンパーの構造と特徴
【参考リンク】
木質構造へのオイルダンパー適用と応答解析の実験・設計法
木質構造へのオイルダンパーの応答制御と耐震設計法(PDF)
【参考リンク】
最新の高層建築への油圧式制震ダンパー適用事例
センクシア株式会社 ハイビルダム製品紹介