パーカーの表面処理の特徴とリン酸塩被膜の効果

パーカーの表面処理の特徴とリン酸塩被膜の効果

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パーカーの表面処理特徴とリン酸塩被膜

パーカー表面処理の主要特徴
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防錆効果

リン酸塩被膜による優れた耐食性を実現

⚙️
耐摩耗性向上

摺動部品の耐久性を大幅に改善

🎨
塗装密着性

下地処理として優れた塗膜接着効果

パーカーの表面処理における基本的な特徴

パーカー処理は、金属表面に化学的にリン酸塩皮膜を生成させる化成処理技術です。この処理では、リン酸マンガン、リン酸亜鉛、リン酸カルシウムなどのリン酸塩処理液を使用して、鉄鋼材料の表面に厚さ1μ〜15μ程度の灰色の不溶解性皮膜を形成します。
この表面処理の最大の特徴は、処理前後における処理物の寸法変化や重量変化が極めて少ないことです。化学反応により対象のワークの表面に膜を生成する技術であるため、複雑で入り組んだ形状でも、膜の厚さや重量を均一に保ちやすいという大きなメリットがあります。
処理温度は通常100℃を超えることがなく、処理を行う金属に熱による物理的な変化を与えません。この特性により、精密部品や寸法公差の厳しい工業製品にも安心して適用できます。

パーカーの表面処理によるリン酸塩被膜の種類と特性

パーカー処理には主に3つの種類があり、それぞれ異なる特性を持ちます。
リン酸マンガン被膜

  • 膜厚:約15μm
  • 特徴:優れた耐食性と耐摩耗性向上を実現
  • 用途:摺動部品、機械部品に最適

リン酸亜鉛被膜

  • 膜厚:約10μm
  • 特徴:耐食性向上と密着性向上(塗装との密着性が特に優秀)
  • 用途:塗装下地処理として広く使用

リン酸カルシウム被膜

  • 膜厚:約5〜7μm
  • 特徴:耐食性向上と接着性向上(特にゴムとの接着性が優秀)
  • 用途:ゴム接着部品に適用

これらのリン酸塩皮膜は、化成皮膜であるため対象の金属から膜だけが剥がれる心配がない点も重要な特徴です。

パーカーの表面処理による防錆効果と耐摩耗性向上

パーカー処理の防錆効果は、リン酸塩皮膜が金属表面を物理的に保護することで実現されます。処理液に浸漬した際に鉄の表面が溶解し、鉄のまわりの溶液のpHが上昇することで、溶液中の金属イオンが不溶性の塩となって析出し、鉄を被覆する仕組みです。
この処理による耐摩耗性の向上は、特にピストンやカムシャフト等の摺動部品で大きな効果を発揮します。パーカー処理は対象品の表面にある凹凸も化成処理によってある程度ならすことができ、摺動特性を改善します。
また、リン酸塩皮膜処理では、ショットブラストでは得られない均一な表面粗化状態が得られるという特徴もあります。この均一な表面状態により、潤滑性の付与やなじみ向上効果も期待できます。

パーカーの表面処理における塗装下地としての密着性特徴

パーカー処理は、塗装の前処理として非常に優れた特性を示します。リン酸塩被膜が金属表面にあると微細な結晶が金属表面に作られ、塗料との密着力を上げる効果を発揮するためです。
この密着性向上効果により、塗膜の剥離を防止し、傷がついても錆が広がらないようにすることを目的として、自動車をはじめとした工業製品に標準的に採用されています。
特にリン酸亜鉛被膜は塗装下地として最適な特性を持ち、強力な密着力と耐食性能を付与するため、自動車業界や自動車部品業界でも定評のある技術となっています。

パーカーの表面処理技法と建築業界での応用特徴

パーカー処理には主に2つの処理技法があります。
浸漬法(どぶ漬け法)

  • 処理液の入った槽に対象物品を丸ごと浸漬する方法
  • 複雑形状の部品や大型部品に適用可能
  • 均一な膜厚が得られる特徴

スプレー法

  • 処理液をスプレーで塗布する方法
  • 大型構造物や部分的な処理に適用
  • 高速処理が可能で、皮膜処理液の管理が容易

建築業界では、鋼材の防錆対策として、特に構造用鋼材や建築金物の表面処理にパーカー処理が活用されています。鋳物にも適用可能であるため、建築用鋳鉄製品の表面処理にも使用されます。
処理工程は以下の順序で進行します。

  1. 湯洗
  2. 脱脂
  3. 水洗
  4. 表面調整・下地調整
  5. 化成処理
  6. 水洗
  7. 湯洗
  8. 乾燥

この表面処理技術は、寸法変化が少なく、脱膜しない、耐摩耗性向上、密着性向上、そして安価という5つの主要特徴により、建築分野でも幅広く活用されています。特に、排水処理等が軽減されるという環境面でのメリットも建築現場での採用に寄与しています。