
不動産投資において利回り計算は物件選定の最重要指標です。表面利回りは「年間賃料収入÷物件価格×100」で算出される基本的な指標で、物件の収益性を簡単に把握できます。
一方、実質利回りは管理費、修繕費、税金などの運営コストを差し引いた実際の収益率を示します。例えば物件価格1億円、年間賃料収入840万円の場合、表面利回りは8.4%となりますが、年間経費130万円、購入諸費用350万円を考慮すると実質利回りは約6.85%まで下がります。
💡 重要なポイント
物件選定では表面利回りに惑わされず、実質利回りでの比較検討が不可欠です。特に「表面利回り20%でも運営コストがかさみ実質利回り4%になった」というケースは珍しくありません。
利回り相場は地域と物件種別によって大きく異なります。2023年4月時点のデータでは、東京都内の城南地区(港区・品川区など)でワンルーム3.8%、ファミリー向け3.9%となっています。
地方都市では物件価格が安いため利回りが高く、札幌・仙台で5%超、広島ではワンルーム5.2%、ファミリー向け5.3%となっています。大阪の平均は4.4%で、全国平均は約5%弱が相場です。
物件種別による利回り比較
物件種別 | 表面利回り | 実質利回り |
---|---|---|
アパート・マンション | 6.14~7.68% | 5.94~8.22% |
戸建て賃貸 | 7.20~9.60% | 5.94~8.22% |
賃貸ガレージハウス | 9.60~12.00% | 8.22~10.50% |
戸建て物件では新築5~6%、中古6~8%が相場で、地方なら10%超も可能です。ただし修繕費や空室リスクが高いため、利回りの高さだけでは判断できません。
高利回り物件の実現には立地選定が最重要要素です。入居率は物件の収益性を左右する決定的要因で、総戸数30戸のマンションで27戸が埋まっていれば入居率90%となります。
立地選定の重要チェックポイント
駅から徒歩圏内の物件は入居率が高く安定収益が期待できますが、「家賃安く広い部屋でも駅からバス15分+徒歩10分」のような物件は天候に左右される移動ルートとなり、入居者にとってマイナス要素となります。
地方都市では購入価格の安さから高利回りが期待できますが、人口減少エリアでは将来的な空室リスクが高まります。特に地方少額高利回り物件では総事業利回り20%以上を目標とする投資家も存在しますが、これは修繕価格を含めた総合的な収益率での話です。
高利回り物件ほど空室リスクと維持管理コストが高くなる傾向があります。空室率を考慮した収益計算では、入居率8割を想定すると年間家賃収入が672万円(840万円×0.8)、年間経費が104万円(130万円×0.8)となり、実質利回りは5.48%まで低下します。
主な維持管理コスト項目
築年数が古い物件ほど修繕費が高額になり、特にエレベーターのメンテナンス費用や電気代などの経費がかさむケースが多発しています。中古物件では築20年以内で6%前後、築20~35年で7~10%の表面利回りが相場ですが、修繕費の増加により実質利回りは大幅に低下する可能性があります。
空室対策として重要なのは、物件の魅力度向上と適切な賃料設定です。新築物件は入居率が高く空室リスクが低いため、安定した収益が期待できます。
利回り物件投資では運用中の収益だけでなく、売却時の出口戦略も重要な収益要素です。物件の売却しやすさは投資家の購入判断に大きく影響し、運用中の利回りが多少低くても確実な利益が確定できる物件は高く評価されます。
売却戦略の重要ポイント
不動産は簡単に売却できない資産のため、物件選びに失敗すると空室増加により収益が期待通りにいかないリスクがあります。特に初心者は経験豊富な不動産業者のアドバイスを参考に、リスクの少ない物件選びを心がけるべきです。
地方の高利回り物件では売却時の流動性が低く、想定より安価での売却を余儀なくされるケースもあります。投資期間中の総収益を最大化するには、購入時から売却を見据えた物件選定が不可欠です。
PLの観点から見ると、利回り20%を目指さないとキャッシュフローが赤字になる可能性があり、特に「持たざるものの不動産投資」では高利回りへのこだわりが重要となります。
物件の立地、築年数、管理状況を総合的に判断し、長期的な資産価値を維持できる物件への投資が成功の鍵となります。