固定資産税と建築の関係性と評価額計算方法

固定資産税と建築の関係性と評価額計算方法

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固定資産税と建築の基礎知識

固定資産税の基本
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固定資産税とは

土地や建物などの固定資産に対して課せられる地方税で、毎年1月1日時点の所有者に課税されます。

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税率について

標準税率は1.4%で、固定資産税評価額に基づいて計算されます。

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支払い時期

一般的に年4回(4月・7月・11月・2月)に分けて納付します。自治体によって異なる場合があります。

固定資産税は、土地や建物などの不動産を所有している方が毎年支払う必要がある地方税です。この税金は、各市町村が固定資産の評価を行い、その価値に応じて課税されます。建物を新築したり購入したりする際には、この固定資産税についての知識が非常に重要になります。

 

固定資産税は、毎年1月1日時点で不動産を所有している方に課税されます。つまり、1月2日以降に取得した場合は、翌年から課税対象となります。また、建築中の建物については、1月1日時点で完成していなければ、その年の固定資産税は課税されません。ただし、土地については更地の状態で課税されることになります。

 

固定資産税の標準税率は1.4%ですが、これに加えて都市計画税(標準税率0.3%)が課される地域もあります。東京都の場合は、多くの地域が市街化区域に指定されているため、固定資産税と都市計画税の両方が課税されることになります。

 

固定資産税の評価額計算方法

固定資産税の計算方法は、基本的に「固定資産税評価額(課税標準額)×税率(1.4%)」という式で求められます。ここで重要なのが固定資産税評価額です。

 

建物の固定資産税評価額は、「再建築価格×経年減点補正率」という式で計算されます。再建築価格とは、その建物を評価時点で新築した場合にかかる建築費用のことです。一般的に、新築時の建物評価額は建築費用の約50〜70%程度と言われています。

 

経年減点補正率は、建物の経年劣化による価値の減少を反映するための係数です。建物の構造や種類によって異なりますが、年数が経過するにつれて小さくなり、最終的には20%を下限として固定されます。つまり、いくら年数が経過しても、建物評価額は再建築価格の20%以下にはならないということです。

 

評価額は3年ごとに見直し(評価替え)が行われます。この際、「評点一点当たりの価額」という係数も加味されます。これは物価水準の変動を反映するもので、建築費用が高騰している場合は1.0を超えることもあります。そのため、経年減点補正率で評価額が下がっても、物価上昇によって相殺されることもあるのです。

 

固定資産税を抑える建築の工夫

固定資産税を抑えるためには、建築段階からいくつかの工夫をすることが可能です。以下に主なポイントをまとめます。

 

  1. 間取りをシンプルにする

    複雑な間取りよりも、シンプルな間取りの方が固定資産税は安くなります。小さな部屋をたくさん作るよりも、大きな部屋を少なく作る方が税金は抑えられます。

     

  2. 建物の形状を正方形に近づける

    上空から見た建物の形状が正方形に近く、凹凸が少ないほど固定資産税は安くなります。複雑な形状は材料費や施工費が多くかかると見なされるためです。

     

  3. 階数と階段の数を抑える

    3階建てよりも2階建て、階段が2つあるよりも1つの方が固定資産税は安くなります。

     

  4. バルコニーの広さを抑える

    バルコニーは広いよりも狭い方が固定資産税は安くなります。

     

  5. 床材や天井の選択に注意する

    フローリングはあまり高くなりませんが、タイルや無垢板は高くなります。また、標準的な高さ(2.4m)を超える天井は、固定資産税が高くなる傾向があります。

     

  6. 屋根の形状と材質を考慮する

    シンプルな形状で勾配が小さい屋根の方が固定資産税は安くなります。また、屋根材もアスファルトシングルは安く、スレート→瓦→銅板と高くなっていきます。

     

  7. 外壁材を選ぶ

    ガルバリウム鋼板は安く、サイディング→漆喰→タイルと高くなります。ただし、タイルは耐久性に優れメンテナンス費用が少ないというメリットもあります。

     

  8. 窓やドアの面積を抑える

    外壁に占める窓やドアの面積は、多いより少ない方が固定資産税は安くなります。

     

  9. 外構に注意する

    カーポートは大丈夫ですが、側面が3面ある車庫やガレージは固定資産税の対象になります。一方、ウッドデッキは対象外です。

     

  10. 設備を考慮する

    ユニットバスやシステムキッチンは小さい方が、床暖房は設置面積が小さい方が固定資産税は安くなります。また、ホームエレベーターや床の間を設置すると固定資産税が高くなります。

     

これらの点を考慮することで、長期的に見た固定資産税の負担を軽減することができます。ただし、あまりにも固定資産税を気にしすぎると、本当に住みたい家からかけ離れてしまう可能性もあります。税金を抑えつつも、住み心地の良い家づくりを目指すことが大切です。

 

固定資産税の新築住宅特例措置

新築住宅には、固定資産税の負担を軽減するための特例措置が設けられています。これは、住宅の取得を促進するための政策的な措置です。

 

新築住宅に対する固定資産税の減額制度は、以下の要件を満たす場合に適用されます。

  1. 期間要件:令和8年(2026年)3月31日までに新築された住宅であること
  2. 床面積要件
    • 専用住宅の場合:50平方メートル以上280平方メートル以下
    • 一戸建て以外の貸家住宅の場合:40平方メートル以上280平方メートル以下
  3. 居住割合要件:店舗兼住宅などの併用住宅の場合、居住部分の割合が全体の床面積の2分の1以上であること

これらの要件を満たす新築住宅は、新築後一定期間、固定資産税が減額されます。減額される期間と割合は以下の通りです。

  • 一般の住宅:新築後3年度分、住宅部分120平方メートル相当分までの固定資産税が2分の1に減額
  • 3階建以上の中高層耐火住宅:新築後5年度分、住宅部分120平方メートル相当分までの固定資産税が2分の1に減額

さらに、長期優良住宅として認定された住宅については、より手厚い減税措置が適用されます。

  • 一般の長期優良住宅:新築後5年度分、住宅部分120平方メートル相当分までの固定資産税が2分の1に減額
  • 3階建以上の中高層耐火長期優良住宅:新築後7年度分、住宅部分120平方メートル相当分までの固定資産税が2分の1に減額

なお、長期優良住宅の減税措置を受けるためには、認定通知書の写しを添付した申告が必要です。一般の新築住宅の場合は、通常、申告は不要で、自治体が各種資料や家屋調査等で確認します。

 

固定資産税の経年変化と将来予測

固定資産税は建物の築年数が経過するにつれて、どのように変化していくのでしょうか。また、将来的な税負担をどのように予測すればよいのでしょうか。

 

建物の固定資産税は、経年劣化による価値の減少を反映して、年数の経過とともに減少していく傾向があります。これは「経年減点補正率」が年々小さくなるためです。

 

木造住宅の場合、一般的に築15〜35年で評価額が新築時の20%まで下がります。鉄骨造や鉄筋コンクリート造の場合は、より長い期間をかけて減少していきます。ただし、経年減点補正率には下限があり、最終的には20%で下げ止まります。つまり、いくら年数が経過しても、建物の評価額は再建築価格の20%以下にはならないということです。

 

また、3年ごとに行われる評価替えの際には、物価水準の変動も加味されます。建築費用が高騰している場合、「評点一点当たりの価額」が1.0を超えることもあり、経年減点補正率による減少が相殺されることもあります。ただし、評価替えによって評価額が前回よりも高くなる場合は、納税者の税負担を考慮して、前回の評価額に据え置かれることになっています。

 

将来の固定資産税を予測する際には、以下の点を考慮する必要があります。

  1. 建物の構造(木造、鉄骨造、鉄筋コンクリート造など)
  2. 現在の築年数
  3. 今後の物価変動の見通し
  4. 自治体の税率政策

特に、長期的な資金計画を立てる際には、固定資産税の将来的な変動を適切に見積もることが重要です。一般的には、新築時から5〜10年程度は比較的大きく減少し、その後はゆるやかに減少していくと考えられますが、物価上昇などの要因によって予想外の変動が生じる可能性もあります。

 

固定資産税と建築確認申請の関連性

固定資産税と建築確認申請は、一見すると直接的な関連性がないように思えますが、実は密接に関連しています。建築確認申請の内容が、後の固定資産税評価に大きく影響するのです。

 

建築確認申請は、建物を建築する際に、建築基準法に適合しているかを確認するための手続きです。この申請書には、建物の構造、面積、用途、設備などの詳細な情報が記載されています。市町村の固定資産税担当部署は、この建築確認申請の情報を基に、新築された建物の評価を行うことがあります。

 

特に重要なのは、建築確認申請に記載された建物の面積や構造です。これらの情報は、固定資産税評価額を算出する際の基礎データとなります。例えば、建物の延床面積が大きいほど固定資産税も高くなりますし、木造よりも鉄筋コンクリート造の方が耐用年数が長いため、経年減点補正率の減少ペースも異なります。

 

また、建築確認申請に記載された建物の用途(専用住宅、併用住宅、店舗など)によって、固定資産税の特例措置の適用可否が決まることもあります。例えば、住宅用地の特例や新築住宅の減額措置は、建物の用途や居住割合によって適用条件が異なります。

 

さらに、建築確認申請の内容と実際の建物に相違がある場合、後に固定資産税の追徴や修正が行われる可能性があります。例えば、申請では住宅として申請したが、実際には事務所として使用している場合、住宅用地の特例が適用されなくなる可能性があります。

 

建築確認申請の際には、将来の固定資産税負担も考慮して、正確な情報を記載することが重要です。また、建築後に用途変更や増改築を行う場合も、固定資産税への影響を事前に確認しておくことをお勧めします。

 

固定資産税の建築中特例と建て替え時の注意点

建築中の土地や建て替え中の住宅に関する固定資産税には、いくつかの特例や注意点があります。これらを理解しておくことで、建築期間中の税負担を適切に管理することができます。

 

まず、建築中の土地に関する固定資産税についてです。原則として、1月1日時点で建築中の土地は、住宅用地の特例が適用されず、更地の状態で固定資産税がかかります。つまり、住宅が完成していない段階では、土地に対する税負担が大きくなる可能性があります。

 

例えば、200平方メートルの土地に住宅を建築中で、1月1日時点ではまだ完成していない場合、その年度は住宅用地の特例(小規模住宅用地の場合は評価額の1/6、一般住宅用地の場合は1/3)が適用されず、更地としての評価額に基づいて課税されます。

 

次に、住宅の建て替え時の固定資産税についてです。住宅を建て替える場合、一時的に住宅がなくなるため、住宅用地の特例が適用されなくなる可能性があります。ただし、以下の条件を満たす場合は、建て替え中も住宅用地の特例が継続して適用されます。

  1. 建て替え前の住宅が取り壊された土地であること
  2. 住宅の所有者が同一であること
  3. 取り壊し後の年の1月1日を含む期間内に新たな住宅の建設工事に着手すること
  4. 新たな住宅が取り壊し後3年以内に完成すること
  5. 新たな住宅の床面積が50平方メートル以上であること

これらの条件を満たさない場合、建て替え期間中は住宅用地の特例が適用されず、固定資産税が大幅に増加する可能性があります。特に、建て替えに時間がかかる場合や、所有者が変わる場合には注意が必要です。

 

また、建て替え時には、旧建物の滅失登記と新建物の表示登記が必要になります。これらの手続きが適切に行われないと、二重課税や課税漏れが生じる可能性があります。

 

建築中や建て替え中の固定資産税については、事前に自治体の税務課に相談することをお勧めします。地域によって取り扱いが異なる場合もあるため、正確な情報を得ることが重要です。

 

以上のように、固定資産税は建築の計画段階から考慮すべき重要な要素です。建物の構造や間取り、設備の選択によって将来の税負担が大きく変わってくるため、建築前にしっかりと理解しておくことが大切です。また、新築住宅の特例措置や建築中・建て替え中の特例についても把握しておくことで、効率的な資金計画を立てることができます。

 

固定資産税は一度決まると毎年支払い続けるものですので、長期的な視点で考えることが重要です。ただし、税金だけを考慮して本来の住みやすさや機能性を犠牲にするのは本末転倒です。税負担を抑えつつも、自分たちの理想の住まいを実現するバランスの取れた計画を心がけましょう。