林野庁農林水産省の組織と役割を不動産従事者が理解すべき理由

林野庁農林水産省の組織と役割を不動産従事者が理解すべき理由

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林野庁と農林水産省の関係

林野庁と農林水産省の組織概要
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林野庁は農林水産省の外局

農林水産省設置法に基づき設置され、森林・林業に関する事務全般を担当する専門機関として機能しています

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3つの内部部局で構成

林政部、森林整備部、国有林野部の3部体制で、政策立案から現場管理まで一貫した森林行政を実施しています

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全国7つの森林管理局を配置

北海道から九州まで7つの森林管理局と98の森林管理署を設置し、地域の実情に合わせた管理経営を実施しています

林野庁の設置根拠と農林水産省内での位置づけ

 

 

 

林野庁は農林水産省設置法に基づいて設置されている外局であり、農林水産省の2つの外局(林野庁、水産庁)のうちの一つです。1949年に農林省林野局から改組され、現在の林野庁という名称になりました。1978年7月5日には農林省が農林水産省となり、林野庁は引き続き農林水産省の外局として位置づけられています。
参考)https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9E%97%E9%87%8E%E5%BA%81

林野庁の任務は「森林の保続培養、林産物の安定供給の確保、林業の発展、林業者の福祉の増進及び国有林野事業の適切な運営を図ること」と定められています。この任務を果たすため、森林の整備保全、民有林への指導監督・助成、国有林野事業など森林・林業に関する事務全般を扱っています。
参考)https://www.weblio.jp/content/%E6%9E%97%E9%87%8E%E5%BA%81

不動産従事者にとって重要なのは、林野庁が国土面積の約70%を占める2,500万ヘクタールの森林を管轄している点です。これらの森林は土地利用や開発に関わる法的規制の対象となるため、不動産取引や開発計画において林野庁の政策や規制を理解することが不可欠です。
参考)https://www.rinya.maff.go.jp/j/kouhou/jigyou_gaiyou.html

林野庁本庁の組織構成と各部の担当業務

林野庁の本庁組織は3つの部で構成されています。
参考)https://www.rinya.maff.go.jp/j/rinsei/singikai/attach/pdf/130308si-4.pdf

林政部は、庁内の総合調整、広報、人事労務管理、法令、会計など官房機能を担います。林政課は庁内取りまとめを行い、企画課は白書や税制・金融を担当、経営課は林業経営や森林組合、きのこなどの特用林産物を担当し、木材産業課は木材の生産・加工を、木材利用課は木材利用の推進と貿易を担当しています。
参考)https://www.maff.go.jp/j/org/outline/dial/rinya_ka.html

森林整備部は、森林資源の全国計画、民有林、森林の環境保全などに関する事務を掌ります。計画課は森林計画や公共事業の取りまとめなど全般を担当し、森林利用課は民有林野の利用や都市と山村の交流、森林環境保全・国土緑化を所管しています。整備課は造林や林道整備を、治山課は治山事業を担当し、研究指導課は研究普及や森林保全などを担当します。​
国有林野部は、国有林野事業を掌る部であり、国有林野事業債務管理特別会計と国有林野事業職員の人事労務管理も所管しています。管理課、経営企画課、業務課の3課で構成され、1999年3月1日に管理部と業務部を統合して設置されました。​
不動産従事者は、森林や林地に関わる取引において、これらの各部署がどのような権限と役割を持つかを理解しておく必要があります。特に民有林の指導監督を行う森林整備部や、国有林野の管理を行う国有林野部の業務内容は、土地の利用制限や開発許可に直接影響します。

 

林野庁の地方組織と全国ネットワーク体制

林野庁は地方支分部局として全国に7つの森林管理局を配置しています。森林管理局は北海道、東北、関東、中部、近畿中国、四国、九州の各管轄区域ごとに置かれ、その下部組織として98の森林管理署が各地に点在しています。
参考)https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A3%AE%E6%9E%97%E7%AE%A1%E7%90%86%E5%B1%80

森林管理局は、1999年(平成11年)に旧営林局を改組した組織であり、国有林野の管理及び処分に関する事項を調査審議することを目的とする国有林野管理審議会が置かれています。下部機関として森林管理署(旧営林署)があり、さらに1,256の森林事務所が設置されています。
参考)https://www.soumu.go.jp/main_content/000466344.pdf

森林管理局の所掌事務は、管理経営計画の樹立その他の国有林野の管理経営を行うこと、民有林野の造林及び森林の経営の指導並びに森林治水事業の実施に関すること、林野の保全に係る地すべり防止に関する事業の実施に関することなどです。​
不動産従事者が森林や山林に関わる案件を扱う際には、該当する地域を管轄する森林管理局や森林管理署との連携が必要になることがあります。特に国有林に隣接する民有林の取引や、保安林指定地域での開発案件では、これらの地方組織との協議が不可欠です。

 

全国の森林管理局の管轄区域と連絡先を確認できる林野庁公式ページ

林野庁の歴史的変遷と農林水産省への統合経緯

林野庁の前身は農林省山林局です。太平洋戦争後まもなく宮内省帝室林野局と内務省北海道庁の一部を吸収統合し、外局に昇格するとともに林野局に改称しました。1949年5月31日施行の農林省設置法により、それまであった農林省林野局を改組して林野庁として設立されました。
参考)https://www.jacar.go.jp/glossary/term1/0110-0010-0050-0090-0130.html

当初は、林政部、指導部、業務部の三部が置かれていました。林政部では林業行政に関する企画、国有林野の管理および処分、木材その他の林産物の生産・流通・消費の調整、森林組合の指導監督などを担いました。指導部では国有林野および民有林野の総合立地計画および経営計画、造林・営林・治水、保安林に関すること、林業に関する試験研究などを担当しました。業務部は国有林野の造林・営林・治水、産物および製品、薪炭の生産・流通調整などを担っていました。​
2001年には森林総合研究所と林木育種センターを独立行政法人として分離しました。また、国有林野事業は平成25年度から一般会計で実施する事業に移行し、公益重視の管理経営を一層推進する体制となりました。
参考)https://www.rinya.maff.go.jp/j/kokuyu_rinya/welcome/what.html

不動産従事者にとって、この歴史的変遷を理解することは、現在の林野庁の政策方針や組織文化を把握する上で役立ちます。特に国有林野事業の一般会計化は、国有林野を「国民の森林(もり)」として位置づけ直す大きな転換点となりました。​

林野庁と不動産業務の関連性:知られていない土地規制の実態

林野庁の業務は不動産取引に多大な影響を及ぼしますが、その関連性はあまり知られていません。特に重要なのが保安林制度です。保安林は水源の涵養、土砂災害の防止、生活環境の保全などの公益的機能を発揮させるために指定された森林で、立木の伐採や土地の形質変更には都道府県知事または農林水産大臣の許可が必要です。
参考)https://www.mlit.go.jp/tetudo/content/001316233.pdf

不動産開発において保安林に指定された土地が含まれる場合、開発計画が大幅に制限されるか、場合によっては不可能になることがあります。保安林の解除には厳格な要件があり、代替施設の設置や他の土地での保安林指定が求められることが一般的です。​
また、林野庁が管理する国有林野に隣接する民有林の取引では、国有林野との境界確定が重要な課題となります。林野庁は民有林との連携による森林整備や木材の安定供給等の事業を推進しており、国有林と民有林が連携した「森林共同施業団地」を全国167か所に設定しています。このような団地内の民有林を取引する際には、林野庁との協議が必要になる場合があります。
参考)https://www.rinya.maff.go.jp/j/kokuyu_rinya/kokumin_mori/ryuiki/index.html

さらに、森林法に基づく林地開発許可制度も不動産業務に関わります。1ヘクタールを超える森林の開発には都道府県知事の許可が必要であり、災害の防止、水害の防止、水の確保、環境の保全の観点から審査が行われます。

 

不動産従事者は、取り扱う土地が森林に該当するか、保安林の指定があるか、林地開発許可が必要かを事前に確認し、必要に応じて林野庁や都道府県の林務担当部署に相談することが重要です。これらの規制を見落とすと、契約後に開発が不可能になるなど、深刻な問題につながる可能性があります。

 

森林整備事業の詳細を確認できる林野庁公式ページ

 

 

 

 


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