ローレット図面指示JIS規格と製図記号の書き方

ローレット図面指示JIS規格と製図記号の書き方

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ローレット図面指示のJIS規格

この記事でわかること
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JIS規格に基づく表記方法

ローレット目の種類とモジュールの正しい図面指示を理解できます

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図面への具体的な記載方法

ハッチングや引き出し線を使った実践的な描き方を習得できます

⚙️
加工に適した寸法設計

ブランク直径の計算やピッチ設定など設計上の注意点がわかります

ローレット目のJIS B 0951規格による種類と寸法

 

ローレットの表記はJIS B 0951「ローレット目」で規定されており、模様の種類は平目とアヤ目の2種類に分類されます。平目は各線が平行に並ぶ模様で、アヤ目は各線が交差する網目状の模様となっています。JIS規格では、ローレット目の溝の形状を加工物の直径が無限大となったと仮定した場合の溝直角断面で規定しており、この形状定義に基づいて製図する必要があります。
参考)https://jp.meviy.misumi-ec.com/info/ja/howto/marketplace/50680/

ローレット目の寸法はモジュール(m)で表記され、JIS B 0951では以下の3種類が標準化されています:
参考)https://kikakurui.com/b0/B0951-1962-01.html

モジュール m ピッチ t r h
0.2 0.628 0.06 0.132
0.3 0.942 0.09 0.198
0.5 1.571 0.16 0.326

モジュールはピッチ円から頂点までの距離を表し、外周ピッチに換算するにはこの数値に3.14(円周率)をかけます。例えばm=0.3の場合、ピッチP=0.3×3.14=0.942mmとなります。
参考)https://yamada-mt.co.jp/tool/knurling/

ローレット加工部の図面への描き方と注記方法

ローレット加工を図面で指示する際は、JIS B 0001「機械製図」に基づき、加工部分の輪郭に斜線や網目を描く簡略図法で表現することが認められています。実際のピッチや山形を正確に作図する必要はなく、見やすく区別できるように簡略に描けば十分とされています。ローレット加工した部分の特徴を外形の一部分にその模様を描いて表示することができ、この場合には引き出し線を使用してローレット目の種類とモジュールを指示するのが一般的です。
参考)https://moriumm.hatenablog.com/entry/2020/07/13/144100

図面には「平目 m0.5」や「アヤ目 m0.3」のように種類とモジュール値で目の粗さを指示し、これに加工範囲を加えて「ローレット(アヤ目)m0.3 全周」や「ローレット(平目)m0.5 幅20mm」のように記載します。ローレット加工は図示しただけでは加工できないため、必ず模様の種類とモジュールを明記する必要があります。
参考)https://minatoseisakusho.com/55/

不動産設計においても機械設備の図面を扱う際には、こうした標準化された記号と表記方法を正確に理解しておくことで、製造業者とのコミュニケーションが円滑になります。​
ローレット加工の図面指示と設計のポイント - MISUMI
ローレット加工における図面指示の実例と詳細な表記方法が解説されており、実務に即した図面作成の参考になります。

 

ローレット図面でのハッチングとCAD作図テクニック

CADソフトでローレット加工部分を表現する際は、ハッチング機能を活用することで視覚的にわかりやすい図面を作成できます。具体的には、ローレット加工面をスケッチで囲み、「領域のハッチング/フィル」を選択してハッチングパターンを適用します。アヤ目の場合は「ANSI37(Lead Zinc Mg)」パターンが近く、平目の場合は「ANSI31(Iron BrickStone)」を角度を変更してハッチングすることで実際の模様に近い表現が可能です。
参考)https://www.lulucad.jp/2018/03/16/autocad_hatch/

ハッチングする事により、作図されたオブジェクトの識別やデザインができ、分かりやすい図面を作成できます。ただし、ローレット加工面の全体をハッチングすると3Dモデルの処理が重くなるため、注記とハッチングを組み合わせた簡略表示が実務では推奨されます。AutoCADやSOLIDWORKSなどの主要CADソフトでは、ハッチング機能によって境界オブジェクトに設定したパターンを塗り潰すことができ、建築図面や機械図面において広く活用されています。
参考)https://smart-factory-kenkyujo.com/autocad-hatching/

ローレット加工に適したブランク直径の計算方法

ローレット加工を成功させるためには、加工前のブランク直径を適切に設定することが極めて重要です。ワークの円周がピッチの整数倍になるように直径を設定すると、継ぎ目のない均一で美しい仕上がりが得られます。平目の場合、ブランク直径Dは「D=n×m」(n:整数、m:モジュール)で計算されます。
参考)https://jisshu.mech.saitama-u.ac.jp/jisshu/pdf/roulette.pdf

アヤ目の場合は「D=n×m÷cos30°」という計算式を用います。cos30°は約0.866であるため、アヤ目のブランク直径は平目よりもやや大きな値になります。例えばモジュール0.5の場合、m÷cos30°=0.577、モジュール0.3では0.346、モジュール0.2では0.230となります。
参考)https://www.oudoubou.com/common/images/laurette.pdf

転造ローレット加工では、刃物を押し付けた分だけ金属面に膨らみが出るため、ローレットのピッチにもよりますが目的径のマイナス0.3mm程度に仕上げておく必要があります。一方、切削ローレット加工では仕上げ面の膨らみがあまりないため、ブランク直径の設定が転造とは異なります。こうした加工方法による違いを理解し、図面に明記することで製造側との認識のズレを防ぐことができます。
参考)https://shokunin-tenshoku.com/1212

ローレット加工不良を防ぐ図面指示のポイント

ローレット加工がうまく仕上がらない場合の主な原因として、ワークの円周がピッチの整数倍でないことが挙げられます。ローレット加工が二重になる不具合は、ワークの直径を調整し、円周を必ずピッチの整数倍にすることで解決できます。このため図面段階で、使用するローレットピッチに合わせた直径寸法を指定しておくことが重要です。
参考)https://seibushoko.com/solution/253/

切削方式のローレットでは、工具の「逃げ」として模様の端に溝を設けると加工しやすくなります。また、ローレット加工部の開始位置や終了位置を図面に明記することで、加工業者が適切な段取りを行えるようになります。特に、加工方法(転造または切削)によって仕上がりや寸法が変化するため、可能であれば希望の加工方法も記載すると良いでしょう。​
不動産や建設業界で機械設備を扱う際にも、こうした加工不良の原因を理解した図面指示を行うことで、手戻りやトラブルを未然に防ぐことができます。設計意図を正確に製造側に伝えるには、「模様の種類・ピッチ・加工範囲」の3点を具体的に注記し、誰が見てもわかるようにすることが不可欠です。不明点があれば事前に加工業者と相談し、認識をすり合わせておくことで品質の高い製品を実現できます。​