

赤外線調査に関する「国家資格」は、現時点では1つも存在しません。
赤外線調査という技術は、建築基準法に基づく定期報告制度の中で正式に認められた調査手法ですが、驚くことに「赤外線調査専門の国家資格」は2026年現在も存在しません。
国土交通省の定期報告制度では、外壁調査の結果を報告書として特定行政庁に提出できる資格者を、「一級建築士」「二級建築士」「特定建築物調査員」の3種類に限定しています。つまり、赤外線カメラを操作してデータを取得する役割(外壁調査実施者)と、そのデータをもとに定期報告書を作成・提出できる役割(特定建築物調査員等)は、制度上で分けられているのです。
この仕組みがあるため、赤外線技術の専門資格はすべて「民間資格」として発展してきました。建築業界での発注案件や入札仕様書でよく求められる資格はあるものの、法律上は「持っていなければ調査できない」という強制力はありません。ただし、実際の業務では資格なしでの受注はほぼ不可能に近い状況です。
つまり、「法的義務のある資格ではないが、現場で通用するためには必須」という二重構造になっています。この点を押さえておくと、資格取得の優先順位を正しく判断できます。
参考:赤外線外壁調査の法的根拠となる国土交通省の告示改正とガイドラインについてはこちらで確認できます。
定期報告制度における外壁のタイル等の調査について – 国土交通省
赤外線調査に関連する民間資格は、大きく3系統に分類できます。それぞれ発行団体・対象・難易度が異なるため、目的に応じて選ぶことが重要です。
🔷 赤外線建物診断技能師(発行:一般財団法人職業技能振興会)
厚生労働省認可団体が発行する、業界での認知度がもっとも高い資格です。受験資格は一切不要で、建築業の経験がない方でも受験できます。試験は選択式・記述式の全30問で試験時間は120分、合格ラインは7割以上の得点です。受験料は13,000円(税込)で、合格後は2年ごとに6,000円(税込)の更新が必要です。
研修受講者の合格率は約90%と高く、難易度は「やや易しい」レベルとされています。入札案件の仕様書でも指定されるケースが多く、まず取得すべき資格の筆頭といえます。
🔷 JAIRA赤外線サーモグラファー(発行:一般社団法人日本赤外線劣化診断技術普及協会)
ステップ1とステップ2の2段階構成になっています。ステップ2を受講するには、ステップ1修了に加えて赤外線調査の実務経験80時間以上が必要です。JAIRA独自の「JAIRA法」と呼ばれる体系化された調査手順の運用が許諾されるため、調査の再現性・品質担保に優れています。発注者側から「JAIRA法による調査」を指定されるケースでは、この資格が必要になります。
🔷 ITC赤外線サーモグラファー(ISO18436-7準拠)
国際標準規格ISO18436-7に準拠した国際的な資格です。レベル1とレベル2があり、採点は海外機関(スウェーデン)で行われます。公共入札よりも、グローバル展開している企業や高い技術水準を求める民間案件で評価されることが多い資格です。
| 資格名 | 発行団体 | 受験資格 | 受験料 | 更新 |
|---|---|---|---|---|
| 赤外線建物診断技能師 | 職業技能振興会 | なし | 13,000円 | 2年ごと6,000円 |
| JAIRA赤外線サーモグラファー | JAIRA | ステップ2は実務80h必要 | 別途確認 | あり |
| ITC赤外線サーモグラファー | ISO準拠機関 | レベルによる | 別途確認 | あり |
どれか1つで十分という判断は禁物です。業務の種類(入札案件・民間案件・ドローン調査)によって求められる資格が異なるため、自社の受注形態に合わせて組み合わせることが現実的です。
参考:各資格の詳細と入札条件での活用事例についてはこちらが参考になります。
ドローン赤外線調査に免許は必要?安全・高精度のために必要な資格を解説 – ドローンメイト
2022年4月1日、建築基準法施行規則の改正により、ドローン(無人航空機)を用いた赤外線外壁調査が、建築基準法第12条に基づく定期報告の正式な調査手法として明文化されました。いいことですね。
それ以前は「赤外線調査で定期報告に代替できる」という実態はあったものの、ドローンを使った場合の取り扱いは法的にグレーな部分がありました。改正後は国土交通省がガイドラインを整備し、調査体制・調査実施者・操縦者の役割が明確に定義されています。
この改正で注目すべきポイントが2つあります。
まず1点目として、赤外線調査実施者には特定建築物調査員等との連携が必須とされた点です。ドローン操縦者や赤外線解析担当者は、単独で完結する業務ではなく、必ず資格保有者(一級・二級建築士または特定建築物調査員)と組んで動く体制が求められます。つまり、民間資格しか持っていない人材であっても、チームの一員として正式に制度の中に位置づけられたわけです。
2点目として、コスト優位性が一気に可視化された点があります。日本管財株式会社の資料では、ドローン赤外線外壁調査は打診調査と比較してコストが約4分の1、調査期間が約7分の1になるケースも示されています。3,000㎡のマンションを想定した試算では、ゴンドラ打診調査が総額100万円超になる一方、ドローン赤外線調査では大幅に圧縮できるとされています。コストが大きく違いますね。
この背景から、赤外線系資格の保有者への需要は今後さらに増加すると予測されます。定期報告の対象となる特定建築物は全国に相当数あり、10年に1度の全面打診または代替調査の義務が発生し続けるためです。
参考:2022年の告示改正の内容とドローン外壁調査の法的位置づけについてはこちらが詳しいです。
定期報告制度における外壁のタイル等の調査について – 国土交通省(官公庁ページ)
赤外線建物診断技能師を取得した後に、「これで定期報告まで対応できる」と思い込んでしまうのは、業務上の大きな落とし穴です。定期報告が必要です。
建築基準法第12条の定期報告制度では、報告書の作成・提出ができる有資格者は次の3種類に限られています。
- 一級建築士
- 二級建築士
- 特定建築物調査員(国土交通大臣認定の国家資格)
特定建築物調査員は、一定の実務経験と所定の講習修了が必要な国家資格です。建築士資格を持っていない場合でも、この講習を修了することで定期報告業務が可能になります。ただし、講習の受講には実務経験などの要件があり、誰でも即座に取得できる性質のものではありません。
ここで実務上の課題が生まれます。建設会社や外壁調査業者が「赤外線調査の技術を内製化したい」と考えた場合、技術担当者に赤外線建物診断技能師を取得させるだけでは足りません。報告書を最終的にまとめるために、社内に建築士または特定建築物調査員がいるか、あるいは建築士事務所との連携体制が必要になります。
一方で、既に建築士資格を持っている人が赤外線建物診断技能師も取得すると、調査から報告書作成まで一人でカバーできるという強みが生まれます。これは競合他社との差別化にもなり、受注の幅を広げるうえで非常に有効です。これは使えそうです。
報告書を誰が出すのかを最初に確認することが、資格取得計画の出発点です。自社の業務フローを整理してから、必要な資格の組み合わせを決めるのが条件です。
参考:定期報告に必要な資格者の詳細と12条点検の概要については下記が参考になります。
12条点検に必要な資格とは?建物管理者の役割も解説 – ドローンフロンティア
赤外線建物診断技能師の取得に力を入れる一方で、「ドローンを使った赤外線調査にはドローン国家資格も必要かどうか」を見落としている技術者は少なくありません。意外ですね。
2022年12月に「無人航空機操縦者技能証明制度」が開始されました。現在のところ、この国家資格がなければドローンを飛ばせないという法的義務は生じていません。ただし、外壁調査では建物の近傍3m以内を飛行させるケースもあり、航空法上の「特定飛行」に該当する状況が発生します。特定飛行を行うには、国土交通省への飛行許可申請が原則として必要で、国家資格保有者であれば一部の許可手続きが簡略化されるメリットがあります。
また、発注者(設計事務所・管理会社・マンション管理組合等)の立場からすると、国家資格保有者が操縦する業者への信頼度は大きく違います。入札仕様書に「無人航空機操縦者技能証明の一等または二等保有者」を条件として明記するケースも増えており、資格なしでは入札対象から外れるリスクが生じます。
ドローンスクールでの国家資格取得費用は、当初と比較してかなり下がっており、卒業後も野外練習場が利用できるスクールを選ぶと実践力が身につきやすいです。一発試験は費用こそ安いものの、専用機体での練習ができないため難易度が高く、合格率は低い傾向があります。コスト面だけで判断せず、確実に取得できる方法を選ぶことが重要です。
赤外線調査の技術資格とドローン国家資格を組み合わせた人材は、現在の市場でまだ希少です。この2つを持った技術者は、業者・個人を問わず受注競争で有利になります。まず赤外線建物診断技能師を取得し、並行してドローン国家資格(二等以上)を目指すというルートが、コストパフォーマンスの観点からも現実的な戦略です。
参考:ドローン国家資格の難易度と赤外線調査との組み合わせ事例については下記をご確認ください。
ドローンを使った外壁調査に資格は必要?資格の種類や取得メリットを解説 – Takaoプランニング

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