
切削油は金属加工において冷却・潤滑・洗浄の三つの主要機能を担います 。摩擦の低減では、工具とワークピースの間に保護膜を形成し、摩擦と熱の発生を大幅に減少させます 。特に建築機械では、600~1000℃もの高温が発生する切削部で発火しないよう、比較的粘度の低い液体を大量に投下する必要があります 。
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冷却作用は切削加工中に発生する大量の熱を効果的に散逸させ、過熱によるワークピースの変形を防ぎ、工具を高温による損傷から保護します 。建築業では、コンクリートカッター・鉄筋カッター等の作業で特に重要となる機能です。
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洗浄機能では、加工中に発生する切りくずや金属粉を流し去り、加工面や工具に付着しないようにします 。これにより加工の安定性が向上し、不良の発生を抑制できます。建設現場での連続作動において、この洗浄効果は作業効率を大幅に改善します。
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潤滑油の主要な役割は、金属同士の接触面に挟まって互いの金属を保護することです 。簡単に流れ出てしまうような低粘度では困るため、そこそこ粘度が高い必要があります。建築機械では特に、油圧装置や減速機で重要な働きをします 。
参考)https://www.jcmanet.or.jp/kikaibukai/yushi/e42.html
粘度と温度の関係において、潤滑油は温められると粘度が低下し、冷えると粘度が上昇する性質があります 。この特性を表す粘度指数が高いオイルほど、温度変化に対して粘度変化が小さく、油温上昇時の漏れを抑制できます 。
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建設機械用潤滑油では、エンジンオイル、減速機用潤滑油、油圧作動油がそれぞれ異なる性能要求を満たします 。エンジンオイルは高温下使用による劣化に加え、硫黄酸化物やススの混入により清浄性が低下するため、定期的な交換が推奨されています 。
切削油は大きく油性切削油(不水溶性)と水溶性切削油の2系統に分類されます 。油性切削油は鉱物油や合成油を主成分とし、優れた潤滑性と防錆性を持ちますが、冷却性は低めです 。建築現場でのねじ切り加工、タッピング、重切削作業に適用されます。
参考)https://hokutohgiken.co.jp/%E2%97%86%E5%88%87%E5%89%8A%E6%B2%B9%E3%81%A8%E3%81%AF%E4%BD%95%E3%81%8B%EF%BC%9F%E5%BD%B9%E5%89%B2%E3%81%A8%E7%A8%AE%E9%A1%9E%E3%82%92%E8%A7%A3%E8%AA%AC/
水溶性切削油は水と混合して使用し、冷却効果が高いのが特徴です 。乳化型(ミルク状)、半合成型(乳化度中間)、合成型(水溶液タイプで無油分)の主要タイプがあります。アルミやステンレスの高速加工、フライス・旋盤などの連続加工で威力を発揮します 。
被削材別の選定では、鋼材には極圧添加剤を含むエマルションタイプ、鋳鉄には錆止め性に優れた油剤、アルミ・アルミ合金には変色抑制のある油剤が推奨されます 。建築業で多用される鉄鋼材料では、炭素量、添加元素、熱処理によって大きく変わる材質特性を理解した選定が重要です 。
参考)1-4.切削油剤の選び方
潤滑油選定では、使用目的、価格、メーカー、粘度の4つのポイントが重要です 。高温・高負荷が予想される建築機械では、流れにくく油膜をしっかり形成する高粘度のオイルが向いています 。併せて、スラッジ問題を軽減する性能も必要となります。
参考)工業用潤滑油の種類・粘度・選び方を徹底解説!最適な潤滑油を見…
建設機械用では、外気温度範囲によってエンジンオイルの使い分けが行われます 。SAE 40は外気温度30℃以上、SAE 30は-5℃~40℃、SAE 10W-30は-30℃~30℃の範囲で使用されます。減速機用潤滑油では、ISO VG 150~220、自動車用はSAE 80W~140が一般的です 。
油圧作動油の場合、動力の伝達が最も重要な役割となります 。機械に伝える力の大きさをコントロールするため、油にかける圧力の強さを調整して機械に伝える動力をコントロールします 。建設機械では、この動力伝達機能によって各アクチュエータに運動エネルギーを伝達しています 。
参考)油圧作動油とは?おもな種類や粘度の違いを解説
切削油の適切な温度範囲は30℃~40℃で、この範囲を維持することで極圧添加剤の化学的特性が適切な状態で機能します 。温度がこの範囲を超えると、添加剤の効果が低下し、摩耗や熱ダメージのリスクが高まります 。
参考)切削油の適切な温度管理の重要性
BTA加工のような過酷な条件では、タンク内の切削油全体が50℃を超える場合、劣化が進み極圧剤だけでなく油膜を保持する効果のある油性剤も劣化・分解します 。10℃高いと劣化速度は倍になるため、オイルクーラーの設置による油温管理が重要です 。
参考)BTA加工における切削油の温度管理について
水溶性切削油では、温度上昇により蒸発しやすくなり、30~40℃ではバクテリアが繁殖しやすい温度のため腐食が著しく進行します 。蒸発ロスの低減と腐食の抑制のため、自動希釈装置の導入による精密な濃度・温度管理が効果的です 。
参考)1-3.切削油剤