湿り空気線図の見方と結露と露点と相対湿度

湿り空気線図の見方と結露と露点と相対湿度

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湿り空気線図の見方と結露

湿り空気線図の見方と結露:現場で迷わない要点
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状態点→露点→結露の順で読む

乾球温度と相対湿度(または湿球温度)で状態点を決め、水平移動で露点を読めば、結露の危険温度が一発で分かります。

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建築は「表面温度」とセット

線図で出すのは空気側の露点温度、結露は部材側の表面温度で決まります。両方を同じ土俵で比較するのがコツです。

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壁体内結露は別の落とし穴

表面結露だけ見て安心すると危険です。温度勾配・水蒸気移動・層構成で壁体内結露は起きるため、判断の手順を分けます。

湿り空気線図の見方:乾球温度と相対湿度で状態点

建築の結露検討で湿り空気線図を使う理由は、空気の状態(温度と湿度)を「図上の一点=状態点」として置けるからです。湿り空気線図は、乾球温度・相対湿度・絶対湿度・露点温度などを同時に読み取れるように作られており、空気の状態が2つ決まれば他の状態値を線図上で求められます。これは「現場で温湿度計の数値を、結露の危険度に変換する道具」と捉えると使いどころが明確になります。
また、湿り空気線図では乾球温度が横軸方向の基準になっており、相対湿度は曲線群(例:40%RH、60%RHなど)として描かれます。したがって「乾球温度○℃」の縦方向の線と「相対湿度○%」の曲線が交わる点が、今いる空気の状態点です。ここまでが第一段階で、ここを間違えると露点も結露判断も全部ずれます。
実務のコツとして、相対湿度は季節・生活・作業内容で大きく振れます。冬の住宅なら加湿・室内干し・開放式暖房などで相対湿度が上がりやすく、同じ室温でも露点が上がる方向に動きます。YKK APの技術資料でも、温度と湿度の関係から露点を湿り空気線図で求め、露点以下で結露が発生し始めることを説明しています。つまり「室温だけ見て安全」は成立しない、というのが線図の現場的な価値です。


参考)結露防止性

参考:結露の種類(表面結露・壁体内結露)や、露点を湿り空気線図で求める基本がまとまっています。


YKK AP 技術資料:結露防止性(露点と湿り空気線図)

湿り空気線図の見方:露点温度から結露の境界

結露の境界を決めるキーワードは露点温度です。露点とは「その空気を冷やしていったとき、相対湿度100%(飽和)に達する温度」で、そこから下がると水蒸気が液水として析出し始めます。YKK APの説明では、例えば温度20°C・相対湿度60%の空気を冷却すると飽和に達し、露点は約12°Cで、これ以下の温度になると結露が発生し始めるとされています。つまり露点は「結露開始ライン」であり、現場では“露点より低い面があるか”を探す作業になります。
湿り空気線図で露点を読む手順はシンプルです。状態点を取ったら、そこから乾球温度軸に平行に左へ移動(=温度だけ下げ、含まれる水蒸気量は同じとみなす)し、相対湿度100%RHの曲線(飽和線)に当たる点を探します。その交点の乾球温度が露点温度です。第一化学薬品の解説でも、状態点から左へ移動して100%RH線と交差した点の乾球温度が露点になる、と具体例付きで示されています。


参考)No.5【湿り空気線図】の見方について|大津で新築一戸建てを…

ここで重要なのは、湿り空気線図で出す露点は「空気側の値」だという点です。実際に結露するのは窓・サッシ・壁の表面で、そこに存在する表面温度が露点以下になったときに結露が始まります。したがって、湿り空気線図で露点を出したら、次は赤外線温度計や表面温度推定(断熱・熱橋・対流条件)と組み合わせて、「露点>表面温度」になっていないかを確認するのが建築の手順になります。

湿り空気線図の見方:絶対湿度と相対湿度の落とし穴

結露トラブルの説明で混乱を招きやすいのが、相対湿度と絶対湿度(混合比)の取り違えです。YKK APの資料では、絶対湿度は「乾燥空気1kg当たりに含まれる水蒸気の重量」、相対湿度は「その温度における飽和水蒸気量に対する比率」と整理されています。つまり相対湿度は温度依存で“見かけが変わる指標”、絶対湿度は水分量そのものに近い指標です。
現場で起きがちな落とし穴は、「相対湿度が下がった=乾いた」と早合点するケースです。例えば暖房で室温を上げると、空気が保持できる水蒸気量が増えるので、同じ水分量でも相対湿度は下がります。しかし絶対湿度が下がったわけではないため、窓際など局所的に温度が落ちる場所では露点到達が起き得ます。結露の評価は、部屋全体の相対湿度だけでなく、冷える面の温度と露点の関係で判断する必要があります。

逆に「除湿で相対湿度を下げる」場合は、空気中の水蒸気量(絶対湿度)を実際に減らす方向に働きます。だからこそ、結露防止策としては、室温を上げる・表面温度を上げる・湿度を下げる、の3方向があるとYKK APは整理しています。湿り空気線図は、このうち「湿度を下げる」を量として把握するのに相性が良く、状態点がどちらに移動するか(左?下?斜め?)を頭の中で描けるようになると、説明の説得力が一段上がります。

湿り空気線図の見方:表面結露と壁体内結露の判断

建築実務では「結露=窓が濡れる」だけではなく、壁体内結露まで視野に入れないと危険です。YKK APは結露を「表面結露」と「壁体内結露」に分け、結露がカビや仕上げの汚染、人体や構造体への悪影響につながる点も含めて説明しています。ここが重要で、表面結露は見えるから対処されやすい一方、壁体内結露は気づきにくく、性能低下や腐朽につながりやすい“静かな事故”になりがちです。
湿り空気線図が直接強いのは、表面結露の一次判定です。室内の温湿度から露点を出し、窓・サッシ・入隅などの表面温度が露点を下回るかを見れば、結露の起点を合理的に絞れます。実際、YKK APの資料でも露点を線図で求め、飽和温度以下にならないようにする考え方を示し、さらにカーテン等が対流を妨げて表面温度を下げ結露を促進する場合がある、と注意喚起しています。つまり「断熱を上げたのに結露が増えた」ように見える現象も、空気の流れが止まって局所表面温度が下がる、という理屈で説明可能になります。

一方、壁体内結露は、壁内の温度分布・水蒸気移動・層構成(防湿層の位置、透湿抵抗のバランス)などが絡み、湿り空気線図だけで完結しません。それでも湿り空気線図で「室内側の水蒸気量が高いほど、壁に押し込まれる水蒸気の潜在量が増える」ことを状態点の移動として把握できると、設計・施工・説明の共通言語になります。壁体内結露の評価は別途、計算や基準類に基づく確認が必要ですが、入口の誤解(相対湿度だけ見て判断する等)を潰せる点で線図は役に立ちます。

湿り空気線図の見方:現場の換気と対流の独自視点

検索上位の記事は露点の読み方までは丁寧でも、「なぜ同じ室温・同じ湿度計表示でも、特定の場所だけ結露するのか」という現場の違和感には踏み込みが浅いことがあります。ここで独自視点として押さえたいのが、換気と対流で“局所の空気状態”が別物になる点です。YKK APの資料でも、入隅があると自然対流による熱移動が小さくなって空気の動きが悪化し、表面温度が低くなり結露を促進する場合がある、とされています。つまり結露は「部屋平均」ではなく「境界層(表面近傍)」で起きます。
湿り空気線図での読み取りに置き換えると、部屋の中央で測った温湿度が状態点Aでも、窓際・下枠・入隅では空気が滞留し、微小な温度低下や湿気の偏りが起きて、実際の状態点がA’にずれることがあります。特にカーテンを閉め切った状態や、家具を外壁に寄せた状態は“空気が動かない小部屋”を作りやすく、そこでは表面温度が下がるだけでなく、湿気が逃げにくいことで露点に近づきやすい、という二重の不利が起きます。線図での露点計算は同じでも、表面温度の方が下がりやすい条件を作ってしまうのが、現場の結露再発の典型パターンです。

この視点を持つと、対策の優先順位が整理できます。


  • 「露点を下げる」:換気・除湿で室内水蒸気量を減らす(状態点を下方向へ)。​
  • 「表面温度を上げる」:断熱性の良いサッシやガラス、温風を当てる、カーテンを開けて対流を回す(表面温度を露点より上へ)。​
  • 「局所条件を潰す」:入隅・下枠周辺・家具裏など、空気がよどむ場所を作らない(“同じ室内”という前提を崩す要因を減らす)。​

この3つを湿り空気線図の状態点と露点、そして現場の表面温度・対流条件で一枚の絵にできると、監督・設計・施主説明まで一貫したロジックになります。結露は「何℃で起きるか」だけでなく「どこで起きるか」が勝負で、その“どこ”を決めるのが対流と熱橋です。湿り空気線図は、そこに到達するための最短ルートとして使うのが、建築従事者向けの正しい運用です。