

建築従事者が湿度計を選ぶとき、まず「何のために湿度を測るか」を明確にすると、必要な精度(=投資すべきポイント)が決まります。例えば、居室の空気環境管理の目安として、相対湿度は40%以上70%以下が示されています。これは“快適”という抽象論ではなく、設備の維持管理や測定の前提となるレンジの設定に直結します。
特定建築物の空気環境の測定では、相対湿度の測定器として「0.5度目盛の乾湿球湿度計」が挙げられており、湿度計の世界では「測定器の選び方そのものが運用ルール化されている」点が重要です。つまり、表示がデジタルかアナログか、デザインが木目か金属かより前に、測定の前提(測る高さや位置、使う測定器の考え方)を押さえる必要があります。
ここで誤解が起きやすいのが「正確=高価な計測器」という短絡です。現場では、湿度の“絶対値”を厳密に当てにいくより、「結露が出そうな帯域に入った」「除湿が効いていない」など、レンジの逸脱を確実に検知し、記録して再現性を担保する方が事故を減らします。湿度は温度変化ともセットで動くため、温湿度計として同時に確認できる機種の方が、原因切り分けが速くなります。
参考:建築物環境衛生管理基準の相対湿度40〜70%と測定器・測定位置(床上75〜150cm)の考え方
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/seikatsu-eisei10/
「正確」を名乗る温湿度計でも、カタログには“測定範囲”と“精度(許容差)”が分けて書かれているのが普通です。にもかかわらず、現場では「0〜99%って書いてあるから何でも測れる」と誤解されがちです。実務では、測りたい帯域(例:40〜70%)で誤差が小さいか、応答が遅すぎないか、経時変化(ズレ)が運用で吸収できるかが肝になります。
また「おしゃれ」な製品ほど、壁掛け前提で薄型・軽量になり、設置位置が固定されやすい反面、壁体の温度影響を受けやすいことがあります。壁が外気で冷やされる冬期、壁際のセンサーは実際より湿度が高く出たり、逆に暖房の風が当たると乾燥寄りに出たりします。見た目を優先して“置き場を固定する”ほど、正確さは落ちやすいのが皮肉なところです。
そこでおすすめは、同系統の湿度計を2台運用するやり方です。1台は見栄え重視(事務所や施主が見る位置)、もう1台は監視重視(結露リスクのあるゾーン)。2台の差が広がったタイミングが「設置の問題」「機器のズレ」「局所環境(温度差)」のいずれかを疑うトリガーになります。
湿度計の“正確さ”は、機器の仕様だけでなく設置でほぼ決まります。建築物の空気環境の測定では、居室の中央部で床上75cm以上150cm以下の位置で測る考え方が示されています。言い換えると、床・天井・壁・窓から距離を取り、人体が呼吸して生活する空気を測る、という発想です。
現場でズレを増やす典型例は次の通りです(見た目が整っていても、数値の信頼性が落ちます)。
さらに、相対湿度だけを見ていると「温度が動いたせいで湿度が動いた」ケースを見逃します。結露・カビの評価や材料保管の判断では、温度とセットで監視し、変化が起きた時刻(作業・換気・天候)と紐づけてログに残すのが効果的です。
「正確さ」を現場で担保する最短ルートは、購入時の“スペック信仰”ではなく、ズレを把握する“校正の考え方”を運用に入れることです。湿度計の校正方法・性能試験方法を定めた規格として、JIS B 7920:2000(湿度計―試験方法)が公開されており、校正の共通事項や、湿度発生装置・標準器による比較の考え方が整理されています。
意外に知られていないポイントは、校正は「直す」作業とは限らないことです。校正は“標準器に対してどれだけズレているかを示す(証明する)”行為で、調整を含まないケースもあります。つまり、校正結果(器差)を把握しておけば、現場の判定に“補正”として織り込めるわけです。ズレが一定なら、むしろ運用上は扱いやすいこともあります。
さらにJIS B 7920では、飽和塩法のように、塩の飽和水溶液で一定の相対湿度を作る方法が示され、温度ごとの相対湿度の表まで掲載されています。高価な恒温恒湿槽がなくても、考え方としては「既知の湿度点を作り、手元の湿度計の指示を見てズレを知る」ことが可能になります(もちろん実務の校正証明として使うかは別問題で、あくまで日常点検の“発想”として有用です)。
参考:湿度計の校正方法・飽和塩法・試験上の注意事項(JIS B 7920の内容)
https://kikakurui.com/b7/B7920-2000-01.html
検索上位の記事は「おすすめ製品」「インテリアに馴染む」方向に寄りがちですが、建築従事者の独自視点として強いのは、湿度計を“点の数値”ではなく“現場の兆候のセンサー”として使うことです。たとえば、同じ相対湿度60%でも、外気温が低い冬の窓際と、夏の室内中央では意味が変わります。現場で事故(結露・カビ・資材劣化・クレーム)が起きるのは、だいたい「局所の温度差」「換気の偏り」「工程の湿り(乾燥不足)」が重なったときです。
そこで有効なのが、湿度計の読み方を“相対湿度の帯域×時間”で固定する運用です。
「おしゃれ」面は、この運用と相性が良いです。なぜなら、事務所・モデルルーム・施主動線の見える位置に“説明できる計測器”があると、湿度管理を品質管理として語れるからです。空間に馴染むデザインの湿度計でも、ログ(写真・表・共有シート)とセットにすれば、単なる飾りではなく「管理の証拠」になります。
また、特定建築物の空気環境管理の考え方として相対湿度40〜70%が示されている点を踏まえ、目標帯域を“現場共通言語”にすると、職人・監督・施主の間で「今は除湿を優先」「今日は換気を増やす」など意思決定が速くなります。湿度計を置くこと自体が目的化しないよう、判断基準(帯域)と記録(時間)をセットにするのが、正確さと実務性の両立策です。

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