

梅酒づくりが酒税法でややこしく見える最大の理由は、「発酵しているかどうか」ではなく、「酒類に別の物品を混ぜ、混ぜた後も酒類なら“新たに酒類を製造した”とみなす」という考え方が軸にあるためです。国税庁のQ&Aでも、焼酎などに梅などを漬けて梅酒等を作る行為は、酒類と他の物品を混和し、混和後のものが酒類であるため「新たに酒類を製造したものとみなされる」と整理されています。
国税庁Q&A:梅酒づくりが「みなし製造」になる理由と例外要件と読むと、ここがいちばん腹落ちします。
ここで誤解されやすいのが、「梅を漬けただけだから料理の延長」「砂糖を入れただけだから加工食品」という感覚です。しかし税制上は、酒類の範囲や課税の公平性を維持するため、酒類に別の物品を加える行為自体が“製造”に近い影響を持つ、と扱われます。実際、家庭で普通に行われがちな果実酒づくりが、制度上はいったん“製造寄り”に分類されているからこそ、後述の「例外」が明示的に設けられています。つまり「梅酒はOK」ではなく、「原則は製造扱いだが、要件を満たすと例外的に製造行為としない」という順番で理解すると、なぜ問題になるのかが一気に見えます。
家庭の自家製梅酒が一定条件で許容されるのは、国税庁が「消費者が自分で飲むため」に限り、特定の酒類(アルコール分20度以上で酒税が課税済み)を使い、かつ一定の禁止物品を避ける場合は例外的に製造行為としない、と明確にしているからです。国税庁の説明では、使用できる酒類として「アルコール分20度以上」「酒税が課税済み」の条件が示されています。さらに混ぜてはいけない物品として、穀類やそのこうじ、ぶどう、各種添加物(アミノ酸塩類・ビタミン類・香料等)や酒類のかす等が列挙されています。
国税庁Q&A:自家製梅酒の例外条件(20度以上・課税済み・禁止物品)は、家庭での線引きの根拠として最優先で押さえるべき資料です。
また、家庭での運用に近い言葉で整理すると、ポイントは次の通りです(「合法に楽しむ」ための実務チェックとして使えます)。
意外と知られていない注意点として、「梅酒用日本酒」のようにアルコール度数が20度以上の日本酒なら条件上は対象になり得る一方で、一般的なみりんはアルコール度数が20度未満なので前提条件を満たしません。焼酎SQUARE(業界団体側の注意喚起)でも、酒税法の条件として20度以上が前提であること、そしてみりんは度数面で果実酒に使えないことが説明されています。
焼酎SQUARE:家庭で作る果実酒(梅酒等)の注意点と「20度以上」条件
「家庭で作れるなら、少しくらい配ってもいいのでは?」がトラブルの入口になりますが、国税庁はこの例外が「消費者が自ら飲むための酒類についての規定」である以上、「販売してはならない」と明確に述べています。つまり、家庭での自家製梅酒は“自家消費の範囲に閉じる”ことが前提で、収益化や反復継続の提供(ビジネス化)に寄せた瞬間に論点が変わります。ここを曖昧にすると、「作る行為」だけでなく「提供の形」が問題化しやすくなります。
一方で、現場で混乱が起きやすいのが「無償提供」です。焼酎SQUAREのFAQでは、消費者が自ら飲むために作った梅酒であれば、ホームパーティーに招いた友人に無償でふるまうことや、友人への贈答が「無償であれば問題ない」と説明されています(ただし無償で譲り受けたものでも有償で販売すれば罰則対象になり得る点が注意として付されています)。
焼酎SQUARE:自家製梅酒の無償提供・贈答の扱い
ここは「OK/NGの結論」だけでなく、前提が“自家消費目的での製造が例外的に許されている”という構造をセットで説明しておくと、読者の誤解を減らせます。
飲食・宿泊の事業者側の論点も、建築従事者の読者(施主の店舗計画、テナント内装、旅館改装など)には実務的に刺さります。焼酎SQUAREには、旅館等が宿泊客に提供する目的で営業場内で混和する場合など、一定の要件を満たすと免許や納税が不要となる特例措置があること、開始申告書の提出や記帳が必要なこと、そして「お土産として販売するなどの譲り渡しはできない」ことが説明されています。設計段階で“提供のオペレーション”が決まっていないと、厨房・バックヤードの動線や保管スペース以前に、法務・税務の要件で運用が詰むことがあるため、早い段階で税務署や専門家へ確認するのが安全です。
焼酎SQUARE:旅館等の提供目的の混和に関する特例(申告・記帳・場内提供)
検索上位で繰り返し語られるのは「自家製梅酒の可否」ですが、現場での事故が多いのは梅酒そのものより「造り置きカクテル」や「発酵してしまった」ケースです。焼酎SQUAREでは、カクテルは飲む直前に混ぜるなら問題にならない一方、造り置きした場合は「みなし製造」となり違法になる旨が説明されています。つまりバーやイベント現場で、提供効率のために“前日に仕込んだ瓶詰めカクテル”のような運用をすると、意図せず酒税法の論点に入ってしまう可能性があります。
焼酎SQUARE:カクテルは直前混和は可、造り置きはみなし製造の注意
さらに、家庭の梅酒でも「発酵しない設計」が重要です。焼酎SQUAREは混和後にアルコール分1度以上の発酵がないものに限られる趣旨を示しており、発酵に寄せる材料や工程は避けるべきだと読み取れます。ここでの意外ポイントは、発酵は“狙って起こす”だけでなく、環境・糖・微生物条件が揃うと偶発的にも進むということです。例えば、度数の低いベースを使う、衛生管理が甘い、密閉や温度条件が発酵向き、などが重なると、想定外の変化が起きやすくなります(品質面の劣化だけでなく、法的にもリスクが増えます)。
建築・設備の視点で言い換えると、「造り置きをしない運用設計」や「仕込みスペースをそもそも設けない判断」も、コンプライアンスの一部です。厨房やバックヤードを設計するとき、保管棚・冷暗所・ラベリング・鍵管理などを整えるほど“継続的な製造/提供”に見えやすくなる側面もあり、テナントの業態・免許・運用実態との整合が問われます。店舗の内装や動線計画が進んだ後に「実は提供できませんでした」となるのが最悪なので、梅酒・果実酒・仕込み系ドリンクの提供は、設計初期に“法務チェックのToDo”として組み込むのが現実的です。
独自視点として押さえたいのは、酒税法の論点が「作り方」だけでなく、「場(営業場)」「帳簿」「申告」「提供の範囲」といった“運用のインフラ”に結びついている点です。焼酎SQUAREでは、旅館等が営業場内で混和して提供する特例に触れ、開始申告書の提出や混和に関する記帳が必要になることが示されています。つまり、単にレシピを守るだけでは足りず、事業として扱うなら書類・記録・場の管理がセットで要件になり得ます。
焼酎SQUARE:特例の要件(営業場内、開始申告、記帳)
ここを建築従事者向けに落とすと、「その店が何をどこでやるか」は設計図と運用で固定されるため、酒税法上の“営業場内で混和”“場内で提供”“造り置きしない”などの条件と衝突しやすい、という実務があります。例えば、イベントスペース併設のカフェで、バックヤードで仕込んだものを別フロアに運んで提供する運用を想定していると、「場内提供」「混和場所」の解釈が問題になる可能性があります(結論は個別確認が必要ですが、論点はここに立ちます)。また、オーナーが「手作りの売り」を出したいほど、販売や反復提供に寄りやすく、家庭の例外の延長線で考えてしまう誤解が起きがちです。
現場で役に立つチェックリストを置いておきます(設計打合せの議事録にも使えます)。
「酒税法 梅酒 なぜ」の答えは、結局のところ“混和=製造扱い”という骨格と、その上に乗る限定的な例外の条件が分かりにくいからです。読者が安心して梅酒を楽しみ、事業者は設計段階から事故を避けるためにも、上の根拠リンクをベースに、実態に合わせて税務署や専門家へ確認する導線まで記事内で示すのが、いちばんトラブルが減る書き方になります。