スプリングピン規格の完全ガイドJIS・材質・寸法を解説

スプリングピン規格の完全ガイドJIS・材質・寸法を解説

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スプリングピン規格について

スプリングピン規格の基礎知識
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JIS B 2808規格

日本工業規格によるスプリングピンの標準仕様

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材質・形状

炭素鋼からステンレス鋼まで幅広い材料選択

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寸法・取付け

適切な取付孔径と許容差の設定方法

スプリングピンは建築・機械工業において重要なファスニング部品の一つとして広く使用されています。その規格は主にJIS B 2808:2013「スプリングピン」によって定められており、建築事業者が適切な選定を行うためには、この規格の詳細な理解が必要不可欠です。
この規格では溝付きスプリングピンと二重巻きスプリングピンの両方について包括的に定めており、材料から寸法、品質要求事項まで幅広くカバーしています。特に建築分野においては、構造物の接合部や可動部分での使用頻度が高いため、正確な規格理解は安全性の確保にも直結します。

スプリングピン規格JIS B 2808の基本概要

JIS B 2808:2013は、スプリングピンの形状・寸法・材料・品質要求事項を定めた日本工業規格です。この規格は2013年に最新改正が行われ、現在も建築・機械工業界での標準として使用されています。
規格では主に以下の構造タイプが規定されています。

  • 溝付きスプリングピン(両面取りのW形、片面取りのV形)
  • 二重巻きスプリングピン

溝付きスプリングピンは板材を巻いて合わせ目に隙間を設けた構造で、ラジアル方向へのばね力を利用して固定します。一方、二重巻きスプリングピンは二重構造により、より高い強度と安定性を提供します。

スプリングピン材質の規格と特徴

スプリングピンの材質規格は、使用環境や要求性能に応じて多様な選択肢が用意されています。
炭素鋼系材料

  • S60CM、S65CM、S70CM、S75CM(JIS G 3311)
  • SK85M、SK85(JIS G 4401)
  • S60C-CSP、S65C-CSP、S70C-CSP、SK85-CSP(JIS G 4802)

ステンレス鋼系材料

  • SUS304(JIS G 4305)- オーステナイト
  • SUS301-CSP、SUS304-CSP(JIS G 4313)- オーステナイト系
  • SUS420J1、SUS420J2(JIS G 4305)- マルテンサイト
  • SUS420J2-CSP(JIS G 4313)- マルテンサイト系

建築用途では耐食性が重要となるため、ステンレス系材料の選択が推奨されます。特にSUS420J2は硬度HRC42~48を有し、優れた強度と耐食性のバランスを実現します。

スプリングピン寸法規格と取付孔の要件

スプリングピンの寸法規格は、呼び径1mmから13mmまで段階的に設定されています。
主要寸法規格(一般荷重用)

  • 呼び径1mm:外径d1最大1.2mm、厚さs 0.2mm、せん断強さ0.69kN
  • 呼び径3mm:外径d1最大3.25mm、厚さs 0.6mm、せん断強さ6.2kN
  • 呼び径6mm:外径d1最大6.4mm、厚さs 1.2mm、せん断強さ24.83kN
  • 呼び径10mm:外径d1最大10.6mm、厚さs 2.0mm、せん断強さ68.94kN

取付孔の重要な規格要件
取付孔の直径はスプリングピンの呼び径と同じとし、寸法公差はJIS B 0401-1で規定するH12とします。この公差設定により、適切な締め代を確保しつつ、挿入作業の容易性も保証されます。
スプリングピンを取付孔に挿入した際、溝部の辺が全面で接触してはならないという重要な制約があります。これはピンのばね性を適切に発揮させるための必須条件です。

スプリングピン規格の強度・性能要件

スプリングピンの性能は主にせん断強度で評価され、規格では最小値が明確に定められています。
せん断強度の規格値

  • 小径ピン(1-3mm):0.69-6.2kN
  • 中径ピン(4-6mm):10.8-24.83kN
  • 大径ピン(8-13mm):44.13-112.78kN

この強度特性により、建築構造物の接合部において必要な保持力を確保できます。特に地震などの動的荷重に対しても、適切に設計されたスプリングピン接合部は優れた性能を発揮します。

 

面取り規格
呼び径10mm以上のスプリングピンでは、受渡当事者間の協定により片面取り(V形)とすることが可能です。面取り形状は任意とされており、施工性を考慮した最適化が図れます。
長さの許容差
長さLに対する許容差は以下のように規定されています:

  • 4-11mm長:+0.5/0mm
  • 12-55mm長:+1.0/0mm
  • 56mm長以上:+1.5/0mm

スプリングピン規格の最新技術動向と特殊用途

近年、建築業界におけるスプリングピンの応用は従来の固定用途を超えて拡大しています。特に免震・制振構造における可動接合部や、建築設備の保守性向上を目的とした取り外し可能な接合部での需要が増加しています。

 

波形スプリングピンの技術革新
従来のストレート形状に対し、波形加工を施したスプリングピンが注目されています。この形状により、製品同士が絡みにくく自動挿入に適するという特徴があり、大規模建築プロジェクトでの施工効率向上に貢献します。
波形スプリングピンは展開寸法が長く、真円度と引抜き荷重に優れるという技術的メリットがあります。ピンの自由時外径は呼び径に対して約15-20%太く設計されており、確実な固定力を実現します。
高強度材料の適用拡大
建築用スプリングピンにおいて、SUP10M(呼び径12mm以上)やSK85系材料の採用が増加しています。これらの材料は従来の炭素鋼に比べて高い疲労強度を有し、繰り返し荷重を受ける部位での長期信頼性が向上します。
国際規格との整合性
JIS B 2808と並行して、ASME B18.8.2、ASME B18.8.4M、ISO 8752(DIN 1481)等の国際規格との整合性も重要となっています。グローバル建築プロジェクトでは、これら複数規格の要求事項を同時に満たす製品選定が求められる場合があります。
建築設計者・施工者は、プロジェクトの特性に応じて最適な規格・材質・形状のスプリングピンを選定することで、構造物の安全性と機能性を両立した設計を実現できます。今後も技術革新により、より高性能で施工性に優れたスプリングピン製品の開発が期待されています。