工業規格と産業規格の違い

工業規格と産業規格の違い

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工業規格と産業規格の違い

工業規格と産業規格の概要
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工業規格(旧称)

1949年から2019年まで使用された「日本工業規格(JIS)」。鉱工業品を中心とした製品規格として制定されました。

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産業規格(現行)

2019年7月1日から施行された「日本産業規格(JIS)」。データやサービス分野まで対象範囲を拡大した現代版規格です。

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変更の背景

第四次産業革命による産業構造の変化に対応し、IoTやAI技術の発展に合わせて規格体系を現代化しました。

工業規格の歴史的変遷と背景

工業規格の歴史は1921年(大正10年)の工業品規格統一調査会の設置にまで遡ります 。この調査会により工業製品の統一規格事業が本格化し、1933年には日本標準規格(Japanese Engineering Standards)が制定されました 。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/ieiej/43/2/43_110/_pdf/-char/ja

 

戦後復興期の1949年に工業標準化法が成立し、これが現在の標準化制度の基盤となりました 。この法律により「日本工業規格(JIS)」が正式に制定され、製品の品質改善、生産・流通の合理化、取引の単純化を目的として70年間にわたって運用されてきました 。
参考)日本産業規格とは?日本工業規格との違いや調べ方を徹底解説 -…

 

戦後の急速な工業化に伴い、JIS規格は建築材料をはじめとする様々な分野で重要な役割を果たしました。特に建築業界では、コンクリート、鋼材石膏ボードなど多岐にわたる材料がJIS規格の対象となり、品質の標準化が図られました 。
参考)法的に使えない建築材料!?法第37条の指定建築材料や規格の解…

 

産業規格への名称変更の理由

2019年7月1日、「工業標準化法」は「産業標準化法」に改正され、これに伴い「日本工業規格(JIS)」は「日本産業規格(JIS)」に名称変更されました 。この変更は単なる名称の修正ではなく、現代の産業構造の変化に対応するための重要なアップデートでした。
参考)https://www.meti.go.jp/policy/economy/hyojun-kijun/jisho/jis.html

 

名称変更の主な理由は、第四次産業革命による産業環境の大きな変化です 。IoTやAI技術の革新により、企業の競争力がデータやその活用に移り変わり、従来の「鉱工業品」だけを対象とする枠組みでは社会のニーズに対応できなくなりました 。
参考)JIS法改正(産業標準化法)――「日本工業規格」は、「日本産…

 

建設業界においても、BIMやICT技術の導入、スマートマニュファクチャリングなど、デジタル技術を活用した新しい建設手法が普及しており、これらのサービスや管理システムも規格化の対象とする必要が生じました 。
参考)https://www.tkc.jp/cc/senkei/201911_consult01

 

工業規格と産業規格の対象範囲の違い

最も重要な違いは対象範囲の拡大です。旧工業規格は主に鉱工業品を中心とした製品に限定されていましたが、新産業規格では対象が大幅に拡張されました 。
具体的な変更点を以下の表にまとめます。

項目 工業規格(旧) 産業規格(新)
法律名 工業標準化法 産業標準化法
規格名 日本工業規格 日本産業規格
対象範囲 鉱工業品中心 データ・サービス・経営管理も含む
制定プロセス 国主導 民間主導による迅速化
罰則 軽微 強化

新産業規格では、情報セキュリティマネジメントシステム(JIS Q 27001)のような形のないサービスや管理体制も対象となりました 。これにより建設業界でも、施工管理システムや品質管理プロセス、環境マネジメントシステムなど、従来規格化されていなかった分野にも標準化の枠組みが適用可能となりました。

建築業界における工業規格適用の実例

建築業界では、法第37条により指定建築材料の使用が義務付けられており、基本的にJIS、JAS(日本農林規格)または国土交通大臣の認定を受けたもの以外は使用できません 。
建築材料における工業規格の適用例として、以下のような製品があります。

  • コンクリート関連: セメント、生コンクリート、プレキャスト製品
  • 鋼材関連: 構造用鋼材、ボルト・ナット、溶接材料
  • 建築資材: 石膏ボード、断熱材、防水材
  • 設備機器: 配管材料、電気設備、空調機器

特にプレキャスト工法では、国土交通省と日本建設業連合会が連携してJIS規格の適用による品質向上と省人化・省力化を推進しています 。プレキャスト製品の規格化により、現場での作業効率が大幅に改善され、品質の安定化も実現されています。
参考)https://www.mlit.go.jp/tec/content/001474498.pdf

 

産業規格による建築業界への新たな影響

産業規格への移行により、建築業界では従来の物理的な建材だけでなく、デジタル技術やサービス分野にも標準化の概念が適用されるようになりました 。
建設現場の安全管理においても、日本産業規格(JIS)に適合した暑さ指数計の使用が徹底されるなど、新しい分野での規格適用が進んでいます 。これは従来の工業規格の枠組みでは対応困難だった領域です。
参考)https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/content/contents/001846219.pdf

 

BIM(Building Information Modeling)やGIS(Geographic Information System)との連携においても、国際標準化機構(ISO)と連携した標準化作業が進められており、建築設計から施工、維持管理まで一貫したデジタル化が推進されています 。
参考)301 Moved Permanently

 

建設業における品質管理システム(ISO 9001)や環境マネジメントシステム(ISO 14001)の導入も、産業規格の枠組みの中で位置づけられ、これらの認証取得が企業の競争力向上に直結するようになりました 。