

2025年の宅地建物取引業法施行規則改正は、2024年6月28日に公布され、1月1日と4月1日の2段階で施行されました。 この改正は不動産取引の透明性向上とデジタル化推進を目的としており、宅建業者の実務に大きな影響を与えています。
参考)https://keiyaku-watch.jp/media/hourei/takkengyo_kaisei2025/
改正の背景には、長年問題視されてきた「囲い込み」の防止と、従業員のプライバシー保護という2つの重要な課題がありました。 国土交通省は、レインズのステータス管理機能を活用した透明性の確保と、デジタル原則に基づく規制の見直しを同時に進めることで、不動産業界全体の健全化を図っています。
参考)https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/1_6_bt_000268.html
施行時期は2段階に分かれており、2025年1月1日にはレインズ登録事項の追加が、4月1日には業者票や従業者名簿の様式変更が施行されました。 この段階的な施行により、宅建業者には十分な準備期間が設けられましたが、旧様式での申請は受理されないため注意が必要です。
参考)https://corezo-hr.jp/3086-2/
2025年1月1日施行の改正により、宅建業者には指定流通機構(レインズ)への「取引申込み受付状況」の登録が新たに義務付けられました。 この改正は、両手仲介を狙った「囲い込み」行為を防止することを主な目的としています。
参考)https://ielove-cloud.jp/blog/entry-04815/
具体的には、「公開中」「書面による購入申込みあり」「売主都合で一時紹介停止中」という3つのステータスから適切なものを選択して登録する必要があります。 また、登録証明書には2次元コードが付与され、売主が専用画面から直接取引状況を確認できる仕組みが導入されました。
参考)https://iimon.co.jp/column/violation-of-the-obligation-to-register-with-reins
この改正により、宅建業者が事実と異なるステータスを登録した場合、宅地建物取引業法第65条第1項に基づく指示処分の対象となることが明確化されました。 さらに、売主への説明義務も強化され、登録証明書交付時にステータス確認方法を明確に説明することが求められています。
参考)https://nakajitsu.com/column/71386p/
意外な点として、この改正により売主自身が物件の取引状況をリアルタイムで監視できるようになったことで、従来はブラックボックスだった仲介プロセスの透明性が飛躍的に向上しました。 これは不動産業界における情報の非対称性を解消する画期的な取り組みといえます。
参考)https://rita-hudousan.com/info/page_582.html
国土交通省のレインズ機能強化に関する公式リーフレット(レインズ登録義務化の詳細と売主向け説明資料)
2025年4月1日施行の改正では、宅地建物取引業者票(業者票)と従業者名簿の記載事項が大幅に変更されました。 この変更の最大の目的は、従業員のプライバシー保護と業務効率化の両立です。
参考)https://restyle.tokyo/forbeginners/law-amendment.html
業者票については、従来記載されていた「専任の宅地建物取引士の氏名」が削除され、代わりに「専任の宅地建物取引士の人数」「宅地建物取引業に従事する者の数」「事務所の代表者氏名」の記載が必要になりました。 この変更により、個人情報保護が強化された一方で、従業員の入退社のたびに業者票を修正する手間が増えるという実務上の課題も生じています。
参考)https://hike.or.jp/takken/jouhou/post-294/
従業者名簿については、従来必要だった「生年月日」「住所」「性別」などの詳細な個人情報の記載が不要となり、原則として「氏名」のみの記載で足りることになりました。 これにより名簿管理の手間が大幅に削減され、従業員のプライバシーがより適切に保護されるようになりました。
参考)https://ms-gyosei.com/takkengyo-yoshikihenko/
注目すべき点として、これらの変更は第14次地方分権一括法に基づくデジタル化推進の一環として実施されたものであり、行政手続きの効率化という広い文脈の中で理解する必要があります。 令和7年4月1日以降は新様式への差し替えが必須となるため、各事業所での対応が求められています。
参考)https://www.aichi-takken.or.jp/news/94ee1e86-4816-4e6a-ac8a-4aaaa724019c
免許申請に関する改正では、添付書類の追加と宅地建物取引業者名簿の登載事項の変更という2つの重要な変更が行われました。 これらの変更は、主に行政手続きの円滑化と個人情報保護の両立を目指したものです。
参考)https://ieul.jp/column/articles/106723/
免許申請時には、新たに「免許を受けようとする者(法人の場合はその役員)と事務所代表者である使用人の氏名・住所・電話番号その他の連絡先を記載した書面」の添付が必要になりました。 この変更により、免許審査担当者と申請者間の連絡が取りやすくなり、申請内容の確認や修正が迅速に行えるようになりました。
一方、宅地建物取引業者名簿の登載事項からは「事務所ごとに置かれる宅地建物取引士の氏名」が削除されました。 宅地建物取引業者名簿は一般に公開されており、一従業員に過ぎない宅建士の氏名を広く公表する必要性が低いという判断から、プライバシー保護の観点でこの変更が実施されました。
実務的には、新規に免許を取得する業者に主な影響があり、既存の宅建業者への影響は限定的です。 ただし、免許更新時には新様式での申請が必要となるため、更新時期が近い業者は事前に準備を進めることが推奨されます。
今回の改正に適切に対応するためには、複数の実務的な対応が必要となります。最も重要なのは、レインズへの取引状況登録を確実に履行することです。 登録漏れや虚偽の登録は指示処分の対象となり、最悪の場合は業務停止や罰金が科される可能性があります。
売主への説明責任も強化されており、登録証明書を交付する際には2次元コードを使った取引状況確認方法を明確に説明する義務があります。 この説明を怠ると宅地建物取引業法第65条に基づく処分対象となるため、説明用のマニュアルや資料を事前に整備しておくことが推奨されます。
参考)https://hike.or.jp/takken/jouhou/20250101reins/
業者票と従業者名簿については、2025年4月1日以降は新様式への差し替えが必須です。 旧様式での申請は受理されず、差し戻しの対象となるため、早めの対応が求められます。 特に従業者の入退社があるたびに業者票の人数を更新する必要がある点は、実務上の負担増加要因として認識しておく必要があります。
参考)https://www.z-ngs.jp/2025/02/10/%E5%BE%93%E6%A5%AD%E8%80%85%E5%90%8D%E7%B0%BF%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6/
意外な盲点として、レインズのステータス管理は「最新の状態」を保つことが義務付けられているため、単に登録すればよいのではなく、状況変化に応じた継続的な更新作業が必要です。 この継続的な管理体制の構築が、改正対応の鍵となります。不動産業務の効率化ツールを活用し、登録漏れを防ぐ仕組みを整えることも有効な対策といえるでしょう。
参考)https://www.midori-fudosan.co.jp/blog/detail588938/
宅地建物取引業法施行規則改正の詳細解説(法改正の全体像と実務対応のポイント)