
鉄道コンテナ輸送のトータル運賃は、オンレール部分(鉄道運賃料金)とオフレール部分(集荷・配達にかかる発送料・到着料)を合算したものから成り立っています。この料金体系は建築資材の長距離輸送において、特に重要な意味を持ちます。
参考)302 Found
鉄道運賃料金は、利用する鉄道の定めるコンテナ貨物運賃料金によって決定されます。東京貨物ターミナル駅から大阪貨物ターミナル駅までの5トンコンテナ(12フィート)の運賃は約38,500円、福岡貨物ターミナル駅までは約66,000円、札幌貨物ターミナル駅までは約70,500円です。このなかにはコンテナの使用料金も含まれており、列車の時刻表とともに、JR貨物のWEBサイトに公開されています。
参考)https://www.city.osaka.lg.jp/port/cmsfiles/contents/0000421/421192/11.pdf
発送料と到着料については、集貨または配達距離が10kmまでのもので、東京都区内および大阪市内に所在する駅の場合、5トンコンテナ貨物(12フィート)で12,170円、10トンコンテナ貨物(20フィート)で23,140円となっています。集貨または配達距離が10kmを超え50kmまでのものは、10kmまでを増すごとに5トンコンテナで2,770円、10トンコンテナで5,280円が加算されます。
建築業従事者が鉄道輸送を検討する際、具体的な費用計算が必要です。運賃料金は、コンテナ貨物1個ごとに計算します。
参考)https://www45.nittsu.co.jp/nvaapp/pdf/wrc_tdk_unc.pdf
輸送距離による費用の違いを理解することで、トラック輸送と鉄道輸送のどちらが経済的かを判断できます。例えば、東京~大阪間(約500km)の引越しコンテナ便を利用する際の料金の目安は、一般的な5トンコンテナの場合で約3万~4万円です。東京~福岡間(約1100km)では約10万~12万円となります。
参考)https://column.osakagas.co.jp/moving/movings-knowledge/article/2661/
距離が長くなるほど鉄道輸送のコストメリットが顕著になります。鉄道輸送は長距離輸送ではトラック輸送よりも割安で大量の貨物を目的地へ輸送可能です。しかし、中・近距離の輸送では逆にコストがかかる恐れがあります。
参考)鉄道輸送とトラック輸送を徹底比較!運ぶのに適したものを解説
建築資材の輸送において、適切なコンテナ選択が費用削減の鍵となります。日本の鉄道コンテナの規格は、三種類に分類されています。
参考)日本の鉄道コンテナ - Wikipedia
主要コンテナ規格
鉄道コンテナには、機能や寸法など各種コンテナがありますが、代表的なのが12フィートタイプのコンテナです。内部は壁や開戸内面に内張板(ベニヤ板)を取付けています。また船舶輸送できるように上下四隅に隅金具を装備しています。
参考)302 Found
両側面が開く19D形式コンテナは、フォークリフトによるパレット荷役が効率的に行え、貨物の固定のためのラッシングフックを装備しています。内法寸法は長さ3,647mm×幅2,275mm×高さ2,252mm、側入口は幅3,635mm×高さ2,187mm、内容積18.7m³、積載重量5,000kgです。
建築資材の形状や重量に応じて最適なコンテナを選ぶことで、積載効率を最大化し、輸送費用を抑えることができます。
鉄道輸送の運賃計算において、重量と容積の両方が考慮されます。混載荷物の運賃計算重量は、荷物の実重量または容積によって換算した重量のいずれか大きい方によります。この場合の容積換算重量は、1立方メートルを280キログラムに換算します。
参考)https://www.nittsu.co.jp/corporate/fare/rail/pdf/rail_3.pdf
鉄道輸送の密度比は1:3で計算されます。計算式は「(L x W x H、cm)/ 3,000)x パッケージの数」となります。例えば、長さ120cm、幅80cm、高さ50cmの荷物が2つある場合、「(120 x 80 x 50)/ 3,000)x 2 = 320kg」となり、荷物の容積重量は320kgになります。
参考)https://www.dhl.com/jp-ja/home/global-forwarding/freight-forwarding-education-center/calculating-chargeable-weights.html
これに対して、航空輸送は密度比1:6、海上輸送は密度比1:1で計算されるため、鉄道輸送は中間的な計算方法といえます。建築資材の場合、重量物が多いため実重量が適用されるケースが多いですが、軽量でかさばる資材の場合は容積重量が適用される可能性があります。
輸送トンキロという指標も重要です。輸送トンキロとは、輸送した個々の貨物(トン)にそれぞれの貨物を輸送した距離(キロ)を乗じたものの累積のことです。計算式は「輸送トンキロ=輸送トン数×輸送距離」となります。1tの貨物を1km運んだ場合を1トンキロとし、10tを10km運べば100トンキロになります。
参考)輸送トンキロ
建築資材の輸送において、鉄道輸送とトラック輸送のコスト比較は重要な検討事項です。コストパフォーマンスを比較すると、近距離の場合はトラック輸送、長距離の場合は鉄道輸送に軍配が上がります。
輸送モード別の特徴
項目 | 鉄道輸送 | トラック輸送 |
---|---|---|
コストパフォーマンス | 長距離・大量輸送で優位 | 短距離・少量輸送で優位 |
安全性 | 事故件数583件(令和4年) | 事故件数9,371件(令和4年) |
リードタイム | トラックより長い | 鉄道より短い |
緊急対応 | 臨機応変の対応が難しい | 緊急時の対応も可能 |
CO2排出量 | 20(単位輸送量あたり) | 208(鉄道の10倍以上) |
鉄道輸送の最大積載量は約650トンですが、輸送するのに必要な運転手は1人だけです。大型トラックの最大積載量は10トンなので、同じ貨物量を輸送するとなるとトラック65台、65人の人員が必要になります。
建設資材の物流では、トラック物流の占める割合が比較的高いという特徴があります。しかし、2024年4月から物流業界にも働き方改革法案が適用され、トラックドライバーの年間時間外労働に制限がかかりました。2024年問題に対して何も対策せず、今後も国内輸送をトラック輸送に頼ると、2030年には輸送能力の34.1%が不足してしまうことが予想されています。
参考)https://www.mlit.go.jp/common/001272768.pdf
建築業で鉄道輸送を効果的に活用するには、いくつかの実践的なポイントがあります。500Kmを超える遠隔地輸送などでは、鉄道輸送への転換により輸送効率を高めることができます。
参考)【トラック輸送の代替え】コンテナ活用による鉄道輸送でコスト削…
モーダルシフト(トラック輸送から鉄道輸送への転換)によって得られるメリットは以下の通りです:
あるメーカーのベンダーである荷主が、メーカー向けの納品を鉄道輸送へのモーダルシフト化したことにより、CO2排出量とコストの両方を削減できた事例があります。また、輸送工程全体の90%以上を海上輸送へモーダルシフトすることに成功した建設機械メーカーの事例もあり、CO2排出量削減と同時にコスト削減を実現しています。
参考)モーダルシフトが物流のピンチを救う?事例からみる成功のポイン…
ただし、鉄道輸送には課題もあります。大雨や台風、地震など自然災害で輸送がストップする可能性がある点、貨物の荷積み作業があるためトラック輸送に比べるとリードタイムが長くなる点などです。また、料金体系や列車ダイヤがわかりにくい、鉄道輸送の仕組みが理解されていないなど、利用のハードルとなる要因も存在します。
コンテナ貨物留置料についても理解が必要です。駅の構内において、コンテナに入れた状態で貨物を留置した場合、発駅では集荷日とその翌日から5日間、着駅では積載列車の到着日とその翌日から5日間は無料です。これを超えた場合は、5トンのJRコンテナで1,000円、10トンのJRコンテナで2,000円のコンテナ貨物留置料が発生します。この仕組みを活用することで、「納入日まで少し時間があるが、予め荷物を送りたい」「納入先の都合により、配達を延期したい」といった柔軟な対応が可能になります。
建築資材の鉄道輸送では、計画的な輸送スケジュールの立案、適切なコンテナサイズの選択、往復輸送の実現などにより、さらなるコスト削減が期待できます。国土交通省のモーダルシフト等推進官民協議会でも、往復輸送することで鉄道へのモーダルシフトを実現した事例が報告されています。
参考)https://www.mlit.go.jp/common/000172416.pdf
参考リンク
鉄道輸送の仕組みと料金体系について詳しく知りたい方は、JR貨物の公式サイトで運賃計算や輸送日数、CO2排出量の概算算出が可能です。
JR貨物 - 値段の仕組み
鉄道輸送とトラック輸送の詳細な比較情報については、物流専門サイトで各輸送モードのメリット・デメリットが解説されています。