十勝沖地震2024発生の原因と建築物への影響

十勝沖地震2024発生の原因と建築物への影響

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十勝沖地震2024発生の概要と被害状況

📊 十勝沖地震2024の主要ポイント
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地震の基本情報

2024年10月10日11時33分に発生したマグニチュード4.4、深さ41kmの地震で、北海道広尾町で最大震度3を観測

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過去の巨大地震

2003年のM8.0、1952年のM8.2など、過去に繰り返し大規模地震が発生している地域

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今後のリスク

今後30年以内にM8.0〜8.6の地震が発生する確率は10%程度と予測されている

2024年10月10日11時33分頃、北海道の十勝沖を震源とするマグニチュード4.4、深さ41kmの地震が発生しました。この地震で北海道広尾町で最大震度3、幕別町と浦幌町で震度2を観測しています。地震のメカニズムは北西-南東方向に圧力軸を持つ逆断層型と解析されており、プレート境界の近くで発生したとみられます。
参考)週刊地震情報 2024.10.13 十勝沖の地震で2年ぶりに…

十勝沖を震源とする震度3以上の地震は、2022年10月10日以来ちょうど2年ぶりとなりました。この地震による津波の心配はなく、人的被害や建物被害の報告もありませんでした。しかし、この地域は太平洋プレートが北米プレートに沈み込むことで地震が発生しやすい領域であり、過去には大きな被害をもたらした地震が繰り返し発生しています。
参考)地震情報(2024年10月10日)最大震度3|震源地:十勝沖…

2024年には10月10日以外にも、9月25日にマグニチュード4.2の地震、10月21日にマグニチュード4.3の地震が発生するなど、継続的な地震活動が観測されています。これらの地震は比較的小規模ですが、この地域の地震活動が活発であることを示しています。
参考)地震の履歴一覧(震源地:十勝沖) - Yahoo!天気・災害

十勝沖地震の震源メカニズムと発生要因

十勝沖は太平洋プレートが北米プレートに沈み込む場所に位置しており、この地殻変動が地震発生の主要な要因となっています。2024年10月10日の地震は、深さ41kmという比較的浅い位置で発生し、逆断層型のメカニズムを示しています。この特徴は、プレート境界付近での圧縮応力によって引き起こされる典型的な海溝型地震の特性と一致しています。​
北海道東部のテクトニクス(地殻変動)は複雑で、西半分はユーラシアプレートに属する東北日本弧の延長であるのに対し、東半分はオホーツクプレートに属しています。この複雑な地殻構造が、十勝沖での継続的な地震活動の背景となっています。地質学的に見ると、この地域では中期中新世以降、両プレートの収束運動によって地震が繰り返し発生してきました。
参考)北海道十勝沖・釧路沖地震の真実:過去から現在まで徹底解説|S…

政府の地震調査研究推進本部によると、今後30年以内にマグニチュード8.0〜8.6の地震が発生する確率は10%程度とされています。この確率は決して低いものではなく、建設事業者として十分な警戒と準備が必要とされる数値です。​

十勝沖地震2024の被害状況と影響範囲

2024年10月10日に発生した地震では、最大震度3という比較的小規模な揺れにとどまり、津波の発生もありませんでした。震度3を観測したのは北海道の広尾町のみで、幕別町と浦幌町では震度2、その他の地域では震度1以下の揺れが観測されました。この地震による人的被害、建物被害、ライフラインへの影響は報告されていません。​
しかし、この地域で過去に発生した大規模地震では、深刻な被害が記録されています。2003年9月26日に発生した平成15年(2003年)十勝沖地震(マグニチュード8.0)では、釧路地方から十勝地方、日高地方にかけて最大震度6弱を観測し、北海道を中心に負傷者849人、住宅の全壊116棟、半壊368棟、一部破損1,580棟、床下浸水9棟の被害が発生しました。
参考)平成15年(2003年)十勝沖地震

特に注目すべきは津波による被害です。2003年の地震では北海道から東北地方の太平洋沿岸に津波が襲来し、最高で255cm(北海道広尾町・十勝港で記録)に達しました。十勝川では津波が川を10km以上も遡る現象も発生し、豊頃町の十勝川河口でサケ釣りをしていた釣り人の男性2名が津波にさらわれ、1名が死亡、1名が行方不明となりました。​

十勝沖地震の歴史的発生パターンと周期性

十勝沖では歴史的に大きな地震が周期的に発生する傾向があります。記録に残る主要な地震として、1843年4月25日にマグニチュード8クラスの地震、1952年3月4日にマグニチュード8.2の地震、1968年5月16日にマグニチュード7.9の地震、そして2003年9月26日にマグニチュード8.0の地震が発生しています。​
これらのパターンを分析すると、十勝沖では約30年から50年の周期で大規模地震が発生していることがわかります。1952年の地震から1968年まで16年、1968年から2003年まで35年という間隔で大地震が発生しており、地震のエネルギーが一定期間蓄積された後に開放されるという典型的なプレート境界型地震の特徴を示しています。​
興味深いことに、2003年の地震は1952年の地震の震源域の西半分のみが破壊されたと推定されています。津波の高さの分布を比較すると、釧路より西側では1952年と2003年で類似した高さ分布でしたが、釧路より東側から霧多布にかけては1952年の方が2〜4倍程度の遡上高を示していました。このことは、2003年の地震が1952年の震源域全体を破壊したわけではなく、残りの部分は今後の地震で破壊される可能性があることを示唆しています。​

十勝沖地震における長周期地震動の影響

2003年十勝沖地震では、長周期地震動による遠方への影響が大きな問題となりました。震源から約250km離れた苫小牧市の石油コンビナートで、スロッシング(石油タンク内の石油が揺動する現象)が発生し、浮き屋根が大きく揺動した結果、石油タンクの浮き屋根が沈没しました。そして地震から2日後に静電気が原因で火災が発生するという二次災害も引き起こしています。​
長周期地震動は、周期(揺れが1往復するのにかかる時間)が長い大きな揺れのことで、遠くまで伝わりやすい性質があります。このため、地震が発生した場所から数百km離れたところでも大きく長く揺れることがあり、高層ビルは大きく長時間揺れ続けることがあります。建設事業者にとって、この長周期地震動への対策は、地震の揺れそのものへの対策と同様に重要な課題となっています。​
国土交通省は2003年十勝沖地震後、大規模空間を持つ建築物の天井の崩落対策について技術的助言を発出しました。この地震では、空港ターミナルビル等の天井が崩落する被害が生じており、天井の段差がある部分で剛性の高い部分と低い部分があり、また天井面の一部が構造体に接していたため、地震時の揺れで当該部分の天井材に局所的な力が作用した可能性が指摘されました。
参考)https://www.nilim.go.jp/lab/bcg/kisya/journal/tenjou.pdf

十勝沖地震2024後の建築物点検と耐震評価の重要性

2024年10月の地震では目立った被害は報告されていませんが、建設事業者として建築物の定期的な点検と耐震評価は極めて重要です。特に1981年以前の旧耐震基準で設計された建築物は、現行の新耐震基準と比較して耐震性能が不十分である可能性が高く、耐震診断の実施が推奨されます。
参考)耐震診断とは?

耐震診断では、建物の耐震性能を表す指標として「Is値」(Seismic Index of Structure)が用いられます。Is値は、Is=Eo(保有性能基本指標)×Sd(形状指標)×T(経年指標)という式で算出され、建物の強度・靱性、形状やバランス、経年劣化などを総合的に判断します。
参考)耐震診断で重要となるIs値(耐震指標)の基礎知識

震度6〜7程度の地震に対するIs値の評価は以下のように定められています。Is<0.3の場合は倒壊または崩壊する危険性が高く、0.3≦Is<0.6の場合は倒壊または崩壊する危険性があり、0.6≦Isの場合は倒壊または崩壊する危険性が低いとされます。実際に、1968年十勝沖地震および1978年宮城県沖地震でIs値が0.6以上の建物で大きな被害を受けたという例はまだ出ていないことから、Is値は地震対策において十分に参考となる指標です。​
北海道では、2003年十勝沖地震や1978年宮城県沖地震で中破以上の被害を受けた建築物の耐震性能(Is値)は、既存建築物全体の中で耐震性能の低いところに集中していることが確認されています。また、建設年代の古い建物ほど相対的に耐震性能の高いものが少なく、耐震性能の低いものが多いことがわかっています。このことから、建設事業者として既存建築物の耐震診断を積極的に実施し、必要に応じて耐震改修を行うことが重要です。
参考)耐震診断のすすめ - 建設部住宅局建築指導課

北海道建設部住宅局建築指導課「耐震診断のすすめ」- 既存建築物の耐震性能分布と年代別の被害状況について詳細なデータが掲載されています