
特殊建築物とは、不特定多数の人が利用する建物で、劇場・映画館・病院・ホテル・学校・百貨店・倉庫などが該当します。用途変更とは、これらの建物の用途を別の用途に変更することを指します。たとえば、オフィスビルをホテルに、工場を飲食店に、共同住宅を寄宿舎にする場合などが典型例です。
特殊建築物に該当するかどうかは、建築基準法別表第一(い)欄で定められており、用途変更の際はまずこの分類を確認します。
なお、特殊建築物以外の用途(例:事務所)に変更する場合や、建築基準法施行令第137条の17・18に規定される「類似用途」間の変更では、用途変更手続きが不要な場合もあります[1][4][6]。
用途変更で確認申請が必要となるのは、①変更後の用途が特殊建築物であること、②用途変更する部分の床面積が200㎡を超えることの両方を満たす場合です。2019年の法改正により、基準面積が100㎡超から200㎡超に緩和されています[3][4][6]。
申請の流れは以下の通りです。
用途変更前には、既存建築物が「既存不適格建築物」か「違法建築物」かを必ず確認しましょう。既存不適格とは、建築当時は適法だったが現行法には適合しない状態、違法建築物は当時から法令違反がある状態です。違法建築物の場合、用途変更の確認申請が受理されないこともあるため、是正措置が必要です[6]。
また、用途変更後は新用途に応じた法令(避難経路、排煙設備、耐火構造、バリアフリー等)への適合が求められます。消防法や旅館業法、地域条例など他法令の規制も個別に確認しましょう。
さらに、用途変更部分の床面積の合算や、過去の用途変更履歴も考慮が必要です。知らずに違反状態となるリスクを避けるため、行政や建築士への事前相談が推奨されます[1][4][6]。
主な必要書類は以下の通りです。
近年では、空き家や老朽化した工場・倉庫を、地域のニーズに合わせて「子ども向け室内遊び場」「シェアオフィス」「一棟貸しの宿泊施設」などへ用途変更する事例が増えています。
特殊建築物の用途変更は、単なるリノベーションではなく、地域活性化や新たな収益源創出の手段としても注目されています。
たとえば、古い共同住宅を飲食店や物販店舗に転用したり、工場を文化施設やイベントスペースに用途変更することで、建物の資産価値を高めることができます。
こうした活用を成功させるには、法令遵守だけでなく、地域の条例や補助金制度の調査、将来的な用途変更の可能性も見据えた計画が重要です[5]。
用途変更手続きの詳細や法的根拠については、自治体の建築課や建築士、行政書士への相談が推奨されます。
(参考リンク:天草市「確認申請が必要な建築物の用途変更」には、特殊建築物の具体例や手続き基準、類似用途の区分が詳しく解説されています。)
天草市:確認申請が必要な建築物の用途変更