検査済証と確認済証の違い|建築業従事者が押さえる申請手続き

検査済証と確認済証の違い|建築業従事者が押さえる申請手続き

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検査済証と確認済証の違い

📋 検査済証と確認済証の基礎知識
📝
確認済証

建築確認申請時点で建築基準法等への適合を証明する書類

検査済証

完了検査後に実際の建物が計画通りに完成したことを証明する書類

⚖️
交付タイミング

確認済証は着工前、検査済証は工事完了後に発行される

検査済証と確認済証は、建築工事の異なる段階で交付される別々の証明書です。確認済証は、建築主が建築確認申請を行い、建築計画が建築基準法などの法令に適合していることが確認された際に交付される書類で、これがなければ工事に着工することができません。一方、検査済証は、工事完了後に実施される完了検査に合格した場合に交付される証明書で、実際に建てられた建物が確認申請書通りに完成していることを証明します。
参考)検査済証とは?確認済証との違いやいつもらえるのか、検査の義務…

両者の最も大きな違いは、審査の対象となる時期と内容です。確認済証は「設計図書」という計画段階の書類を審査対象としますが、検査済証は「実際の建築物」そのものを検査対象としています。確認済証は建築主事または指定確認検査機関が申請受理後、一般的に35日以内(最大70日)で交付されますが、検査済証は工事完了日から4日以内に申請し、申請受理から7日以内に検査が実施され交付されます。
参考)建築物の「確認済証」と「検査済証」の違い

建築基準法では、確認済証と検査済証の両方が建築工事において義務付けられています。確認済証がなければ着工できず、検査済証がなければ建物を使用することはできません。これは建築基準法の目的である「国民の生命、健康および財産を保護するため」の最低限の基準を確保するための仕組みです。
参考)住宅の「建築確認済証」と「検査済証」

検査済証の取得タイミングと手続き

検査済証は、建築工事の完了検査を経て交付される最終的な証明書です。建築主は工事完了日から4日以内に完了検査を申請する義務があり、この申請を受理した建築主事または指定確認検査機関が7日以内に検査を実施します。完了検査では、建築確認時に提出された図面通りに建物が建てられているかを目視や実測によって確認し、一戸建て住宅の場合は通常30分から1時間程度の所要時間となります。
参考)検査済証とは?ない場合のリスクやもらえる時期・場所を徹底解説…

完了検査に合格すると検査済証が交付されますが、この書類は建物の引き渡し時にハウスメーカーや施工会社から他の書類とともに渡されるのが一般的です。検査済証は建物の適法性を証明する重要な書類であり、将来的に不動産売却やリフォーム、増改築を行う際に必要となります。検査済証は一度紛失すると再発行ができないため、受け取った後は厳重に保管しなければなりません。
参考)完了検査とは?流れ・必要書類・チェック項目をわかりやすく紹介…

書類に不備がある場合や現場の状況が申請内容と異なる場合は、検査に不合格となり再申請が必要となります。この場合、検査済証の交付までの期間が延びることになるため、施工段階から確認申請書との整合性を保つことが重要です。​

確認済証の申請期間と交付プロセス

確認済証は建築確認申請を行った後に交付される書類で、基本的に申請受理後35日以内に交付されます。ただし、建築物省エネ法に基づく適合性判定が必要な場合や、申請内容が複雑な場合は最大70日程度かかることもあります。審査期間は申請書類の正確性、建物の構造の複雑さ、審査機関の混雑状況、修正の必要性などによって大きく変動します。
参考)建築確認済証とは?いつもらえる?取得時期と日数に影響する要因…

確認済証の交付を受けるためには、建築主が特定行政庁の建築主事または民間の指定確認検査機関に対して建築確認申請を行う必要があります。申請書類に不備がある場合は再申請が求められ、交付がさらに遅れることになります。そのため、申請前に必要な書類を漏れなく準備し、設計者や施工会社と綿密な連携を取ることで、スムーズな取得が可能となります。
参考)確認済証とは?建築確認申請の流れや検査済証との違いを解説

確認済証は着工の前提条件となるため、交付を受けずに工事を開始することは建築基準法違反となります。具体的なスケジュールについては、設計者や施工会社に確認することが重要です。​

検査済証と確認済証が必要な場面

検査済証と確認済証は、それぞれ異なる場面で必要となります。確認済証は工事着工の前提条件であり、これがなければ建築工事を開始することができません。一方、検査済証は建物の使用開始や不動産取引、金融機関からの融資実行に必要となります。
参考)検査済証とは何か?検査済証がない物件のリスクと対策

不動産売却時には、検査済証の有無が取引に大きく影響します。検査済証がない物件は違法建築の可能性を疑われ、買主が敬遠する傾向にあるため、売却が困難になったり相場より安い価格でしか売れなかったりするリスクがあります。また、2003年には国土交通省が検査済証のない建物への融資を控えるよう通達を出しており、現在でも多くの金融機関は住宅ローン申請時に検査済証の提出を求めています。
参考)検査済証とは?検査済証がない場合のリスクと対処法

増改築や用途変更を行う際にも検査済証が必要です。検査済証がないと建物の法令適合性を証明できないため、役所から新たな確認申請を受理してもらえない場合があります。このように、検査済証と確認済証は建築物のライフサイクル全体において重要な役割を果たす書類です。
参考)検査済証がない状態で不動産売却は可能?検査済証の重要性につい…

検査済証・確認済証の紛失と代替手段

検査済証と確認済証は、いずれも紛失しても再発行ができない書類です。一度紛失すると二度と同じ証明書を入手できないため、交付を受けた際には厳重に保管する必要があります。
参考)検査済証とは?ないとどうなる?再発行はできる?確認済証との違…

紛失した場合の代替手段として、「台帳記載事項証明書」を発行することができます。台帳記載事項証明書は、特定行政庁や指定確認検査機関が保管している建築確認台帳の記載内容を証明する書類で、確認済証や検査済証の交付記録が記載されています。この証明書は建築主事や指定確認検査機関に申請することで取得できます。
参考)建築検査済証をもらってない・紛失した場合の対処方法とは?確認…

台帳記載事項証明書は検査済証や確認済証そのものではありませんが、建物が適法に建築されたことを示す証拠となり、不動産売却時や増改築の際に代用できる場合があります。ただし、金融機関や買主によっては台帳記載事項証明書では不十分と判断されることもあるため、可能な限り原本を紛失しないよう注意が必要です。
参考)検査済証がない状態で不動産売却は可能?検査済証の重要性なども…

検査済証がない建物の実務的リスクと対応策

検査済証がない建物には複数の実務的リスクが存在します。まず、住宅ローンなどの融資が受けにくくなるという問題があります。多くの金融機関は融資審査時に検査済証の提出を求めており、検査済証がないと審査が通らない可能性が高くなります。
参考)検査済証がない中古物件はどうしたらいいのか?|中古住宅をリフ…

また、増築や用途変更など追加工事を行う際に確認申請を受け付けてもらえないリスクもあります。検査済証がない建物は法令適合の証明がないため、役所から新たな工事の許可を得ることが困難になります。さらに、売却時には違法建築の疑いを持たれ、買い手がつきにくくなったり、相場より低い価格でしか売却できなくなったりする可能性があります。
参考)検査済証がない建物を購入するリスクとは? - ソライチMAG…

興味深いことに、築年数が古い中古住宅では検査済証が交付されていない物件も多く存在します。国土交通省のデータによると、平成10年(1998年)の完了検査受検率は40%未満、それ以前は20%以下でした。つまり、築20年を超える中古住宅では、検査済証がない物件も珍しくありません。
参考)不動産売却時の「検査済証」の重要性とない場合の対処法について…

国土交通省の完了検査受検率に関する統計データ - 年代別の検査済証取得状況の詳細
検査済証がない物件を取り扱う際は、台帳記載事項証明書を取得して建物の適法性を可能な限り証明することが重要です。また、買主には検査済証がないことによるリスクを明確に説明し、価格調整なども含めて誠実に対応することが求められます。​