

回転体を回す「回転力」としてのトルクは、円盤の半径rの位置に接線方向の力Fが働くとき、トルク \(T\) を \(T=F r\) として表せます。
単位はN・mで、ここでのmは「移動距離」ではなく「回転中心からの距離(腕の長さ)」なので、同じN・m表記でも直線仕事のN・m(J)と混同しないのが安全です。
建築現場の感覚に落とすと「レンチをどれだけの力で、どれだけ長い腕で押したか(引いたか)」がそのままトルクになり、延長パイプを付けると同じ力でもトルクが増えます。
具体的な計算の段取りは次のとおりです。
「力の方向」も重要です。接線方向からずれると有効成分が減り、同じ力でも実際の締付け効果が下がるため、“押しているのに締まらない”が起きます(現場ではレンチ角度のズレとして出ます)。
参考)https://www.washimo-web.jp/Technology/Statics/No10/Statics10.htm
モータや電動工具の話になると、トルク単体ではなく「回転数」と「動力(出力)」の組で見積もると破綻しにくいです。
回転運動の動力は、角速度 \(\omega\) を使って \(P=\omega T\) と表され、回転数n(1秒あたりの回転数)なら \(\omega=2\pi n\) なので、\(P=2\pi n T\) の形になります。
実務でよく見るrpmを使う式として、パワー(kW) = \(2\pi \times\) トルク(N・m) \(\times\) 回転数(rpm) / 60 / 1000 が使われます。
この式が役に立つ場面は、例えば次のようなときです。
注意点として、電動工具やモータは「定格点」があり、負荷をかけると回転数が落ちていく特性を持つため、計算上のトルクと実際の作業点が一致しないことがあります(実務はトルク-回転数特性の確認が前提になります)。
参考)DCモータにおけるトルクと回転数の関係 - ユニテック株式会…
締付けトルクの現場計算は、基本式T=F×距離の「距離」をレンチ長に置き換えると理解が速いです。
例として、締付腕力200Nで、ナット芯から手の中指までの距離が180mm(0.18m)なら、トルクは36N・mになる計算例が示されています。
つまり「人の力が弱いから締められない」だけでなく、「持つ位置が内側すぎて腕が短い」だけでもトルク不足になり得ます。
一方で、延長管(パイプ)を付ける運用は“狙ったトルクを超えやすい”ので、次のような事故パターンに注意が必要です。
締付けは「トルク=軸力」ではない点も重要です。トルクは摩擦(ねじ面・座面)に大きく消費され、同じトルクでも潤滑の有無などで軸力が変わり、結果として緩みやすさ・座屈・破断に差が出ます。
参考)https://torque-system.jp/technical/conversion
図面・仕様書・工具・計測器で単位が混在すると、計算式自体は正しくても入力値がズレて事故になります。
例えば、1N・m=0.1019716kgf・m、1kgf・m=9.806652N・mという換算で説明されており、kgf系を使うときは特に注意が必要です。
また、cN・mのような小さい単位も現場で出てきますが、100cN・m=1N・mという関係が示されています。
単位換算で混乱しやすいポイントは次のとおりです。
単位換算は暗算で済ませず、メーカーの換算表や換算ツールを使って「単位込みで控える」運用が堅いです。
参考)単位換算/整備作業でよく使われるトルク、長さ・重さ、圧力を自…
参考:トルク単位の換算(cN・mとN・mの関係など、単位ミス防止に直結)
https://www.tohnichi.co.jp/faqs/detail/47
設計や選定では「理想式のトルク」だけでなく、摩擦や外乱を見込んだ“必要トルク”として評価するのが実務的です。
例えば、必要トルクTsをTs=Fs×L(必要な力×回転中心からの長さ)と置いたうえで、摩擦や重力など抵抗負荷がある場合に、余裕係数Kを用いてTR=K×FR×Lとする考え方が示されています。
余裕係数の例として「負荷変動なしK=2、負荷変動ありK=5」という目安が提示されており、“計算上は足りているのに動かない”を防ぐ発想として有効です。
建築の現場に置き換えると、次のような「見えない抵抗」をトルクに含めて考えると事故が減ります。
「計算できるトルク」と「目的を達成する必要トルク」は同じではない、という前提を持つと、工具選定(余裕)・施工手順(清掃や潤滑)・検査(再現性)まで一本の線で説明できます。
参考)https://www.ckd.co.jp/kiki/sc/file/4416