塗装リフティングとは現象原因対策解決方法

塗装リフティングとは現象原因対策解決方法

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塗装リフティングとは

塗装リフティングの基本知識
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現象の特徴

上塗り塗料により下塗り塗膜が縮れ、浮き上がる現象

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発生条件

塗り重ね作業時のみ発生、1回塗りでは起こらない

🛠️
対策の重要性

発生後は塗膜剥離が唯一の解決方法

塗装リフティング現象の定義と外観

リフティング現象は、上塗り塗料が下塗り塗膜を侵食し、縮れたり浮き上がったりする塗装欠陥です。「ちぢみ」や「ちぢれ」とも呼ばれ、塗装面に小さなシワ模様が現れるのが特徴的です。

 

この現象は塗装直後(通常1分以内)に発生し、以下のような外観を示します。

  • シワ状の凹凸模様
  • 塗膜の部分的な浮き上がり
  • 表面の不均一な収縮
  • 下地が透けて見える箇所

リフティングは塗り重ね作業でのみ発生し、1回塗りの場合は起こりません。この点が他の塗装欠陥との大きな違いです。

 

塗装リフティング発生原因の詳細分析

リフティング現象の主な原因は以下の3つに分類されます。
1. 溶剤の影響

  • 上塗り塗料に含まれる強溶剤(トルエンキシレン等)
  • 下塗り塗膜の溶解力不足
  • 溶剤の浸透による塗膜軟化

2. 乾燥不良

  • 下塗り塗料の乾燥時間不足
  • 塗り重ね間隔の短縮
  • 環境条件(温度・湿度)の影響

3. 塗料の相性問題

  • 異種塗料の組み合わせ
  • 強溶剤形と弱溶剤形の混在
  • 硬化収縮率の差異

特にフタル酸樹脂塗料使用時にリフティングが発生しやすく、これは速乾性を持つ反面、下地を侵しやすい性質があるためです。

 

日本ペイント株式会社の技術資料では、塗膜の乾燥状態による溶剤抵抗性の違いが詳しく解説されています。

 

https://www.nipponpaint.co.jp/biz1/large/pdf/tech11.pdf

塗装リフティング対策の実践的手法

効果的なリフティング対策は予防適切な塗料選定が鍵となります。

 

予防策の実践

  • 塗料組み合わせの確認
  • 下塗り:弱溶剤系、上塗り:強溶剤系の組み合わせを避ける
  • 同一メーカーの推奨システムを使用
  • 塗料メーカーの適合表を必ず確認
  • 乾燥時間の管理
  • 指触乾燥だけでなく、硬化乾燥まで待つ
  • 低温時は特に乾燥時間を延長
  • 膜厚測定による乾燥状態の確認
  • 塗装環境の最適化
  • 温度15℃以上、湿度85%以下での作業
  • 十分な通風確保
  • 朝露や結露の影響を避ける

技術的な対策
塗装業界では、大信ペイントの「レスタック」のようなリフティング防止専用塗料も開発されています。これらの塗料は従来のフタル酸樹脂塗料の利点を維持しながら、リフティング現象を抑制する設計となっています。

 

塗装リフティング対処法と修復手順

リフティングが発生した場合の対処は完全な塗膜除去が唯一の解決方法です。

 

修復作業手順

  1. 不良箇所の特定
    • 全面的な点検実施
    • 軽微な症状箇所の見落とし防止
    • 写真記録による状況把握
  2. 塗膜剥離作業
    • スクレーパーによる物理的除去
    • ケレン作業での表面調整
    • 旧塗膜の完全除去確認
  3. 下地処理
    • 素地の清掃・脱脂
    • 必要に応じた下地調整材の使用
    • 表面粗さの均一化
  4. 再塗装の実施
    • 適切な塗料システムの選定
    • 十分な乾燥時間の確保
    • 段階的な膜厚管理

コスト面での影響
リフティング修復には初期塗装費用の1.5〜2倍のコストがかかることが一般的です。材料費だけでなく、足場の再設置や作業工程の延長により、総工費が大幅に増加します。

 

塗装リフティングの業界動向と独自対策

近年の塗装業界では、IoT技術を活用した乾燥管理システムが注目されています。温度・湿度センサーと連携した自動管理により、最適な塗り重ねタイミングを判定する技術が実用化されつつあります。

 

革新的な対策技術

  • マイクロカプセル技術
  • 溶剤の徐放制御
  • 塗膜内部での化学反応制御
  • 相溶性の向上
  • ナノ粒子添加剤
  • 塗膜の物理的性質改善
  • 溶剤浸透の抑制
  • 硬化促進効果
  • AI診断システム
  • 画像解析による早期発見
  • 予測アルゴリズムの活用
  • 最適な対策提案

環境配慮型の対策
水性塗料の技術向上により、溶剤系塗料特有のリフティングリスクを根本的に解決する動きも活発化しています。特に建築用途では、VOC削減と品質向上を両立する製品開発が進んでいます。

 

業界団体による技術指針では、作業者の技能向上と併せて、科学的根拠に基づく品質管理の重要性が強調されています。従来の経験則依存から、データドリブンな施工管理への転換が求められています。

 

これらの技術革新により、リフティング現象は将来的に大幅に減少すると予想されており、塗装業界全体の品質向上に寄与することが期待されています。