売れない家の相続放棄手続きと処分方法

売れない家の相続放棄手続きと処分方法

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売れない家の相続放棄

売れない家の相続放棄の基本知識
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相続放棄の原則

売れない家のみを放棄することはできず、全財産を放棄する必要がある

手続き期限

相続開始を知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所で手続きが必要

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管理義務

相続人全員が放棄しても管理義務は残る可能性がある

売れない家の相続放棄における法的制約

売れない家を相続放棄する際の最も重要な法的制約は、部分的な相続放棄ができないという点です。民法第896条により、相続人は被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継することが定められており、価値のある自宅だけを相続して売れない土地のみを放棄することは法的に不可能です。

 

この制約は実務上、多くの相続人にとって選択を困難にします。例えば、被相続人が都市部の自宅(価値2000万円)と地方の売れない山林(負の価値)を所有していた場合、山林を放棄するためには価値のある自宅も同時に放棄しなければなりません。

 

相続放棄を行う場合は、相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内に家庭裁判所への申述が必要です。この期間を過ぎると、法定単純承認とみなされ、相続放棄できなくなるため注意が必要です。

 

売れない家の相続放棄後の管理責任

相続放棄を行った後でも、売れない家の管理責任が完全に消滅するわけではありません。これは意外に知られていない重要なポイントです。

 

相続人全員が相続放棄を行った場合、相続財産管理人の選任が必要になります。この管理人の報酬は通常、相続財産から支払われますが、売れない家のような負の財産しかない場合は、申立人が負担することになる可能性があります。

 

状況 管理責任 費用負担
一部の相続人のみ放棄 残りの相続人が管理 相続した人が負担
全員が相続放棄 相続財産管理人が管理 申立人または相続財産から

特に、売れない家を現に管理している相続人は、相続放棄後も「相続財産管理人又は相続人に対して相続財産を引き渡すまでの間」は管理を継続する義務があります。これは民法第940条に定められた義務で、固定資産税の支払いや建物の安全管理などが含まれます。

 

売れない家の相続放棄と固定資産税の関係

相続放棄が有効に成立した場合、固定資産税の納税義務は原則として消滅します。これは相続放棄の大きなメリットの一つですが、実務上は複雑な問題も存在します。

 

固定資産税は毎年1月1日現在の所有者に課税されるため、相続放棄が年の途中で成立した場合でも、その年の固定資産税は全額課税される可能性があります。また、相続人全員が相続放棄し、相続財産管理人が選任されるまでの間は、事実上誰も納税義務を負わない状態になり、自治体にとっても課税の執行が困難になります。

 

実際に、地方自治体の中には売れない家の相続放棄が増加していることを受けて、空き家対策の見直しや税制改正の検討を進めているところもあります。これは不動産業界にとっても無視できない動向といえるでしょう。

 

売れない家の相続放棄手続きの実務的な注意点

相続放棄の手続きを進める際には、「単純承認」とみなされる行為を避けることが極めて重要です。故人の財産を売却したり、預金口座を解約したり、借金の返済を行ったりすると、相続する意思があると判断されて相続放棄ができなくなってしまいます。

 

・遺品整理での家財道具の処分
・故人名義の公共料金の支払い
・少額でも現金の使用
・不動産の賃貸借契約の解約
これらの行為は一見問題なさそうに見えますが、法的には単純承認とみなされるリスクがあります。特に、売れない家の場合は空き家状態になることが多く、防犯上の理由で施錠を変更したり、庭木の剪定を行ったりする必要が生じがちですが、これらの行為も管理行為として単純承認と判断される可能性があります。

 

相続放棄を検討している場合は、これらの行為を行う前に必ず専門家に相談することをお勧めします。

 

売れない家の相続放棄に対する不動産業者の新しいアプローチ

近年、売れない家の相続放棄問題に対して、不動産業者が新しいアプローチを取るケースが増えています。これは従来の媒介業務とは異なる、より包括的なコンサルティング業務といえるでしょう。

 

例えば、相続放棄を検討している相続人に対して、買取保証付きの査定サービスを提供する業者が現れています。これは通常の査定よりも低い価格であっても、確実に買取を行うことを保証するサービスで、相続人は相続放棄と買取のどちらが有利かを具体的な数値で比較検討できます。

 

また、相続放棄専門の不動産コンサルティングを行う業者も増えており、単なる売却仲介ではなく、相続人の財産状況全体を分析し、最適な選択肢を提案するサービスが注目されています。

 

このようなサービスは、相続人にとって非常に有益である一方で、不動産業者にとっても新しい収益機会を創出しています。従来は「売れない家」として敬遠されがちだった物件も、適切なアドバイスと組み合わせることで、顧客満足度の高いサービスを提供できる可能性があります。

 

実際に、このような取り組みを行っている業者の中には、相続関連業務の売上が全体の30%以上を占めるところも出てきており、今後さらに重要な事業分野になると考えられます。

 

家庭裁判所の相続放棄手続きの詳細な流れ