ウレタン系防水材の種類と特徴
ウレタン系防水材の基本情報
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日本で最も普及
ウレタン系防水材は日本の建築物で最も採用されている防水工法です。バルコニーや屋上など幅広く使用されています。
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優れた防水性能
ポリオールとイソシアネートの化学反応により形成され、耐圧性・防水性・弾力性に優れた特性を持っています。
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耐用年数
適切な施工とメンテナンスで12〜13年程度の耐用年数を実現。トップコートは3〜5年ごとの塗り替えが必要です。
ウレタン系防水材は、バルコニーやマンションの共用施設など防水が必要な場所に広く使用されている防水材です。正式名称は「ポリウレタン」といい、ポリオール成分とイソシアネート成分が反応して形成するウレタン結合をもつ化合物です。この二つの成分を反応させることで作られるポリマー(樹脂)が、優れた防水性能を発揮します。
ウレタン系防水材は比較的安価で現場での作業が容易なうえ、施工可能箇所も多いことから、日本の建築現場で最も採用されている防水工法となっています。その用途は一般住宅のバルコニーだけでなく、マンションの共用部分である開放廊下、階段、さらには屋上駐車場など多岐にわたります。
ウレタン防水の特徴として、液体状の材料を塗布して防水層を形成するため、複雑な形状や段差のある場所にも対応できる点が挙げられます。また、既存の防水層の上から重ね塗りができるため、廃材の処分費用がかからないというメリットもあります。
ウレタン系防水材の1液型と2液型の違いと特徴
ウレタン系防水材は大きく分けて「1液型」と「2液型」の2種類があります。それぞれに特徴があり、用途や施工条件によって使い分けられています。
【1液型ウレタン防水材の特徴】
1液型ウレタン防水材は、主剤のイソシアネートと硬化剤のポリオールが既に混合された状態で市販されています。空気中の水分と反応して硬化するため、施工が非常に簡単です。
- メリット。
- 作業が非常に容易
- 特別な機械や道具が不要
- DIYでも施工可能
- デメリット。
- 硬化まで24時間程度と時間がかかる
- 厚膜形成には複数回の塗布が必要
- 耐久性が2液型よりやや劣る
1液型は主にベランダなどの小規模な防水工事や、比較的負荷のかからない場所に使用されることが多いです。一般住宅のDIY防水リフォームでも使用されますが、プロが使用する製品と市販品では性能に差があることを理解しておく必要があります。
【2液型ウレタン防水材の特徴】
2液型ウレタン防水材は、主剤と硬化剤を施工直前に混合して使用します。さらに「手塗りタイプ」と「吹き付けタイプ」の2種類に分類されます。
- 手塗りタイプ。
- ポリイソシアネートを主成分とする主剤と、ポリオールを主成分とする硬化剤を混合
- 圧送機を使用して供給するシステムがあり、作業効率が向上
- 均一な品質のウレタン防水材が供給可能
- 吹き付けタイプ(超硬化ウレタン)。
- 専用の機械を用いて主剤と硬化剤を混合しながら吹き付け
- 塗布後、数十秒で硬化し始める
- 勾配がついた部位や、人通りの多い廊下や階段などに適している
- 橋梁や蓄熱層、地下防水などの土木分野でも使用
2液型は1液型に比べて硬化が速く、より強固な防水層を形成できるため、大規模な防水工事や負荷のかかる場所に適しています。特に吹き付けタイプの超硬化ウレタンは、耐薬品性、耐熱性、ひび割れ追従、耐摩耗性に優れており、下水関連施設や、海洋構造物、鋼製のタンクなど過酷な環境下でも使用されています。
両タイプの選択は、施工面積、要求される耐久性、施工環境、予算などを総合的に判断して決定することが重要です。
ウレタン系防水材の密着工法と通気緩衝工法の選び方
ウレタン系防水材を使用した防水工事には、「密着工法」と「通気緩衝工法」の2つの施工方法があります。それぞれの特徴と選び方について解説します。
【密着工法の特徴】
密着工法は、ウレタン樹脂を下地に直接塗る工法です。下地との密着性を高めるためにプライマーを塗布し、その上にウレタン防水材を塗布します。
- 適している条件。
- 新築や劣化の程度が軽い建物
- 下地が十分に乾燥している場合
- 工期を短くしたい場合
- 予算を抑えたい場合
- 施工手順。
- 施工面を高圧洗浄できれいにする
- ひび割れなどがあれば補修する
- 目地のシーリングなど、下地処理をする
- プライマーを塗装
- ウレタン防水材を塗装
- 補強布を貼り、さらにウレタン防水材を塗装
- 防水層を厚くするため、防水材を重ね塗りする
- トップコート(防水層を守るための層)を塗装
- メリット。
- 比較的安価(1㎡あたり3,000円~7,500円が相場)
- 工期が短い
- 施工が比較的簡単
- デメリット。
- 下地の影響を大きく受ける
- 下地の処理が不十分だと防水層にひび割れが発生する恐れがある
- 下地に水分があると膨れが発生する可能性がある
【通気緩衝工法の特徴】
通気緩衝工法(絶縁工法とも呼ばれる)は、たくさんの穴が空いている通気緩衝シートを貼り付け、その上からウレタン防水材を塗装する工法です。
- 適している条件。
- 築年数が古い建物
- 雨漏りなどで水分を含んだ下地
- ルーフバルコニー、陸屋根、マンションの屋上など面積が広い場所
- 長期的な耐久性を重視する場合
- メリット。
- 下地の割れが防水層に反映されにくい
- 下地の水分による膨れを防止できる
- 長期的な耐久性が高い
- デメリット。
- 初期費用が高い(1㎡あたり5,500円~が相場)
- 施工が複雑で技術が必要
- 工期がやや長くなる
【選び方のポイント】
- 建物の状態:古い建物や水分を含んでいる可能性がある場合は通気緩衝工法が適しています。
- 予算:初期コストを抑えたい場合は密着工法、長期的なメンテナンスコストを抑えたい場合は通気緩衝工法を検討しましょう。
- 施工面積:広い面積の場合、通気緩衝工法の方が長期的には有利になることが多いです。
- 要求される耐久性:高い耐久性が求められる場合は通気緩衝工法が推奨されます。
通気緩衝工法は、防水材と下地の間にシートが介在するため、下地を反映しての破断や下地の水分による膨れを防ぐことが可能です。この工法が採用されて以降、小規模の改修が主流であったウレタン防水は、新築や大規模な防水改修工事にも採用されるようになりました。
ウレタン系防水材のトップコート種類と選び方
ウレタン系防水材の弱点は、紫外線にさらされることで変色する性質があり、また硬化する性質もあるため、防水層のひび割れや劣化のおそれがあることです。これらの弱点を補うために、防水層の上に「トップコート」を塗布します。トップコートの種類と選び方について解説します。
【トップコートの役割】
トップコートは、ウレタン防水層を保護するために塗布する仕上げ材です。以下のような重要な役割を果たします。
- 紫外線からの保護:ウレタン防水材は紫外線により劣化するため、トップコートで保護します。
- 防水層の保護:雨水や汚れから防水層を守ります。
- 美観の維持:色あせや変色を防ぎ、美観を保ちます。
- 粘着性の抑制:ウレタン防水材は粘着性をもつため、トップコートでゴミやほこりの付着を防ぎます。
【トップコートの種類】
ウレタン防水工法で使用されるトップコートには、主に以下の種類があります。
- アクリルウレタン系トップコート
- 最も一般的に使用されているトップコート
- 価格が比較的安価
- 耐用年数:3~5年程度
- 特徴:施工性が良く、一般的な環境下での使用に適している
- フッ素系トップコート
- アクリルウレタン系に比べて耐久性に優れている
- 耐用年数:7~10年程度
- 特徴:耐候性、耐汚染性に優れているが、コストが高い
- シリコン系トップコート
- 中程度の耐久性
- 耐用年数:5~7年程度
- 特徴:撥水性に優れ、汚れが付きにくい
- 遮熱タイプのトップコート
- 特殊顔料を配合し、太陽光の熱を反射
- 表面温度の上昇を抑制する効果がある
- 省エネ効果が期待できる
【トップコートの選び方】
トップコートを選ぶ際は、以下のポイントを考慮しましょう。
- 設置環境:直射日光が強く当たる場所では、耐候性の高いフッ素系やシリコン系が適しています。
- 予算:初期コストを抑えたい場合はアクリルウレタン系、長期的なコストパフォーマンスを重視するならフッ素系が良いでしょう。
- メンテナンス頻度:頻繁なメンテナンスが難しい場所では、耐久性の高いフッ素系が適しています。
- 美観:色の保持性を重視する場合は、フッ素系やシリコン系が優れています。
- 省エネ性能:夏場の室内温度上昇を抑えたい場合は、遮熱タイプのトップコートが効果的です。
トップコートの塗り替え時期の目安は、色褪せ、表面のひび割れ、防水材の膨れや剥がれなどの劣化が見られた時です。年数にかかわらず、これらの症状が見られたらすぐに点検の依頼をすることをおすすめします。雨水が侵入する前に早めに対応することで、大規模な修繕を防ぐことができます。
ウレタン系防水材の施工手順と注意点
ウレタン系防水材の施工は、適切な手順と技術が求められます。ここでは、一般的なウレタン防水工法の施工手順と、各工程での注意点について解説します。
【施工前の準備と下地処理】
- 現場調査と計画
- 既存の防水層の種類と状態を確認
- 下地の含水率チェック(高含水率の場合は通気緩衝工法を検討)
- 必要な材料量の算出(塗布量は1m²あたりの規定量×実際の面積)
- 下地の清掃と補修
- 高圧洗浄機で汚れやほこりを除去
- モルタルやコンクリートのひび割れ補修
- 浮き・剥がれ部分の除去と補修
- 十分な乾燥時間の確保(下地の湿気は防水層の膨れの原因に)
- 目地処理とシーリング
- 伸縮目地やコーナー部分のシーリング
- 配管貫通部などの処理
- シーリング材の硬化を十分に待つ
【本施工の手順】
4. プライマー塗布
- 下地との密着性を高めるためのプライマー塗布
- 均一に塗布し、規定の乾燥時間を守る
- 気温や湿度によって乾燥時間が変わるため注意
- ウレタン防水材の塗布(1層目)
- 規定の塗布量を守る(薄すぎると防水性能が低下)
- ローラーや刷毛で均一に塗布
- 2液型の場合は、混合比率と可使時間を厳守
- 補強布の貼り付け
- 立ち上がり部や角部など応力がかかる箇所に補強布を貼付
- しわやたるみがないように注意
- 補強布が浮かないよう密着させる
- ウレタン防水材の塗布(2層目以降)
- 1層目が硬化した後に塗布
- 1層目と塗り方向を変えて塗布すると均一になる
- 規定の膜厚になるまで重ね塗り
- トップコート塗布
- ウレタン防水層が完全に硬化した後に塗布
- 均一に塗布し、端部まで丁寧に仕上げる
- 気温や湿度に応じた乾燥時間を確保
【施工時の注意