
アクリル系防水材は、成分構成によって一液タイプと二液タイプに大別されます。それぞれに特徴があり、用途や施工条件によって選択する必要があります。
一液タイプのアクリル系防水材は、そのまま使用できる手軽さが最大の特徴です。アトレーヌ水性防水材のような製品は、硬化不良や可使時間を気にせず、ローラーで容易に施工できます。また、水性一液タイプは非危険物であるため、火気や保管・運搬の問題がなく、安全性に優れています。乾燥性に優れた特殊アクリル樹脂を使用しているため、ウレタン防水と比較して工期短縮が可能です。23℃・湿度50%の条件下では、5工程でも1日で完了するという優れた特性を持っています。
一方、二液タイプのアクリル系防水材は、アロンコート®SQのように、カチオン性アクリルゴムエマルション(ベース)と無機質硬化剤(セッター)を混合して使用します。二液を混ぜることで化学反応が起き、より強固な防水層を形成する特徴があります。二液タイプは一液タイプよりも耐久性や防水性能が高い傾向にありますが、施工時には混合比率や可使時間に注意が必要です。
選択のポイントとしては、簡易的な防水や小規模な補修には一液タイプ、より高い耐久性や防水性能が求められる大規模な工事には二液タイプが適しているといえるでしょう。
アクリル系防水材には水性タイプと溶剤タイプがあり、それぞれに異なる特性を持っています。この違いを理解することで、適切な防水材の選択が可能になります。
水性タイプのアクリル系防水材は、水を分散媒とした環境にやさしい防水材です。アトレーヌ水性防水材やアロンコート®SQなどが代表的な製品で、VOC(揮発性有機化合物)の放出が少なく、臭いも控えめです。水性タイプの大きな特徴として、ホルムアルデヒド、トルエン、キシレンを含まない環境対応型であることが挙げられます。また、非危険物であるため火災のリスクが低く、保管や運搬も容易です。
DNTビューアクリルのような水性一液反応硬化型アクリル樹脂塗料は、3次元構造の強靭な塗膜を形成するため、溶剤系アクリル樹脂塗料を超える耐水性、耐アルカリ性、耐酸性、耐候性を発揮するものもあります。さらに、塗膜には微弾性があり、下地の微小クラックに追随する性質も持っています。
一方、溶剤タイプのアクリル系防水材は、有機溶剤を使用しているため、乾燥が速く、低温時の施工にも適しています。ただし、臭いが強く、引火性があるため、施工時には換気や火気の取り扱いに注意が必要です。
水性タイプと溶剤タイプの選択は、施工環境や季節、要求される性能によって異なります。環境への配慮や安全性を重視する場合は水性タイプ、乾燥速度や低温施工性を重視する場合は溶剤タイプが適しているでしょう。ただし、近年は環境配慮の観点から水性タイプの需要が高まっており、性能面でも溶剤タイプに劣らない製品が増えています。
アクリル系防水材は様々な用途に適用できますが、場所や目的によって最適な製品が異なります。ここでは、用途別におすすめの製品と選び方のポイントを解説します。
屋上・ベランダ向け製品
屋上やベランダは直射日光や雨水にさらされる過酷な環境です。このような場所には、耐候性と防水性に優れたアクリル系防水材が適しています。アトレーヌ水性防水材は、屋上・ベランダ・バルコニー等の建築物の防水に適しており、グレー(通常工法)とホワイト(遮熱工法)の2色から選べます。特に遮熱工法では、水性トップSGとアトレーヌ水性防水材ホワイトの組み合わせにより、ウレタン塗膜防水材に比べて表面温度を15℃(メーカー比較)下げられる効果があります。
外壁向け製品
外壁には、美観と防水性を兼ね備えた製品が求められます。アロンウオールは、外壁塗膜防水材として建物保護、美観維持、環境配慮、コストパフォーマンスの4つのコンセプトを持つ製品です。アクリルゴムの優れた柔軟性により、外壁のコンクリートなどの乾燥収縮に伴うひび割れが生じた場合でも、塗膜は破断しにくく、雨水の浸入を長期間シャットアウトする特性があります。
金属屋根向け製品
アクリル防水の最大のメリットの一つは、金属屋根や鋼構造物にも防水が可能なことです。折板屋根やトタン屋根、水槽やタンク外面にも防水することができ、シームレスな防水が可能です。これにより、ある程度の予測さえつければ確実な防水が実現できます。
選び方のポイント
アクリル系防水材を選ぶ際のポイントは以下の通りです。
これらのポイントを考慮し、用途に合った最適なアクリル系防水材を選択することが重要です。
アクリル系防水材の施工は、適切な手順と注意点を守ることで、より効果的な防水効果を得ることができます。ここでは、一般的な施工方法と施工時の注意点について解説します。
標準的な施工手順
アクリル系防水材の標準的な施工手順は以下の通りです。
施工時の注意点
アクリル系防水材を施工する際の主な注意点は以下の通りです。
これらの注意点を守ることで、アクリル系防水材の性能を最大限に引き出し、長期間にわたって効果的な防水を実現することができます。
建築物の防水工事において、アクリル系防水材とウレタン系防水材はよく比較される二大防水材です。それぞれの特性を理解し、適切な選択をすることが重要です。
成分と環境面での違い
アクリル系防水材の最大の特徴は水性タイプが多いことです。水を分散媒として使用しているため、VOC(揮発性有機化合物)の放出が少なく、環境にやさしい防水材といえます。アロンコート®SQのような製品は、VOCを大気中に放出せず、火気を使うこともなく、いやな臭いや黒煙の発生もないという特徴があります。
一方、ウレタン系防水材は従来、溶剤タイプが主流でした。溶剤タイプは有機溶剤を含むため、施工時の臭いや健康への影響が懸念されます。ただし、近年では水性ウレタン防水材も開発されており、環境面での差は縮まりつつあります。
耐久性と防水性能
アクリル系防水材とウレタン系防水材は、塗膜の強度にそれほど大きな違いはありません。どちらも適切に施工すれば、優れた防水性能を発揮します。ただし、一般的にウレタン系防水材の方が伸縮性に優れており、建物の動きに対する追従性が高いとされています。
一方、アクリル系防水材は耐候性に優れた特殊アクリル樹脂を使用しているため、ウレタン防水と違いトップコートが劣化しても定期的な塗り替えの必要がない場合があります。これにより、ライフサイクルコストの面で優位性を持つことがあります。
施工性と適用範囲
アクリル系防水材の大きな特徴として、金属屋根や鋼構造物にも防水が可能という点があります。折板屋根やトタン屋根、水槽やタンク外面にも防水することができ、シームレスな防水が可能です。
ウレタン防水は一般的に4工程で3日かかるのに対し、乾燥性に優れた特殊アクリル樹脂を使用したアクリル系防水材は、5工程でも1日で完了する場合があります(23℃・湿度50%の条件下)。この工期短縮効果は、特に改修工事において大きなメリットとなります。
選択基準
アクリル系防水材とウレタン系防水材の選択は、以下の基準で考えるとよいでしょう。
これらの基準を総合的に判断し、建物の状況や要求性能に合った防水材を選択することが重要です。