
呼び圧力5Kと10Kフランジの最も顕著な違いは、板厚(t)の差にあります。JIS規格では、呼び圧力の数値が大きくなるにつれて、フランジの板厚を厚くすることで強度を確保する設計となっています。
具体的な寸法差を呼び径別に見ると。
呼び径15A(1/2インチ)の場合
呼び径25A(1インチ)の場合
呼び径50A(2インチ)の場合
板厚の差は3〜4mm程度ですが、外径も10Kの方が大幅に大きく設計されており、これにより高圧に対する十分な強度を確保しています。
呼び圧力5Kフランジは、**0.5MPa(約5kgf/cm²)**までの圧力に対応する軽圧用フランジです。主な用途は大気圧タンクのマンホールや、ほぼ常圧のガスラインなど、比較的低圧の配管システムで使用されます。
5K規格の主要寸法(ねじ込み合フランジ)。
特に口径が大きくなるほど、重量軽減の観点から5Kを積極的に選択することが推奨されています。これは、呼び圧力が高いとフランジ重量が重くなり、特に大口径では重量への影響が顕著になるためです。
呼び圧力10Kフランジは、**1.0MPa(約10kgf/cm²)**までの圧力に対応し、日本の化学プラントで最も標準的に使用されるフランジです。バッチ系化学プラントでは、ほとんどの場合10Kフランジが選択されています。
10K規格の主要寸法(ねじ込み合フランジ)。
温度による最高使用圧力の変化も規定されており、10Kフランジの場合。
この温度係数により、高温になるほど使用可能圧力が下がる設計となっています。
溶接フランジ(突合せ溶接フランジ)における5Kと10Kの寸法差も、ねじ込みフランジと同様の傾向を示しています。溶接フランジは配管との接続において高い気密性と強度を提供し、より高圧・高温の用途に適しています。
さし込み溶接フランジ(SOH形)の重量比較。
溶接フランジでは、ハブ部分の設計により強度確保が図られており、特にハブ先端部とハブ元部の寸法設計が重要な役割を果たしています。これにより、配管との溶接部における応力集中を防ぎ、長期間の使用に耐える信頼性を確保しています。
呼び径が大きくなるにつれて、5Kと10Kの重量差・寸法差が顕著になるため、設計段階での適切な選定が建設コストや施工性に大きく影響します。
実際の配管設計において、5Kと10Kの選定では単純な耐圧性能だけでなく、施工性・メンテナンス性・コストの総合的な検討が必要です。
選定時の重要な考慮点。
意外に知られていない点として、JIS2K規格という更に低圧用のフランジも存在し、450A以上の大口径マンホール用途で使用される場合があります。これは5Kよりも更に軽量化を図る場合の選択肢となります。
最新の動向では、環境配慮やライフサイクルコスト低減の観点から、適正な呼び圧力選定により過剰設計を避ける傾向が強まっています。特に大型プラントでは、フランジ重量削減による支持鋼材量削減効果が注目されており、5K規格の採用機会が増加しています。
また、デジタル設計ツールの普及により、フランジ選定シミュレーションが高精度化し、従来経験に依存していた部分の最適化が進んでいることも、現代の配管設計における重要な変化点です。