
平成11年10月1日施行の消防法令により、誘導灯の規格が大きく変更されました。従来の長方形の「大形・中形・小形」から、表示面の縦寸法を基準とする高輝度誘導灯「A級・B級・C級」の等級別表記に変更となったのです。
🔸 旧型誘導灯の特徴
現行のLED誘導灯は正方形のコンパクト設計となり、消費電力の削減と長寿命化を実現しています。旧型の蛍光灯式誘導灯は製造が終了しており、故障時にはLED型への交換が必要となります。
特に注目すべきは、「文字だけ誘導灯」と呼ばれる最古の誘導灯です。これは「非常出口」の文字のみが表示されている機器で、現在でも一部の建物で稼働しており、マニアの間では貴重な存在として扱われています。
旧型から現行LED型への交換時に最も重要なのが、寸法の対応関係です。以下に詳細な対応表を示します。
旧型分類 | 旧型寸法 | 現行LED型 | LED寸法 | 消費電力 |
---|---|---|---|---|
大形 | 横長(40W×2) | A級 | 40cm角 | 約3W |
中形 | 横長(20W×2) | B級・BL形(20B形) | 20cm角 | 約2W |
大形 | 横長(40W×1) | B級・BH形(20A形) | 20cm角 | 約2.5W |
小形 | 横長(10W×2) | C級(10形) | 10cm角 | 約1W |
🔸 LED化による主なメリット
B級誘導灯には「BH形」と「BL形」の2種類があり、これは従来の大形誘導灯の中でも消費電力の違いに対応しています。BH形は高輝度タイプで避難口用、BL形は標準輝度タイプで通路用に適しています。
現行のLED誘導灯の価格は、C級片面型で約37,200円(税抜)から、A級片面型で約162,100円(税抜)まで幅があります。長時間定格型(60分間)は通常型(20分間)の約2倍の価格設定となっています。
旧型誘導灯からLED型への交換時に避けられないのが、設置跡の処理です。旧型機器を撤去すると、本体が接触していた壁や天井が光で焼けていたり、誘導灯設置後に塗装がされていることがあるため、リニューアルプレートの使用が必須となります。
🔧 リニューアルプレートの種類と用途
リニューアルプレートの選定時は、既設機器の品番を正確に把握することが重要です。パナソニック製品では、既設器具の品番を入力することで、対応するLED誘導灯、リニューアルプレート、吊具、ブランクプレートを自動検索できるシステムが提供されています。
プレート選定を間違えると、取り付け後に隙間が生じたり、美観を損ねる結果となります。特に既設器具の取り付け位置(壁面や天井からの距離)により、リニューアルプレートの寸法によっては取り付けできない場合があるため、事前の現場調査が必要です。
LED誘導灯への交換工事では、電気工事士資格が必要となります。また、消防法に基づく設置基準を満たす必要があるため、所轄消防署との事前協議が重要です。
⚠️ 施工時の主要チェックポイント
特に古い建物では、既設の配線や取り付け金具が劣化している可能性があります。また、旧型の誘導灯は定期的な蛍光管交換が必要でしたが、LED型では基本的に器具全体の交換となるため、保守計画の見直しが必要です。
配線工事では、LED誘導灯の低消費電力特性を活かし、一つの回路で接続できる誘導灯の台数を増やすことが可能です。これにより、配線コストの削減や施工効率の向上が期待できます。
設置場所によっては、避難口誘導灯と通路誘導灯の配置バランスを見直すことで、より効率的な避難誘導が可能となります。例えば、曲がり角の通路誘導灯位置に避難方向を示すシンボル付きの避難口誘導灯を設置することで、機器数を削減できる場合があります。
消防法により、誘導灯は定期的な点検・検査報告が義務付けられています。旧型の蛍光灯式誘導灯では、特に以下の項目に注意が必要です。
📋 旧型誘導灯の点検項目
旧型誘導灯の最大の問題は、蛍光管の交換頻度の高さです。一般的に蛍光管の寿命は約6,000~12,000時間ですが、非常用照明として常時点灯する誘導灯では、年1~2回の交換が必要となる場合があります。
また、安定器の劣化により、点灯時の異音や発熱が発生することがあります。これらの症状が現れた場合は、火災リスクを避けるため速やかにLED型への交換を検討すべきです。
LED誘導灯への交換により、保守点検の間隔を大幅に延長できます。LED素子の寿命は約40,000時間であり、年間8,760時間点灯する誘導灯でも約4.5年間は交換不要となります。
消防法違反による罰則は厳しく、使用停止命令を受けた違反者には懲役3年以下・罰金300万円以下、違反法人には罰金1億円以下が科せられます。特に旧型誘導灯を使用している建物では、定期的な点検を確実に実施し、故障時には速やかな対応が求められます。
現在、国内の照明メーカー各社では、2027年末での蛍光ランプ製造禁止決定を受けて、LED誘導灯への早期交換を推奨しています。これにより、旧型誘導灯の交換部品入手が困難になることが予想されるため、計画的なリニューアルが重要となります。