座金付きボルトの種類と特徴で建築強度向上

座金付きボルトの種類と特徴で建築強度向上

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座金付きボルトの種類と特徴

座金付きボルトの基本情報
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強度向上

座金付きボルトは面積拡大により面圧を分散し、建築物の強度を向上させます

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施工効率

座金とボルトが一体化しているため、工数削減と施工ミス防止に貢献します

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緩み防止

特殊な座金構造により、振動による緩みを効果的に防止します

座金付きボルトの基本構造と役割

座金付きボルトは、ボルト本体に座金が一体化した締結部品です。通常のボルトとは異なり、座金部分がフランジとして機能するため、フランジボルトとも呼ばれています。この構造により、ボルト単体よりも接触面積が広がり、締結時の面圧を分散させる効果があります。

 

座金付きボルトの主な役割は以下の通りです:

  • 締結部の面圧分散による母材保護
  • 締結力の均等な伝達
  • ボルトの緩み防止
  • 施工効率の向上(座金の取り付け工程省略)

特に建築現場では、柱と横架材の接合部など、高い強度が求められる箇所で重宝されます。座金部分が一体となっているため、別途座金を用意する手間が省け、部品の紛失や取り付け忘れといったヒューマンエラーも防止できます。

 

座金付きボルトのフランジ裏面には、セレートと呼ばれる凹凸が設けられていることがあります。このセレートが被締結物に食い込むことで摩擦係数が高まり、振動などによるボルトの緩みを効果的に防止する役割を果たします。

 

座金付きボルトの種類と選び方のポイント

座金付きボルトには様々な種類があり、用途や環境に応じて適切なものを選ぶことが重要です。主な種類は以下の通りです:

  1. 形状による分類
    • 丸座金付きボルト:円形の座金が付いたタイプ
    • 角座金付きボルト:四角形の座金が付いたタイプ
    • 偏芯座金付きボルト:座金の中心とボルトの中心がずれているタイプ
  2. 材質による分類
    • 鉄製(表面処理:電気亜鉛めっきなど)
    • ステンレス製(SUS304、SUS316Lなど)
    • 高強度鋼製
  3. 表面処理による分類
    • 電気亜鉛めっき
    • クロムフリー高耐食金属表面処理(プロイズなど)
    • 溶融亜鉛めっき

座金付きボルトを選ぶ際のポイントとしては、まず使用環境を考慮することが大切です。屋外や湿気の多い環境では耐食性の高いステンレス製や適切な表面処理が施されたものを選びましょう。また、必要な強度や耐力に応じた適切なサイズと材質を選定することも重要です。

 

例えば、木造建築の場合、木材の種類によって必要な強度が変わります。スギの無垢材では36.0kNまでの耐力が必要な場合があり、ヒノキ類やベイマツ類では37.0kNまで使用可能な座金付きボルトが適しています。

 

座金付きボルトの施工方法と注意点

座金付きボルトを正しく施工することで、その性能を最大限に引き出すことができます。基本的な施工手順と注意点を解説します。

 

基本的な施工手順:

  1. 適切な位置に下穴を開ける
    • 丸座金付きボルトの場合:φ60mmの座掘りが一般的
    • 偏芯座金付きボルトの場合:柱面から29mm以上の位置にφ18~φ21のボルト穴
  2. ボルトの挿入
    • ボルト本体を穴に差し込む
    • 必要に応じて仮止め用の孔を利用して仮固定する
  3. 金物の取り付け
    • ホールダウン金物などを介してナットで接合
    • 適切なトルクで締め付ける

施工時の注意点:

  • 共回り防止:座金付きボルトのナットを締める際、ボルトが一緒に回ってしまう「共回り」が発生することがあります。これを防ぐために、座金部分に設けられた仮止め用の孔を利用して仮固定することが重要です。

     

  • 適切な締付けトルク:過度な締め付けは部材を傷める原因となります。適切なトルク管理を行いましょう。

     

  • 耐力範囲内での使用:座金付きボルトは、短期基準耐力の範囲内で使用することが推奨されています。過負荷状態での使用は避けてください。

     

  • 適切な組み合わせ:ホールダウン金物など、他の建築金物と組み合わせて使用する場合は、互換性のある製品を選ぶことが重要です。

     

施工後は定期的な点検を行い、緩みや腐食がないか確認することも大切です。特に地震や強風などの後は、重要な接合部の点検を忘れないようにしましょう。

 

座金付きボルトの性能と耐力計算

座金付きボルトの性能は、建築物の構造安全性に直結する重要な要素です。適切な性能評価と耐力計算に基づいた選定が必要です。

 

性能指標:

  1. 短期許容耐力:一時的な荷重(地震や強風など)に対する耐力
    • 例:偏芯座金付ボルト36の場合、スギ無垢材で36.0kN、ヒノキ類・ベイマツ類で37.0kNの短期許容耐力
  2. 長期許容耐力:常時かかる荷重に対する耐力
    • 短期許容耐力の1/1.5~1/2程度が目安
  3. 硬度:座金部分の硬度(HV値で表示)
    • 例:高強度ステンレスボルト用座金の場合、300HV以上
  4. 引張強さ:ボルト自体の強度(N/mm²で表示)
    • 例:高強度ステンレス製の場合、800N/mm²~1000N/mm²

耐力計算においては、木造軸組工法住宅の許容応力度設計(2008年版)などの基準に基づいて算出されることが一般的です。使用する木材の樹種や品質、含水率などによっても必要な耐力は変わってきます。

 

実際の設計では、以下のような点を考慮して座金付きボルトを選定します:

  • 建物の規模や構造形式
  • 地域の風圧や積雪荷重
  • 地盤条件や地震力
  • 接合する部材の種類や寸法

特に重要な接合部では、必要耐力に対して余裕を持った設計が望ましいでしょう。また、最新の建築基準法や各種技術基準に準拠した設計を心がけることが重要です。

 

日本建築学会「木質構造設計規準・同解説」の詳細についてはこちらが参考になります

座金付きボルトの最新技術と環境配慮型製品

建築業界でも環境配慮や施工効率の向上が求められる中、座金付きボルトにも様々な技術革新が進んでいます。最新の技術動向と環境配慮型製品について紹介します。

 

最新技術:

  1. クロムフリー高耐食金属表面処理

    環境負荷の高い六価クロムを使用しない「プロイズ」などの表面処理技術が普及しています。従来の表面処理と同等以上の耐食性を保ちながら、環境への影響を最小限に抑えられる点が特徴です。例えば、PZ偏芯座金付ボルト36などの製品では、この技術が採用されています。

     

  2. 高強度ステンレス製座金付きボルト

    従来のステンレス製品よりも高い強度を持つ製品が開発されています。SUS316L製で耐食性に優れ、引張強さが800N/mm²~1000N/mm²に達するものもあります。海岸近くや腐食環境の厳しい場所での使用に適しています。

     

  3. 偏心ロックワッシャ技術

    座金の一部を偏心させることで、ボルトの緩み止め効果を高める技術です。NAS式振動試験やユンカー式振動試験をクリアした製品も登場しており、振動の多い環境でも安定した締結力を維持できます。

     

環境配慮型製品の特徴:

  • リサイクル可能な素材の使用

    解体時に分別しやすく、リサイクル率の高い素材を使用した製品が増えています。

     

  • 長寿命化

    耐食性や耐久性を高めることで、交換頻度を減らし廃棄物を削減する取り組みが進んでいます。

     

  • 省資源設計

    必要な強度を保ちながら、材料使用量を最適化した軽量設計の製品も開発されています。

     

  • 有害物質フリー

    RoHS指令などに対応し、有害物質を含まない製品が標準化されつつあります。

     

これらの最新技術を採用した座金付きボルトは、従来品と比較して耐久性や施工性が向上しているだけでなく、環境負荷の低減にも貢献しています。建築物のライフサイクルコスト削減の観点からも、これらの製品の採用を検討する価値があるでしょう。

 

また、BIM(Building Information Modeling)との連携により、設計段階から適切な座金付きボルトの選定と配置を行うことで、より効率的な施工計画が可能になっています。

 

経済産業省のエコデザイン関連情報はこちらで確認できます

座金付きボルトのメンテナンスと耐久性向上のコツ

座金付きボルトは適切なメンテナンスを行うことで、その性能と耐久性を長期間維持することができます。特に建築物の重要な構造部分に使用されている場合、定期的な点検とメンテナンスは安全性確保の観点からも欠かせません。

 

定期点検のポイント:

  1. 緩みの確認
    • 目視点検:座金と被締結物の間に隙間がないか
    • 触診:ボルトを指で軽く回してみて緩みがないか
    • トルクレンチによる確認:必要に応じて適正トルクの確認
  2. 腐食状態の確認
    • 表面の錆や変色
    • 座金部分の腐食や劣化
    • ボルト本体の腐食状態
  3. 周辺部材の状態確認
    • 木材のめり込みや割れ
    • 金物との接合部の変形
    • 周辺部材の腐食や劣化

耐久性向上のためのメンテナンス方法:

  • 定期的な増し締め

    木造建築の場合、木材の乾燥収縮によってボルトが緩むことがあります。特に新築後1~2年は注意が必要です。適切なトルクでの増し締めを行いましょう。

     

  • 防錆処理

    露出している座金付きボルトには、定期的に防錆剤を塗布することで耐久性を向上させることができます。特に海岸近くや湿気の多い環境では重要です。

     

  • 損傷部品の交換

    著しい腐食や変形が見られる場合は、速やかに新品と交換することをお勧めします。部分的な交換で済ませようとせず、セットで交換するのが原則です。

     

  • 適切な環境管理

    可能であれば、座金付きボルトが過度な湿気や水分に晒されないよう、建物の換気や防水対策を適切に行いましょう。

     

長期使用のためのコツ:
建築物の寿命を考えると、座金付きボルトも長期間にわたって機能することが求められます。以下のようなコツを実践することで、より長く安全に使用することができます。

 

  • 初期施工時に適切な防錆処理を行う
  • 定期点検の頻度と内容を建物の重要度や環境条件に応じて設定する
  • 点検記録を残し、経年変化を把握する
  • 専門家による定期的な総点検を実施する

特に木造住宅の場合、10年ごとの定期点検時に重要な接合部の座金付きボルトの状態を確認することをお勧めします。早期発見・早期対応が大きなトラブルを防ぐ鍵となります。

 

日本建築防災協会の建築物の維持管理に関する資料はこちらが参考になります

座金付きボルトの施工事例と失敗から学ぶポイント

実際の建築現場での座金付きボルトの施工事例を紹介し、成功例と失敗例から学ぶべきポイントを解説します。これらの知見は、より安全で効率的な施工につながります。

 

成功事例:

  1. 木造3階建て共同住宅の耐震補強

    築30年の木造アパートの耐震補強工事では、柱と横架材の接合部に丸座金付きボルトを使用しました。従来のボルト+座金の組み合わせと比較して、施工時間が約30%短縮され、接合部の強度も向上。入居者の生活に与える影響を最小限に抑えながら、効率的に耐震性能を高めることができました。

     

  2. 大型木造施設の柱脚部強化

    積雪地域の大型木造施設では、柱脚部の接合に高強度の座金付きボルトを採用。通常のアンカーボルトでは強度不足が懸念されましたが、適切な座金付きボルトの選定により、必要な耐力を確保しつつ、施工性も向上させることができました。

     

失敗事例と教訓: