KD材の規格と品質基準について

KD材の規格と品質基準について

記事内に広告を含む場合があります。

KD材の規格

KD材規格の基礎知識
📏
含水率による分類

D15(15%以下)、D20(20%以下)、D25(25%以下)の3段階で規格が決定

🔧
乾燥処理基準

人工乾燥により品質を管理し、建築現場での安定性を確保

🏗️
強度等級区分

機械等級区分と目視等級区分により構造用途に応じた選定が可能

KD材の含水率規格による分類体系

KD材(Kiln Dry材)は、人工乾燥により含水率を管理した木材で、建築用途に応じて厳格な規格が設定されています 。日本農林規格(JAS)では、構造用製材について含水率に基づく表示記号を定めており、未仕上げ材の場合、含水率15%以下を「D15」、20%以下を「D20」、25%以下を「D25」として分類しています 。
参考)製品案内 建設 | 外山木材株式会社|国産材日本最大級製材工…

 

仕上げ材については、含水率15%以下を「SD15」、18%以下を「SD18」、20%以下を「SD20」として表示し、最終製品として直接使用可能な高い精度を保証しています 。これらの規格は建築基準法に基づく強度計算の基礎となり、構造安全性を確保する重要な指標となっています 。
参考)製材|木質建材の種類と特徴

 

造作用製材では、より厳しい基準として仕上げ材でSD15(15%以下)、SD18(18%以下)が適用され、内装材としての高い品質要求に対応しています 。広葉樹製材についてはD10(10%以下)、D13(13%以下)という更に低い含水率規格が設定されており、用途別の細かな品質管理が行われています 。
参考)木材の状態を左右する含水率を理解しよう!求め方、強度の変化、…

 

KD材乾燥処理の技術的基準

KD材の乾燥処理は、温度・湿度・風量を精密に制御できる乾燥機を使用して行われ、処理温度により低温乾燥(40~60℃)、中温乾燥(80~90℃)、高温乾燥(100℃以上)の3種類に分類されます 。高温乾燥では、柱や梁などの断面の大きな製材品でも1~2週間程度で必要な含水率まで乾燥可能で、生産効率の向上が図られています 。
参考)木材の乾燥|木材の基礎知識5

 

処理工程の初期段階では、120℃程度の高温蒸気を表面に吹きかけて一気に乾燥・硬化させ、材面割れを防止する技術も開発されています 。この表面硬化処理により、施工現場でのクレーム発生を大幅に削減し、品質の安定性を高めています 。
参考)古材鑑定士5:木材の乾燥方法|伝統建築ラボ|耐震研究ラボ

 

低温除湿式乾燥では15~30日かけてゆっくりと乾燥させることで、木材の色味やツヤを保持しながら品質向上を図っています 。高周波式乾燥では減圧環境下で1日という短時間での乾燥が可能ですが、設備投資が高額になるため、大規模製材工場での採用が中心となっています 。
参考)木材の加工工程における乾燥について知りたい乾燥方法や時間とは…

 

KD材強度等級区分システム

構造用製材のKD材は、強度性能を保証するため「目視等級区分」と「機械等級区分」の2つの評価システムが採用されています 。目視等級区分では、節の大きさ、割れ、年輪間隔などを人の目で判定し、甲種構造材と乙種構造材に分類後、それぞれ1級から3級までの3段階で等級付けされています 。
参考)JASとは「日本農林規格」。JAS構造材の基礎知識

 

機械等級区分では、曲げ試験機等によりヤング係数を測定し、E50からE150までの6段階で分類しています 。この機械等級区分は1本ごとに実測値に基づく評価を行うため、より実際的な強度表示が可能で、構造計算における信頼性が向上しています 。
参考)設計者から見たJAS製材品 特集 JAS構造材実証支援事業

 

両等級区分システムともに、含水率20%以下のKD材のみが対象となっており、構造用製材JASの機械等級区分製材では含水率管理が必須条件となっています 。建築基準では燃え代設計を行う場合でも、KD材の使用が前提条件とされており、防火性能の観点からも重要な規格要件となっています 。
参考)天然乾燥と人工乾燥の垣根をなくす

 

KD材品質測定と検査体制

KD材の品質管理において、含水率測定は最も重要な検査項目の一つです 。測定方法としては、全乾法による正確な測定と、電気抵抗式・高周波式含水率計による現場測定が使い分けられています 。全乾法では測定対象材から小さな試験片を切り出し、105℃で全乾させて正確な含水率を算出し、品質管理用の抜き取り検査に活用されています 。
参考)http://www4.kcn.ne.jp/~taharakn/study/13_kansou/07.html

 

現場での含水率測定では、4寸幅面の両端木口と中間部の3点で測定し、梁成側面や節部分を避けることで測定精度を確保しています 。一般的に木材の含水率は白身より赤身の方が高く、節部分では乾燥材でも高い数値を示すため、測定位置の選定が重要になります 。
品質検査体制では、JAS認定工場において製造工程での継続的な監視と抜き取り検査が実施され、規格適合性の確認が行われています 。大手製材工場では年間24万立方メートルもの丸太を処理し、KD柱角の全量を機械等級区分構造用製材として供給する体制を構築しています 。
参考)強度表示木材 href="https://jfpj.jp/feature/728" target="_blank">https://jfpj.jp/feature/728amp;#8211; 日刊木材新聞社

 

KD材規格適用における建築実務上の課題

KD材の規格適用において、建築実務では様々な技術的課題が存在します 。強制乾燥により短期間で含水率を下げる過程で、木材内部の細胞組織に負荷がかかり、長期的な耐久性に影響を与える可能性が指摘されています 。特に高温乾燥処理されたKD材は、乾燥直後から劣化が始まるため、30年程度の使用期間を前提とした現代住宅には適用可能ですが、伝統建築のような長期使用には課題があります 。
参考)KD材(Kiln Dry Wood) 乾燥材がもたない理由

 

含水率測定における精度の問題も重要な課題です 。現場で使用される電気抵抗式や高周波式含水率計は、木材表層から中心部までの平均値を表示しますが、実際の含水率分布は均一ではなく、特に大断面材では内部と表面で大きな差が生じることがあります 。
参考)http://www.housejapan-yume.jp/kinoqanda08.html

 

規格の国際整合性についても検討が必要です。日本のJAS規格によるKD材分類は、欧米の規格体系と一部異なる部分があり、輸出入や国際的な建築プロジェクトにおいて規格の読み替えや追加検査が必要になる場合があります。これらの課題解決には、測定技術の向上と規格の国際標準化への対応が求められています。