
建築事業者として空調設備や換気システムの提案を行う際、風量設定と電気代の関係を正確に理解することは顧客満足度の向上につながります。エアコンのしずかモード(風量弱)は静音性に優れる一方で、実は自動運転と比較すると消費電力が約3割も高くなるという検証結果が報告されています。
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ダイキン工業の実験では、日中11時間のつけっぱなし運転で風量弱が3.85kWh、自動が2.79kWhを消費し、月間の電気代では約990円の差が生まれました。この現象は、風量を弱く設定すると室内機の熱交換器を通過する空気量が減少し、設定温度に到達するまでの時間が長くなるためです。
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エアコンの電気代に最も影響を与えるのは、室温を設定温度まで調整する際の圧縮機の稼働状況です。風量弱にすると設定温度への到達が遅れ、圧縮機が長時間連続稼働するため総合的な電力消費が増加します。
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実際の消費電力を主要メーカー別に比較すると以下の通りです:
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メーカー | 風量弱 | 風量強 | 風量自動 |
---|---|---|---|
ダイキン | 約450W | 約900W | 約470~650W |
パナソニック | 約500W | 約920W | 約480~670W |
三菱 | 約480W | 約950W | 約490~690W |
自動モードは初動時に強風で一気に設定温度まで到達させ、その後は省エネモードに切り替わるため、コンプレッサーの連続稼働を抑えて全体の電気代が低くなります。
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しずかモードは騒音を抑えるために送風量を制限するモードで、消費電力は若干下がる傾向にありますが、設定温度到達までの時間が延びるため結果的に電気代は高くなります。
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8時から19時までの11時間運転での電気代比較(電気料金単価31円/kWh):
運転モード | 消費電力量 | 1日の電気代 | 月間電気代(30日) |
---|---|---|---|
しずかモード(弱) | 3.85 kWh | 約119円 | 約3,570円 |
自動運転 | 2.79 kWh | 約86円 | 約2,580円 |
利用者の口コミでも「自動風量設定で以前より電気代が下がった」「しずかモードは確かに静かだが長時間運転になりがち」との声が多数寄せられています。建築事業者としては、施主に対して静音性と省エネ性のトレードオフを明確に説明することが重要です。
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暑さを感じた際、設定温度を1℃下げるのと風量を強にするのでは、どちらが省エネでしょうか。ダイキンの検証では、設定温度を1℃下げると1.13kWh、風量を強にすると0.52kWhとなり、風量強の方が消費電力量が約半分になりました。
これは設定温度を下げると圧縮機の運転が強化されるのに対し、風量を強くしてもファンの消費電力は圧縮機と比べてわずかだからです。人の体感温度は室温だけでなく、湿度や気流によっても変化するため、室温を下げる代わりに風量を強くすることで体感温度が下がり、涼しく感じられます。
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建築物における換気設備も風量設定が電気代に大きく影響します。24時間換気システムの消費電力は設置場所や機種によって異なりますが、トイレで約1円、お風呂で約3円、キッチンの弱設定時で約10円程度です。
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換気扇の機種別消費電力比較:
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機種タイプ | 消費電力(強) | 消費電力(弱) | 特徴 |
---|---|---|---|
DCモーター | 5~15W | 2~8W | 省エネ・静音・寿命が長い |
ACモーター | 20~50W | 10~25W | 汎用的だがやや割高 |
プロペラファン | 15~40W | 8~20W | 台所や窓用でよく使われる |
シロッコファン | 20~60W | 10~30W | 風呂場やトイレで多い |
最新型DCタイプなら、従来ACモーター品の1/3以下の消費電力に抑えられます。DCモーター扇風機はACモーター扇風機と比較して、弱運転時は約1/5~1/8、中運転時は約1/3~1/4、強運転時は約1/2~2/3の消費電力で済みます。
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建築事業者が設計段階で考慮すべき省エネポイントとして、換気設備の外気量調整があります。現在の在室者数に応じて外気量の上限を決定し直し、外気ダンパだけでなく排気ダンパや換気扇等の排気風量も測定して建物全体で「外気風量=排気風量」になるよう調整することが重要です。
参考)https://www.eccj.or.jp/b_tuning/manual/b_tuning_manual.pdf
DCブラシレスモーター搭載の換気扇は、ACモーターと比べて消費電力を最大74%低減でき、24時間換気運転時の年間電気代を大幅に削減できます。施主様へのメリットとして低ランニングコストを実現し、安定した換気風量を確保できる点をアピールできます。
参考)DC(直流)ブラシレスモーター搭載タイプ/24時間換気機能付…
全熱交換形換気機器「ロスナイ」のような設備を併用すると、排気と給気の「熱」と「湿度」両方を交換することで空調負荷を低減し、さらに省エネ効果が高まります。自然換気と自然光をうまく利用することで得られる省エネルギー効果は、空調負荷を20%低減すると試算されています。
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ダイキン公式サイト「エアコン冷房で誤解の多い4つの節電術を検証」 - 風量自動と弱の消費電力比較データが詳しく掲載されています
三菱電機「ダクト用換気扇DCブラシレスモーター」 - DCモーターの省エネ性能と定風量制御機能について解説されています